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番外編:バッドエンド2

「アキラーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」


 倉庫街にある倉庫の一つ。

 巨漢のヒーロー、アル・ラクスの悲壮な叫びが響き渡った。


 彼は小さな子供(アキラ)だった物に駆け寄って、倒れゆくそれを抱き留める。

 その頭は――無い。




 犯人たちも、人質(アキラ)を殺すつもりは無かった。

 それでも、アキラは死んだ。

 それが誰にとっても不幸だったのは、アル・ラクスが本物のヒーローだったことに他ならない。











 少し前。

 アル・ラクスは、誘拐犯の指示で倉庫街へやって来た。


 彼が見張りに連れられて倉庫に入った時、残る犯人たち4人(・・)は、全員銃口をアキラの頭に当てていた。


 向けていたのでは無い。

 当てていた。

 引き金にも指を掛けていた。

 アル・ラクスがその気になれば、それでも確実では無い。


 ――それが人々の理想(フィクション)現実(リアル)となって現れた者――【リアライザー】である。


 犯人たちに、人質を解放するつもりは無かった。

 【リアライザー】は化け物だ。

 人質を失った瞬間に、彼らの命は無い。


 アル・ラクスもそれを理解していたが、それでアキラが助かるのなら、それでも良いと思った。

 アキレスの踵。

 ジークフリードの背中。

 ヒーロー(アル・ラクス)の人質……。




 アル・ラクスを連れて来た男が、彼に手錠を掛けた。

 指錠も掛けた。

 そこまでは良かった。

 アル・ラクスは犯人たちを安心させるために、手錠の有効性を見せようと、軽く身動ぎをしてみせた。


 ――しかし現実は非情である。

 只それだけのことで、手錠も指錠も砕け散ってしまった。

 彼は加減をしたが、彼の知る原作(フィクション)に比べて、現実(リアル)の手錠は脆過ぎたのだ。




 犯人たちは、それでも冷静だった。

 予想の範疇。

 手錠が無駄なら、常に人質に銃口を当てて、言うことを聞かせるだけの話。


 しかし、心は冷静でも身体は違った。

 震えてしまった。

 引き金を引いてしまった。

 誰かでは無い。

 全員がだ。


 ――そして人質の頭が柘榴のように弾け飛んだ。




 アル・ラクスは絶叫して、アキラに駆け寄った。


 アキラの近くに居た犯人たちは、逃げなかった。

 逃げられなかったのでは無い。

 子供を殺された猛獣の前で逃げ出せば、どうなるか。

 彼らは冷静に、最適の判断を下したのだ。




 アル・ラクスは亡骸を抱き締めながら、黒い涙を流す。

 2メートルに迫る筋肉の塊。

 その影が蠢き、モゾモゾと形を変えながら大きくなる。

 影は背後に伸びて、壁に当たると今度は倉庫の壁いっぱいに広がり、そこから天井まで覆い尽くす。

 照明すら覆い尽くした影は、邪悪な竜の姿となった。




 ――鱗持つ者の王、スケイリーエンペラー。


 保護色で人を欺く爬虫類は、知恵、或いは奸智の象徴。

 人々の敵であるが故に、神の敵対者。


 光り輝く完全なるヒーローたる彼に与えられた、闇の側面。


 子供向け番組たる原作(フィクション)では起きなかった悪夢(リアル)が、彼の中に眠っていた設定(あくむ)を呼び覚ました。




 アル・ラクス自身は、アキラだった物を抱き抱えたまま動かない。

 しかし、影の竜が実体を持ち、影に触れたものが、積もった埃のように脆く崩れ去っていく。


 倉庫の床、壁、天井、そこにある物、そこに居る犯人たち。

 影の竜は大きくなり続け、やがて倉庫街全てが廃墟と化した。


 今ここに、神の敵対者が誕生したのである……。











「――アキラ…」


 アル・ラクスは呟いた。

 頬に黒い涙の跡を残し。

 その腕の中で、小さな亡骸が脆く崩れ去った。

 影の竜(スケイリーエンペラー)もまた、その姿を消していた。


「私はどうすれば良かったんだ…」


 子供向け番組のヒーローたる彼には、都合の良い力は無かった。

 子供やその親が求めるのはハラハラドキドキであって、チーターによる無双でも、傲慢なザマァでも無いからだ。

 だから、倉庫の外から人質を助けたり、犯人を倒したりは出来なかった。


「彼らが悪いのか…」


 ――違う。

 あれが単なる脅しであることは、彼にも判っていた。


「私が悪いのか…」


 ――それも違う。

 彼が安心させなければ、やはり犯人たちは緊張から引き金を引いていた。


「どうしてこうなってしまった…」


 ――それは彼らが悪だったから。

 儲かるからアル・ラクスを売るために、アキラを攫った。

 法を破るから悪なのでは無く、我欲のために他者を踏み躙るから悪なのだ。


「悪だ…」


 街を歩いていてもそうだ。

 信号すら守らない大人。

 並んでいる列に割り込む若者。

 自分の権利だけを叫ぶ大衆。


 その全てが正しく悪そのものである。

 世の中は悪で満ち溢れている。


「悪を終わらせる……」


 アル・ラクスは歩き始めた。

 全ての悪を滅ぼすために。

 全ての悲劇を終わらせるために。


 悪の断罪者となったアル・ラクスは世界中を彷徨う。

 そこにはもう、爽やかなヒーローの面影は無い。

 その影はヒーローでは無く竜。




 ――最終的に、人類のxx%が彼に因って命を奪われることになる――

(*´ω`*)「【リアライザー】に設定通りの力があると、楽人が来る理由が無いのでこうなります」

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