レンタルショップ:来店
浜辺には幾つもの海の家が立ち並んでいた。
大半は食べ物を売っている店だったが、中にはシャワーやトイレ、海で必要になる物を貸し出している店なども少なくない。
楽人たちはその中から、店頭にサーフボードが飾られている、店の入り口から奥までハンガーラックがずらりと並んだ店に入った。
「結構あるね」
範子が店内を見渡して言った。
海の家と言うと開放的な印象が強いが、その店は万引き防止の意識が強く、商品は壁に覆われた店内にしか無い。
しかしその分、店内にハンガーラックを所狭しと並べ、顧客のニーズに幅広く応える方向性を売りとしていた。
「らっしゃーい…?!」
正面のカウンターに座る若い女性店員が、やる気の無さそうな声を掛けて固まった。
(わかる)
(わかるわ、その気持ち)
楽人と静香は、人外【リアライザー】三人を見た店員に同情した。
常識が違うので意思の疎通が怪しい上に、下手な対応は批難の的。
それなのに、海での一見さんだからリピートが期待できないし、勝手に写真を撮るのも不味いから宣伝にも使えない。
面倒な客の筆頭である。
「店員さん、メスリンの水着どこ?」
「え?」
初対面でも気兼ね無く声を掛けられるのは、陽キャの代表格であるギャルの美点だが、言葉が足りないのもまたギャルの特徴だろう。
店員は「メスリン」が何か分からず困惑した。
「えーと、この子用の水着はどの辺りにありますか?」
楽人はメスリンの肩を抱いて前に出ると、もう片方の手で彼女を指差して、範子の言葉を翻訳した。
「あ、それでしたらあちらの方にあります」
店員は助かったという顔をして、右側の壁の中ほどを指差した。
子供用の水着を奥に置いているのは、変態の――陰キャも陽キャもイケメンもオッサンもいる――万引き防止のためである。
「ありがとうございます」
礼を言った楽人たちが奥に行こうとした時、
「おおっ! カワイイじゃーん!」
彼らに匹敵する、ある意味ではそれ以上に面倒な客が現れた。
チャラ男の集団である。




