第300話 例の木の実を見せてみた
「もっといろいろ話したい事があるが他にも仕事があるのでね、支払いの話をしようか。今回のエンチャントは素材などコッチで用意したりしたから五千四百六十シアって所かな」
前回は素材持ち込みで割り引いて貰ったので安かったが流石に素材代も込みだとちゃんとした値段になった。
俺はギルドカードを取り出して支払いを済ませてからケアテミスさんに採取依頼の件を話した。
「へぇ、あの依頼を受けてくれたのかい! それは嬉しい知らせだね、それで何が手に入ったか見せて貰っても良いかな!」
ケアテミスさんは装備の説明をしていた時と同じくらいの熱量で机から身を乗り出してそう言って来た。
俺はそのケアテミスさんの様子に少し引きつつ無限収納から手に入れた薬草や毒草に木の実などを机の上に並べていき、そして最後にあの木の実を置いた。
ケアテミスさんでもこの木の実がコリアリの実だと気付けなかったのか首を傾げていた。
「コレは私でも見た事も聞いた事も無いけど君がわざわざ出したって事は何かあるんだろう。それでコレは何かな?」
ケアテミスさんにそう訊ねられて俺は「コリアリの実です」と答えた。
「コレがコリアリの実? コリアリの実にしては熟れ切っているのかシワシワだし、それに色味も変だが」
「そうですねコレはコリアリの実の変異種らしいですから」
「変異種だって! という事は何か普通のコリアリの実とは違う所があるって事だろう! それで、それは一体何なんだ! 早く教えてくれ!」
目を輝かせながらケアテミスさんは変異種であるコリアリの実の説明を求めて来た。
「一応俺の鑑定解析の結果ですけどコレが神酒の素材らしいです」
「神酒! それは本当かい! それでその製法は?」
今にも掴み掛からんとするケアテミスさんに気圧されながら俺はその製法を伝えた。
「なるほど、蒸留を繰り返しアルコール度数が98%まで至った酒にこの木の実を漬けて三日三晩途切れる事無く魔力を注ぐ必要があるのか。普通の人間では限り無く不可能に近い製法なのか」
普通なら無理難題な製造方法を知りケアテミスさんは少し気落ちしたかの様に肩を落としたが直ぐに「アレを使えばイケるか」と呟いたかと思うと席を立ち部屋を飛び出して行ってしまった。
ケアテミスさんの奇行に唖然としているとケアテミスさんのメイドであるリリィさんが「主人が申し訳ありません」と言いつつ頭を下げた。




