公園
「いくぞーっ!」
楽人が7時間授業という激務を終え、愛妻の待つ我が家へ帰宅する途中。
彼は近所の公園で、不思議な光景を目にした。
「らいだーきぃぃっく!」
掛け声を上げたのは、滑り台の上に立っている小さな男の子だった。
年の頃なら就学前の5~6歳。
少し長い髪が跳ねている。
彼は舌っ足らずな言葉と無垢な笑顔と共に、近所のお姉さま方垂涎の生足を短パンから惜しげも無く晒して、滑り台を勢い良く滑り降りた。
「てぇいっ!」
「うわぁやられた~」
髪の跳ねた男の子が下に着くと、坊ちゃん刈りの男の子がやられた演技をして倒れた。
(おや?)
楽人は首を傾げた。
彼は時々公園の前を通るが、坊ちゃん狩りの男の子しか見覚えが無かった。
常識的に考えれば、子供は雨後の筍のように生えて来ない。
(引っ越してきたのか、それとも【リアライザー】か?)
一応知り合いの子供ということもあり、彼は探りを入れてみることにした。
「よう、坊主」
「あっ、にいちゃん」
楽人が手を小さく上げて声を掛けると、坊ちゃん刈りの方が笑顔で駆け寄って来た。
彼からは近付かなかった。
今のご時世、高校生が見知らぬ幼児に声を掛ければ、例えそれが同性であっても通報されかねない。
彼は嘗て、近所のお姉さんからそれを学んだ……反面教師として。
「久しぶりだな」
「うん!」
「そっちの子は」
「ともだち!」
「どこから来たって?」
「なんとかってとこ!」
「お母さんは、あの子のこと知ってるか?」
「うん! しってるよ!」
楽人が尋ねると、子供らしい明朗快活な返答が返って来た。
(何時の間にか友達、何処から来たか分からない、親も知っている……【リアライザー】の数え役満かな?)
彼にはもう、もう一人の男の子が【リアライザー】にしか見えなかった。
彼に見覚えは無かったが、世の中にはショタコンが溢れているように、ショタキャラも溢れている。
彼の知っているショタキャラの方が圧倒的に少ない。
男の子が普通の服を着ていることも、【リアライザー】ではない証拠にならない。
楽人の愛するサーニャだって、“ミレニアム戦記”の露出度の高い服はもう全く着ていないのだ。
とたたたたっ
もう一人の男の子も、漫画のように跳ねた髪を揺らしながら、楽人たちの方へ走り寄って来た。
「だれ?」
「きんぎょのにいちゃん!」
坊ちゃん刈りの男の子が、笑顔で楽人を紹介した。
言葉の意味を理解しないで使う子供らしい表現に、楽人は苦笑いを噛み殺して挨拶をした。
「こんにちは」
「こんにちわ!」
跳ねっ毛の男の子が、人懐っこい顔で元気良く挨拶を返した。
そのあまりの眩しさに、楽人は悪いお姉さんに着いて行かないか心配になった。
「ぼくはどこからきたの?」
「なんとか!」
(……然もありなん)
坊ちゃん刈りだけではなく、本人も分かっていなかった。
【リアライザー】の知能は設定と描写に影響されるため、楽人には納得しか無かった。
「遅くならないうちに、家に帰るんだぞ」
「「うん!」」
楽人が注意をすると、男の子たちの返事が仲良くハモった。
夕暮れが近付く中、不審者扱いを恐れた楽人は二人に別れを告げて、愛妻の待つ我が家への帰路に着くのだった……。
ショタなんてなんぼあってもいいですからね。




