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第15話「時には、休息も必要です(2)」


 翌朝、宿で軽い朝食をとった俺とテオは、エイバスの街の南側にある『職人街』と呼ばれるエリアを訪れた。

 この辺りには職人達の工房がひしめき合っており、武器・防具・魔導具など様々なアイテムが作られ、そして販売されている。



 元々、早めに職人街を訪れたいとは考えていた。

 神様に会った際に言われた「ゲームで開発された魔術や生産系のレシピは、現実でもそのまま使える」「現実よりもゲームの方が、レシピの研究が進んでいる」という内容がずっと気になっていたのが1番の理由だ。


 まだ俺自身は生産系のスキルは習得していないけれど、いずれは作りたいと考えるアイテムは数多い。

 エイバスの職人街を見学すれば、何かしら今後の参考になりそうな気がしたんだ。




 森での鍛錬の休憩中、生産系スキルについても質問してみたところ、テオからは「生産系スキルもひととおり使えるけど……あまり自分じゃ使いたくないや」との答えが返ってきた。


 生産系スキルのスキルLVが影響するのは、主に『生産物の品質』について。

 テオの場合は多数の生産系スキルを習得しているので、材料さえあれば一応アイテムの生産自体は割とできる。

 だけどスキルLVが全て1のため、完成品の品質はあまりよろしくないらしく「アイテム作りは、腕が良い職人へ依頼するに限るっ」とはっきり断言していた。





 喜んで案内役を買って出たテオに連れられ、職人街をあちこち見て回る。


 半分観光名所と化したこの辺りには、マップを見ながら楽しそうに連れだって歩く観光客や、その観光客らに声掛けする店員も少なくない。


 まるでお互い競い合うかのように、建物前で宣伝も兼ねたパフォーマンスを行う工房も多数あった。職人達の高LVの生産系スキルや魔術系スキルを活かした鮮やかな技に、思わず足を止めて見入ってしまう。

 その都度テオが詳しく解説してくれたこともあって、俺はしっかりと職人街を満喫することができたのだった。


 特に「ゲーム内で生産系スキルを使った際のモーションと、この世界(リバ―ス)で生産系スキルを使った際の動きがほぼ変わらないこと」、「それぞれの工房が制作可能だと提示している品揃えや、その金額もゲーム内とさほど変わらないこと」が分かったのは、かなり大きな収穫と言える。




 ただし腕利きの職人が作るアイテムは、それなりに値が張る。

 ましてや注文して自分好みの物を作り上げてもらうオーダーメイド品ともなると、例え素材持ち込みであっても高額になってしまうのだ。


 正直な話、今の俺のふところ事情では厳しいのが現実。


 テオが「手持ちのお金貸そうか?」と申し出てはくれたものの、借りを作りすぎるのも悪いと断り、自分の身の丈にあった金額帯の店に行くことにした。





**************************************





 職人街の外れのほうの、とある中古防具専門店 。



「ここだよ!」


 目当ての店を一足先に見つけたテオが建物へと入っていき、俺も後に続く。




 明かりの魔導具に照らされた少し(ほこり)っぽい20畳ほどの店内には、様々な防具が所狭しと並べられていた。


 冒険者ギルドから買い取ったドロップ品や、冒険者らから買い取った使い古しの防具が品揃えの中心。そこそこの品質の防具を手頃な価格で購入できるのが、この店の売りとなっている。



 店員は全員が小柄なドワーフ族で、カウンターには防具を整備している年配の男性店員が2名、入口近くには陳列している防具を整理している若い女性店員が1名。


「いらっしゃいませ。どういった防具をお探しでしょうか?」


 ちょうど客が他にしかいなかったためか、すぐに女性店員が話しかけてきた。


「こっちの見習い剣士の防具を見立ててほしいんだけど――」

「鎧です、金属製のフルプレート!」


 喋りかけたテオを遮るように、鼻息荒くはっきり答えた。

 店員とテオは同時に「え?」と疑問の声を上げ、口々に反対してくる。


「安い金属製のフルプレートは、非常に重いですよ?」

「そーそー、タクトの戦闘スタイルには合わないって――」

「嫌だ!! 絶対フルプレート、これだけは譲れないから!」



 剣と魔法の世界ファンタジーが元々大好きである俺が、もし自分がファンタジー世界に行ったら……という妄想をしたのは1度や2度じゃない。


 そしてその妄想通り、実際に剣と魔術で戦えるようになった今。


 せっかくなら憧れの板金鎧プレートアーマー、中でもいわゆる『フルプレート』と呼ばれる「頭からつま先まで、全身が金属板で覆われたタイプの鎧」を着てみたいと、ずっと密かに憧れていたのだ。




 テオと店員は何とか説得しようとしてきたが、俺だって長年の夢が叶うかもしれない貴重なチャンスを諦めるわけにはいかない。


 猛烈に主張し続けた結果、どうにか店の片隅に置いてあった鉄製フルプレートを試着させてもらえることになったのだった。


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