エイオンモール到着
「おっきいですね~♪」
サーニャたちが“喜びに至る道”を出て数十分。
彼女たちは漸く、エイオンモールに到着した。
彼女たちがエイオンの敷地に入ると、広大な駐車場と、巨大な建造物が視界に入った。
駐車台数四千台を誇る駐車場は、平日の昼間なのに大半が埋まっている。
併設されている駐輪スペースは自転車で溢れ、建築物の陰や歩道に違法駐輪している物も少なくない。
商業施設の面積八万平方メートルは伊達では無く、建物は車がミニチュアに見えるほどに大きかった。
彼女たちが建物を見上げている間にも、少なくない客が出入りしている。
自動車に乗った家族、ママチャリに乗った主婦や学生、バス停から降りて来る御老人…。
これほど大きなショッピングモールなので、当然近くには駅もバス停もある。
初めて訪れた客が、建物の大きさに圧倒される姿はよく見られるので、行き交う人々は、彼女たちを特に気に留めていない。
もしサーニャが鍔広帽子を被っていなければ、状況は少し違っていただろう。
「久しぶりに来たけど、相変わらず距離感がおかしくなるような大きさだな」
楽人がサーニャの横に並ぶと、感慨深げに呟いた。
サーニャは視線を建物に向けたまま、無意識に彼の手を握った。
楽人は彼女の体温を感じると、いつもの強さでそれを握り返した。
「あーしも久しぶりだから、ちょっちエモい…」
微妙に懐かしむ範子を見て、楽人は思い出した。
(そう言えば範子はこの二ヶ月、元カレと付き合ってたんだもんなぁ…)
彼女は【リアライザー】が現れてから一カ月半ほど、はぐれリアライザーの真一郎と交際していて、初彼だったこともあって休日は毎日のように会っていた。
そのため、隣町に住んでいる彼女が、駅を挟んで学校と反対側のここへ来る機会は無かった。
「範子、懐かしいのはいいけど案内は大丈夫? 何だったら私が案内するわよ?」
貴巫女は湿っぽい雰囲気を吹き飛ばそうと、ジト目で憎まれ口を叩く。
「はにゃっ?! あーし信用無いっ!?」
範子は頭を抱えて上半身を横に振り、全身で精神的ダメージを主張した。
サイドテールを押し付ける形になって痛かったのか、途中から左手の形が、サイドテールを包み込む形に変わった。
「俺は範子のかっこいいとこ見てみたいけどな」
ピタッ
楽人がわざとらしく言うと、範子の動きが止まり、視線が彼の方に向かう。
「わたしも見たいですぅ♪」
サーニャが相槌を打つと、範子の頭を抑える手の力が緩み、今度は視線が彼女の方に向かう。
「私も範子がやってくれた方が助かるわ」
貴巫女が調子を合わせて、親友の欲しそうな言葉を選ぶと、範子の顔がニヤけた。
「そこまで言われちゃったら、仕方ないなあもう~☆」
範子は自分の両肩を抱いて、嬉し恥ずかしそうに身悶えした。
両腕に抑えつけられた豊かな胸が、彼女の身悶えに合わせて押し潰された風船のように形を変える。
それを見た貴巫女の目付きが微妙に細くなった。
「みんなっ! あーしに付いてこ~いっ!」
範子が悶えるのを止めて、腕を振り上げて号令を掛けた。
「おぉーーーっ!」
「はいっ♪」
「はいはい…」
全く統一感の無い返事を誰も気にせず、彼らは範子の先導で、目の前の巨大建造物に入って行った。




