超自然生物保護法
7月20日、水曜日。
多くの学校では一学期の最終日。
しかし、世間ではそれどころでは無かった。
《――G7は本日未明、【リアライザー】に関する法案、【超自然生物保護法】の公布を発表しました》
なんと、G7――先進七か国――が【リアライザー】の権利を認めたのである。
通称、【超自然生物保護法】。
略して、【超生物保護法】。
この法律を【リアライザー】が現れて30日後に合わせて、G7の七カ国で同時に公布・施行すると発表された。
異例の早さではあるが、それだけ社会への影響が大きいと判断しての動きだった。
この発表自体も、公布の前日にG7各国同時と言う念の入り様。
これはG7各国の一般的な睡眠時間から逆算されている。
日本人が起きる6時前後、ヨーロッパ人の就寝時間である22時前後、アメリカ――ワシントン――は17時前後。
穿った見方をすればアメリカに都合良くも見えるが、各国同時と言うならベストに近い。
何より、実際の公布・施行は日本時間の夜。
【リアライザー】の現れた時間に合わせたとは言え、アメリカに都合が良い調整と言うよりも、世間では「いつもの日本政府」と言う評価の方が目立った。
また、この一か月、各国の高官は密かに会談を進めて来たと言う。
【リアライズ】から数日目には、アメリカからG7各国へ招集があり、一週間目には【リアライザー】について一度目の、臨時の主要国首脳会議が密かに開催された。
それからの動きも早く、国際人権NGOの大手を集めての意見や情勢の確認、日本国内でも政党ごとの集会や衆議院・参議院の集合が頻繁に行われた。
国際法の制定には流石に時間が掛かるとし、G7各国で先行して法律を施行。
この【リアライズ】から一か月目という節目や、異例のスピード公布と施行によって、G7の【リアライザー】問題に対する姿勢を内外に見せ付けた形と言えた。
この法案には、世界中が目を見張った。
各国のメディアですら、国家主席にコネのある上澄みしか知らなかったのだから当然だ。
今までしたり顔で、【リアライザー】を著作権の所有物のように主張していた連中は、気付いた時には人権保護団体のブラックリストに載っていた。
しかし、最も慌てたのは彼らでは無く、実際に【リアライザー】を良いように扱っていた連中である。
今更足を洗っても、捕まれば遡って今までの所業が罪に問われる。
G7各国からの国外逃亡が相次ぐが、その大半は逃亡前、あるいは逃亡先の空港で逮捕されることとなる。
少し先の話になるが、こうした騒動が落ち着き始めた頃に、件の“化身配信者”と版権元企業の初公判が行われることになるのだが、その結果は推して知るべし。
裁判は【超自然生物保護法】を理由に、初回で原告――企業――の請求を即時棄却。
素直に引くかと思われた企業は、勇敢にも不服申し立てを行い、数か月後の第二審――高等裁判所――で同じく即時棄却されて恥を晒してしまい、大きく株価を落とす羽目になる。
その裏には、人権無視な判例は後に禍根を残すという、裁判官の至極真っ当な判断だけでは無く、それを認める訳には行かない正義の国や法治国家の意図があったことが、実しやかに噂されることになるのだった…。
動き始めます




