番外編:バッドエンド4
「あら、きょうはあなたなのね」
愛らしいデフォルメされた白い猫が、円らな瞳をカメラに向ける。
その身長は五十センチ、体重は七百七十七グラム。
ぬいぐるみみたいな見た目通り毛並みは短く、柔らかそう。
「まいにちきてくれてうれしいけど、なにもかわらないわよ?」
優しく丁寧な言葉遣いで、でも少しだけ面倒くさがる。
「え? それでもいいの? へんなひと」
白い猫がどうやっているのか、愛らしく小首を傾げる。
「じゃあいきましょう」
今日も“仕事を選ばない猫”の一日が始まる。
――これはキャーティの一日を追う、ドキュメンタリーである。
朝の運動。
「みつけたっ♪」
キャーティは猫の習性として、早朝動きの鈍い獲物――小鳥――に襲い掛かった。
ひょいっ
…しかし、避けられた。
「えいっ♪」
ぱたぱたっ
…しかし、羽ばたいて避けられた。
「とりゃっ♪」
とてとて
…しかし、普通に歩いて避けられた。
その後もキャーティは小一時間ほど小鳥と戯れた。
「ふー。いいうんどうになったわ」
キャーティは愛らしい手で額を拭う。
汗は流れていない。
ぬいぐるみだから。
昼のお散歩。
「るんるんっ♪」
キャーティは猫の習性として、いつものコースを散歩した。
「けるべろすさん、こんにちは」
頭が三つの虎より大きな犬と挨拶をする。
彼は嬉しそうにキャーティの後ろを歩き始めた。
「せいてんたいせいさん、こんにちは」
頭に輪っかを付けて雲に乗った猿と挨拶をする。
彼は嬉しそうにキャーティの後ろを浮かび始めた。
「ふぇにっくすさん、こんにちは」
燃え盛る炎の羽毛を持った鳥と挨拶をする。
彼は嬉しそうにキャーティの後ろを飛び始めた。
その後もどんどん増えていく。
「みんな、またね~っ」
キャーティは愛らしい手を振る。
爪先立ちをして。
背が小さいから。
午後の一時。
「ぱちぱちぱち」
キャーティは猫の習性として、成功体験を大切にする。
「あきらめない」
泣き虫ウサギさんを励ます。
ウサギさんがぴょんぴょん跳ね回る。
「がんばってね」
のんびりカメさんを応援する。
カメさんがのっしのっしと踏みしめる。
「みんななかよく」
とてとてクモさんと、ぱたぱたコウモリさんを叱る。
クモさんとコウモリさんが一緒に踊る。
その後も皆に声をかける。
「よくできました♪」
キャーティは愛らしい手を叩く。
柔らかい音がする。
それは心の音だから。
夜になったらお家に帰る。
キャーティは礼儀正しく、しっかりもので、気配りもできる皆の人気者。
「――ただいま。アヤノ、いいこにしてた?」
「にゃん♪」
キャーティが家に帰ると、肘と膝で歩く【共生者】が出迎えた。
キャーティは優しいからペットの手足を切断なんてしない。
リボンで縛っているだけで、肘にも膝にも小さなクッションが当てられている。
そうしないと絢乃が擦り剥いて怪我をするから。
しかしそれ以外に服は着ていない。
猫は面倒くさがりだから。
「うにゃ~ん♪」
絢乃がキャーティに頬擦りをする。
その目に人間としての誇りは無く、その姿は只飼い主に媚びるだけのペット。
「これ、おみやげ」
ぽいっ
キャーティがいつからか引き摺っていた、カメラを持っていた物を絢乃の前に転がす。
「にゃにゃんっ♡」
絢乃は嬉しそうに飛びついて、人間だった物を貪る。
――キャーティは世界三大マスゴッド。
“小”島並に巨大なロック“鳥”と戯れ、地獄の番犬・斉天大聖・不死鳥と散歩し、首狩り兎・地球亀・吸血姫・這い寄る蜘蛛・宇宙鯨を導く。
猫は成功体験を覚えて繰り返す。
今日もカメラマンは死んだ。
原因は覚えていない。
だから明日も死ぬ。
「あしたはナラカくんとポーくんとハイキング。たのしみね、アヤノ」
「にゃん♪」
絢乃がどうしてそうなったのか知る者は居ない。
キャーティは失敗体験を覚えていないから。
(*´ω`*)「本編の代わりにほんわかムード」




