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ブレイブリバース!~二人で魔王倒せるの?会社員なゲーマー勇者と器用貧乏な吟遊詩人が、データ通りじゃないRPG異世界(101周目)を独自ルートで攻略した話~  作者: 鳴海なのか
第1章 初めての街、初めての仲間

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第18話「初ダンジョン・小鬼の洞穴、1日目(1)」


 エイバスの街を出発した俺とテオ。

 半日ほど歩き、その日の午後早めの時間には、カルネ(ざん)(ふもと)に到着した。




 標高600mほどで傾斜が緩やかなカルネ山。

 半分が緑の木々に、残り半分が()き出しの岩肌に(おお)われている。


 この山には、かつて魔物がほとんど出現しなかった。

 人々は、熊や猪や鹿を狩ったり、山菜やキノコ類などを採ったり。

 (ふもと)に入口がある天然の洞穴では、鉄鉱石などの採掘も盛んだった。


 肉や山菜などの食材は、エイバスの皆の食卓を。

 毛皮や鉱石などの生産素材は、エイバスの屋台骨である生産業を支えていた。



 だが3年前から、狩猟者や採掘者が魔物に襲撃されるケースが相次いだ。

 命を落とした者も少なくないらしい。


 そして魔物の発生が段違いに多い場所、それが(ふもと)近くの洞穴だ。

 洞穴内にはゴブリン――角を生やした小さな人型の魔物――しか出現しない。

 だからいつしか『小鬼の洞穴』と呼ばれ始めた。


 現在、洞穴で鉱石採掘するときは「護衛を雇う」もしくは「冒険者に採掘してきてもらう」のが一般的で、かつてよりもコストやリスクが高くなっている。

 これは職人たちの悩みのタネと言えるだろう。




「これが『小鬼の洞穴』か……!」


 ゲームと同じく、その入口は(こけ)むしたゴツゴツの岩肌に開いた穴だった。

 大きさは大柄な成人男性1人が立ってちょうど通れるぐらい。

 舗装はされておらず、ほぼ自然のままの状態だ。



 近くに魔物がいないことを確認してから、俺を先頭に、テオが続く形で洞穴へ。


 中に入った瞬間。

 むわっと鼻に飛び込んだのは湿った土のようなにおい。

 それと、少しだけ肌寒い。



 偶然マントを羽織っていてよかった。

 そう思った瞬間、ゾッとする。


 装備を選ぶ際、気温や気候を全く考えていなかったという事実に気付いたのだ。


 原初の神殿も、エイバスの街も、周辺の森も、日本の春のように温暖だ。

 だが他の地域では、そうもいかないだろう。


 今後は注意しなければ……と、肝に命じたのだった。





*************************************





 しばらくは分かれ道が無いため、石造りの通路を道なりに進んでいく。


 入口の印象の割に、洞穴の中は広く長い。

 通路がやや狭くなるところも時々あるが、天井が高いので圧迫感はない。



 辺りを照らすのは、壁に等間隔で配置された『火の魔導具』。


 かつてエイバスの有志が出資し、採掘作業のために取り付けられたものだ。

 空気中の魔力を取り込む構造だから、中の火は半永久的に燃え続ける。

 その光量は十分で、カンテラや松明(たいまつ)は必要なさそうだ。





 数分歩いたところでテオが急に立ち止まり、「来るよ」と小さな声で言った。


 最初の分かれ道となるT字路の前。

 その右側のほうから、足音や鳴き声が(わず)かに聞こえることに気が付いた。



 瞬時に状況を把握したらしいテオは、小声で俺に知らせてくる。


「……小さめの魔物が3体、全員が棍棒装備の普通ゴブリン。その(かど)からの距離は40mぐらい、こっち方面に真っすぐ歩いて来てる……ってとこだね。向こうは俺らには気づいてないと思う。タクトはどうしたい?」




 今回の探索の最大の目的は、俺に戦闘経験を積ませること。

 だからバトルは俺中心で動くと決め、事前に各種パターンの戦略を立てていた。


 できれば、洞穴を支配する闇の魔力も【光魔術】で浄化したい。

 だが俺の実力だと少し不安で……無理だったらまたの機会にすればいい。



 用意してきた戦略パターンの中で、現状に合うのは……。


 数秒考えてから、俺は決めた。


「この(かど)で待つ、でいいか?」

「OK。じゃ、作戦通りにねっ」


 小声で会話した俺たちはそれぞれ武器を構えた。

 曲がり角の死角で、俺が前に、テオが数m後ろという陣形で待ち構える。



 ――ギキッ、グキャキャ……

 ――ペタッペタッ……


 だんだん近づいてくる鳴き声と足音。

 俺の手が汗ばみそうになる。


 心を落ち着かせるため、自分の構えを確認する。

 片手剣も盾も、教えてもらった通りに持てていた。

 それから、ゆっくり大きく深呼吸。


 じっと静かに待つ。





 数十秒後。

 T字路の角から、先頭の魔物が姿を見せる。

 と同時に、俺は素早く斬りかかる!


「グキャッ?!」


 斜めに振り下ろした剣がその腹部に直撃。

 悲鳴を上げる先頭ゴブリン。

 返す刀で素早く打ち込んだ2撃目も綺麗に決まる。


 先頭ゴブリンは倒れこみつつ、粒子に変わり消え去っていった。



「よし、1体目!」



 呆気(あっけ)にとられて見ていた残りのゴブリンたち。

 だが仲間がやられたのを理解するなり、顔を真っ赤にする。

 2体同時に棍棒を構え、俺へと殴りかかってきた。


 身長は俺の半分ほど。

 ゴブリンとしては普通サイズ。

 腕力は大したことないが、素早さは非常に高い。


 ひたすら棍棒で殴りかかってくる2体の攻撃をかわしたり、盾や剣で受けたり。

 防御しながら、攻撃のタイミングを伺い続ける。


 何回か避けたところで、1体が転ぶ。

 チャンスとばかりに背後から斬りかかると、仕留めることができた。


「ギャァッ!!」


 2体目ゴブリンも叫びながら消滅していく。



 だが俺も斬りかかりで(りき)み過ぎた。

 勢い余って体勢を崩してしまう。


 最後に残ったゴブリンが口を歪めて笑った。

 その瞬間、がら空き状態な俺の頭部を狙い素早く棍棒で飛び掛かってきた!


「……ッ!」


 咄嗟とっさに剣で受けようとするものの、ゴブリンのほうが早く、間に合わない!


 全身から一気に血の気が引いた瞬間。




 ――シュッ!




 風を切る音と共にゴブリンが空中で絶命し、粒子へと姿を変えていった。


 へなへなとその場にへたり込む。







「……ん~、惜しかったねっ」


 振り向くと、そこには(むち)を手に持つテオの姿。



 風切り音の正体は、テオのふるった鞭だった。


 実は今回の攻略にあたり「まずは俺だけで出来る限り戦って、テオはギリギリまで手助けしない」という約束を交わしていた。


 さっきの戦いも、テオは少し離れて見守っていたのだ。




「……助かったよ」


 ホッとした俺の言葉に、テオは無言で微笑んだ。




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