ショタコン奇襲
ギロリッ
楽人は倉庫の陰から姿を現した。
彼は辺りをキョロキョロと見渡しながら、アル・ラクスの呼び出された貸倉庫へと歩いて行く。
煙草を吸っていた見張りの男は、彼に気付いて面倒臭そうに睨んだ。
楽人が彼に気付かない振りをして、目的の貸倉庫を繁々と眺めていると、見張りの男が寄って来て、ドスを効かせた低い声で威嚇してきた。
「何してんだ、てめぇ?」
彼が大声を出さないのは、周りに人が居た時に目立ってしまうから。
「いえ、頼まれた荷物を受け取りに来たんですが、どの倉庫か分からなくて……」
楽人が苦笑し、首を捻って背中のリュックに視線を送る。
「そこは俺たちが借りてる倉庫だ。お前には関係ない。あっち行け。しっしっ!」
見張りの男も釣られてリュックを見て、面倒臭そうに追っ払おうとした。
刹那。
ゴンッ
見張りの男は、後ろから忍び寄ったアル・ラクスに殴られて気絶した。
アル・ラクスは男が地面に倒れる前に、殴ったのとは逆の手で男を支えると、軽々と肩に担ぎ上げる。
楽人たちは目的の貸倉庫から離れて、先程相談をした場所まで戻った。
楽人はリュックから荷造り紐を取り出し、気絶している男に猿ぐつわをし、両手を後ろ手に縛り、両足も縛った。
彼は続けて、男の懐を探った。
予想通り、スマホは通話中になっていない。
他に発信機や盗聴器のような物は出てこなかった。
財布には免許証やクレカなどの他に、写真付きの派手な名刺が何枚も入っていた。
サーニャ一筋の楽人は、興味も示さず名刺を戻した。
風俗の名刺が多いわりに現金が多く、スマホ決済ができない交友関係を予想させた。
ぺちぺちっ
「…んん……んががっ…?!」
一頻り確認をした後、楽人は男の頬を叩いて意識を戻させた。
「んがんが!」
騒ごうとした男の股間に、アル・ラクスがブーツの底を押し当てる。
「……騒いだら男を廃業して貰う。分かったか?」
「―――っ!」
楽人が目を眇めて低い声で忠告すると、男は慌てて首を縦に振った。
楽人が男の猿ぐつわを外す。
「質問に答えろ。全部吐け」
「………」
男は口を閉ざして何も答えない。
楽人がアル・ラクスを見て顎をしゃくる。
ぐにっ
男の股間に当てられたアル・ラクスの足に、少しずつ体重が掛かっていく。
「まっ、待ってくれ!」
男が慌てて静止の声を上げたので、楽人は合図を送ってアル・ラクスを止めた。
「……騒ぐなと言ったはずだが?」
楽人が睨みつけると、男は口を閉じた。
「まあ今のは目を瞑ってやろう。それで、素直に吐く気になったか?」
「……言えない」
男は声を抑えて眉を顰めた。
彼はアル・ラクスとは違う何かに怯えていた。
「何故だ?」
「言ったら殺される」
誰にかは確認するまでも無い。
「それじゃあ仕方ないな……」
楽人が表情を崩すと、男の顔に安堵の色が浮かんだ。
「俺もこんなことはやりたく無かったなんだがな……」
アル・ラクスが縛られたままの男を抑え付け、楽人は再び男の口を塞ぎ、男の服を持って来た大型カッターで引き裂いた。
「ふがふが?!」
男は抵抗しようとしたが、縛られている上にアル・ラクスに抑えられては、芋虫のように這って逃げることも出来ない。
男は間も無く、縛られている手首や足首、首回り以外全裸となった。
楽人は表情の抜け切った目で、スマホを男に向ける。
「ふへはーっ!」
男の悲鳴を無視して色々な角度から写真を撮った。
更に荷造り紐であちこち縛って、また写真を撮る。
やがて、男は藻掻く気力も尽きて、放心状態となった。
「吐く気になったか?」
「………」
楽人が尋ねても、男は虚ろな目で彼を見返す気力も無い。
「なるほど。そんなにネットに晒して欲しいか」
「んがっ?!」
男が目を剥いた。
「確かゲイが常駐してるサイトが幾つかあったな。ノンケでも平気で喰っちまうような……」
「!? はへろっ! んへひへうへー! んあんあ~……」
楽人がスマホを弄り始めると、男は本気で泣きながら、猿ぐつわ越しに縋るような目で懇願し始めた。
楽人はそれを見て、ほんの少しだけ安心した。
もし男が、「全裸で縛られた画像を同性愛者に拡散されても平気な人種」だった場合、彼は―――をするつもりだった。
それは彼も、二度とやらずに済めば、それに越したことは無かった。
「全部吐いたら拡散は勘弁してやる」
こうして楽人たちは、人間の尊厳を人質に取られた憐れな男から、色々な情報を聞き出すことに成功したのだった。
止めて!見張りのMPはもうゼロよ!




