テストへの影響
水曜日。
最後のテスト用紙が返却された。
楽人は何とか前回の点数を上回り、小遣い削減の危機を回避することが出来た。
それどころか、学年順位は彼の予想に反して上がっていた。
原因は【リアライザー】である。
ネット上でも、今回の学期末テストは全国的に下振れだったことが話題になっていた。
それほど、突然の【リアライザー】ブームの到来は、学生たちにも大きな影響を与えていたのだ。
尤も、成績上位陣の成績は普段と殆ど変わらず、上位と中位以下の間にぽっかり溝が出来たというのが、現役教師や自称専門家たちの感想。
全国の他責思考な親馬鹿たちが、挙って【リアライザー】の批判をしたが、優秀な子供を持つ親は何処吹く風。
子供たちも良い迷惑で、ネット上では駄目な大人の見本として叩かれている。
それでは楽人のクラスはどうだったかと言うと…。
「どうだった?」
「水曜以外は楽勝だ」
「なるほど」
手塚はライブで盛り上がった翌日だけ、成績を落としていた。
クラス中に共感を求めて話し回るほど浮かれていたことを思えば、一日で済んだだけ立派なもの。
眼鏡キャラの面目躍如なクレバーさだった。
他のクラスメイトたちの様子も、ネット上と然程変わらない。
「委員長また満点?! 凄すぎない?」
「いつも言ってるでしょ。しっかり覚えて公式通り答えを導くだけよ。後は努力の量。私は天才じゃないから人一倍勉強してるだけ」
「その努力できるのが凄いんだよ。わたしにはむーりー」
もう一人の眼鏡キャラ、乾貞は当然のように満点ラッシュだった。
(委員長も結構昼休みに居なかった割りに凄いな…)
バイト代に目が眩んで少し成績の落ちた楽人は、彼女を尊敬の眼差しで見た。
真面目に見えても委員長も女の子。
可愛いものには目が無かったが、勉強を疎かにしなかった結果が数字に現れただけ。
手塚は親友が眼鏡に理解を示したと勘違いをして楽人の肩を叩いたが、彼はその手を嫌そうに振り払った。
「おっと俺の一人負けか。じゃあ約束通り、全員俺んちの別荘に招待するよ」
「「「キャーっ!」」」
学校カースト上位の九条透哉が負けを認めると、取り巻きの女子たちが手を取り合って喜んだ。
クラスメイトたちは出来レースに呆れたが、実際はそんなに生易しいものでは無い。
何せ、彼女たちもユントロにかまけて勉強が疎かになっていた上に、その内の一人は頭があまりよろしくない。
彼女に全教科で負けるようでは、九条自身の進学とカーストに響くし、誰かが赤点を取れば別荘どころでは無い。
そのため、勝負は一番頭の悪い子の得意科目のみで行われ、九条は彼女たちが赤点を取らないのように勉強を見てやり、勝負科目でギリギリ負けるように調整をした。
その辺のリア充とは努力のレベルが違うが、完全に方向性を間違っている。
(いつもながら、よくやる)
楽人は九条の努力に脱帽した。
キャーキャー言っている取り巻きより、周りの方が苦労を理解していると言うのは、モテる男や女にはよくあること。
尤も、それで『リア充爆発しろ』と思われないかと言うと、それはまた別の問題。
何せ九条はクラスメイト以外にもセフレが複数居て、彼が学校に来なくなったら刺されたか腹上死だと言われているくらいなのだから。
「あーしの夏は終わった…」
学校カースト上位の金髪ポニーテール、真島範子は口から魂が抜けていた。
「どしたの、急に?」
「赤点…取ったら…夏休み中ずっと塾だって……」
「でもみんな点数わるいし、説明すれば親だって…」
「…二つ……増えた………」
「うわぁ…」
彼女は赤点が二つだったのでは無く、赤点が二つ増えていた。
これにはフォローしようとした友人も、言葉を失って憐みの目を向ける。
昨日の時点で塾は確定していたが、範子は最後のテストで山勘が当たっていたら、親に慈悲を請うつもりだった。
ピンクの狸ぐるみも真っ青の、捕らぬ狸の皮算用である。
(勉強に一発逆転は無いのよ、範子)
少し離れた席で、親友の茶髪ショートボブ――綾波貴巫女――は、冷ややかな目で彼女を見つめるのだった…。
赤点の一つや二つ……三つだと?!




