お部屋にお邪魔:呼び出し
トゥルルルッ、トゥルルルッ…
「…んんー…」
もぞもぞ
土曜日の朝早く、電話の呼び出し音に起こされた須磨楽人は、寝ぼけながら枕元にあるはずのスマホを探した。
昨日は期末テスト最終日と言うこともあり、最近勉強にかまけていた分、彼はサーニャと夜遅くまで遊んだため、目蓋が重くて持ち上がらなかった。
むにゅっ
「はにゃっ?!」
彼が頭の上を手探りでスマホを探していると、手が何か柔らかい物を掴んだ。
餅のように柔らかく、手に吸い付くような、それでいて手に余る温かい何か。
「はぅんっ!」
サーニャの甘い声を上げた。
スマホは頭の上には無かったので、今度はその周囲を手探りで隅々まで探し始めた。
「そ、そこ…っ」
手に柔らかくて温かくて長い物が当たり、彼が寝惚けた頭で枕だと思って下に手を入れて探すと、その二つの柔らかい物に挟まれて手が抜けなくなった。
「…んぁんっ……ガクト……んんっ…」
楽人はそこで漸く、サーニャが起きているなら聞けば済むことに気付いた。
「ふまほ…ふまほ……」
もぞもぞ
「…はい、スマホです」
サーニャは太ももから彼の手を解放し、スマホを持たせた。
彼は手に馴染んだ冷たい感触で、それがスマホだと理解して礼を言った。
「はひはほう、はーひゃ」
「…どういたしまして…」
サーニャは何となく不満そうに礼を返す。
楽人はスマホを見もせずに慣れた感覚で操作した。
「もひもひ……はへ?」
呼び出しは既に切れていた。
彼は更に記憶頼り、指頼りで、一番上の着信履歴に当たりを付けてコールバックした。
トゥルルルッ、トゥルルルッ、トゥルルルッ……ガチャッ
『はい、音無です』
「…ふぁっ?!」
電話が繋がり、生物教師の音無静香が電話に出た。
楽人はその声を聞いて一気に目が覚め、ベッドの上で飛び起きた。
「せ、先生?!」
彼は電話を間違えたかと思ったが、あの日以来、彼女との間に電話は無いので、履歴からのコールバックで間違うはずが無い。
スマホを少し離して見ると、通話相手は《音無先生》となっていて、平日なら登校中の時間帯だった。
『須磨君、朝早く御免なさいね』
「どうしたんですか先生? まさかまたユントロが…」
『ううん、そうじゃないの。でも、その…』
音無先生は途中で言い淀んだが、意を決して、申し訳無さそうに続けた。
『…時間があれば、須磨君に相談に乗って欲しいの』
「分かりました。今から行きます。どこで待ち合わせますか?」
『…本当に悪いんだけど、うちに来て貰えないかしら』
「…え?」
楽人は音無先生の言葉を理解できず固まった。
(今“うち”って言った? 家じゃないよな? 内? 打ち? セイウチ? ……)
『あ、御免なさい無理言って、それな…』
「いえ! 行きます! 住所を教えてください!」
音無先生が消え入りそうに言うと、楽人は慌てて答えた。
ピロンッ
直ぐに音無先生から住所が送られて来た。
『…じゃあ待ってるわね。急がなくて良いから気を付けて来てね』
「はい」
ガチャッ
楽人は「子供扱いだなぁ…」と思ったが、二週間に二度も事件に首を突っ込んだ現実を思い返して首を振った。
このご時世、どこに何が転がっているか分からない。
注意をして、し過ぎるということは無いのだ。
「どこか行くんですか?」
楽人が声に釣られて上を向くと、サーニャはベッドの頭の辺りで丸まったまま、少し赤い顔で彼を見ていた。
暑くて寝苦しかったのか、彼女はお気に入りの着ぐるみパジャマ――黄色いユントロ――を脱いで下着姿だった。
(さっきの柔らかい物って…)
楽人は思い出して顔が真っ赤になった。
「済まん、寝惚けてた」
「くすっ。いいんですよ……今度は起きてる時にしましょう♪」
サーニャの柔らかい笑顔で、楽人の残っていた眠気が全て吹き飛んだ。
「朝食にしよう」
「はい♪」
彼らは着替えて食卓へ向かった。
サーニャの寝相は良くないです




