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山デート:モケケピロピロ

「ガクトガクトっ! モケケピロピロがいます!!」


 サーニャはそれ(・・)を発見すると、驚いて楽人の手を引いた。


「なん…だと……?!」


 楽人が大慌てでサーニャの指差した先を見ると、そこには確かにモケケピロピロが居た。


「確かに……これはモケケピロピロだな」

「でしょ! でしょ!」


 サーニャは興奮して飛び跳ね、全身で感動を表現していた。


 ――モケケピロピロとは、正体不明の化け物に対する通称である。

 昔、まだネットも携帯電話も一般人の手に届かなかった時代の話。

 TRPGの誌上リプレイで、あるプレイヤーが知識判定に失敗した化け物を知ったかぶりした名前が日本中に広まった。

 その後、ネットの発達で更に拡散され、面白がって口にするプレイヤーが続出した結果、正体不明の化け物を指す隠語として人権を得たのが、モケケピロピロである。


 彼女たちの目の前にいるのは、“ミレニアム戦記”のモケケピロピロの元ネタであるツチノコ……の正体とされるアオジタトカゲだった。

 オーストラリア産なので、外来種に当たる。


「こんなところにも居るんだな」


 楽人は念のために確認したが、サイケデリックな“ミレニアム戦記”のモケケピロピロとは色が違い、ごく普通の茶色系のツチノコっぽい蛇だった。

 【リアライザー】では無い。


「捕まえましょう! 手伝ってください!」


 サーニャが目を血走らせて、楽人に協力を求める。

 これがツチノコの正体が知られていない頃の日本人なら、好奇心や自慢などが目的なので問題は無い。

 しかし、“ミレニアム戦記”のモケケピロピロは珍味。

 捕まえたら料理されて楽人の口に入る。


「そっとしておいてやれ。モケケピロピロだって必死に生きているんだ」


 楽人はそれっぽい台詞を言って、サーニャの手を引いて歩き出した。


「ううぅ…モケケピロピロぉぉぉぉ…‥」


 サーニャは悲しみを和らげるように、楽人の腕に抱き着く。

 彼女が名残惜しそうに後ろを振り返る度に、彼女の柔らかい膨らみが形を変えた。


(毒は無いらしいけど、俺にゲテモノを食べる趣味は無い)


 その内、サーニャも後ろを振り返るのを止めて、もっと強く楽人の腕に抱き付いて、目の前に広がる景色を堪能し始めるのだった…。

珍獣(珍味)

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