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極道一家:親馬鹿達

 範子は落ち着いた後、両親に事情を話した。

 恋人――真一郎――と付き合っていたことを。

 貴巫女の家に泊まると言って、彼氏の家に泊まっていたことを。

 先週の金曜日、浮気現場に遭遇したことを。


 その後、彼女は帰宅予定の日曜午後まで、貴巫女の家で慰めて貰っていたが吹っ切れず、帰宅して直ぐに部屋に引き籠って両親に心配され、夜が明けても部屋から出て来ない娘を心配した父親が、塾通いくらいしか思い当たらないので事情を確認するために楽人を拉致した……と言う訳である。


(範子が親に隠し事をしていたのがそもそもの原因か。俺も人の事は言えないけど、まあ仲直りできたようだし良しとするか)

「ごめんねパパ。心配かけて」

「もういいんだ範子。パパは全て許すぞ」

(あっ! あの目は彼ピだけは絶対に許さない目だ。同じ男だから分かる。世の中に娘を弄ばれて許す父親なんて居るはず無いよなぁ…)


 ぐぅ~~~っ


 範子のお腹から、豪快な主張が鳴り響いた。

 若頭と角刈りが、咄嗟に目を背ける。

 一歩反応の遅れた楽人を、弦之介(パパ)が人でも殺しそうな目付きで睨んだ。


「あー、そう言えばお腹空いたなー」


 酷い棒読みで誤魔化そうとする楽人。

 まだ夕飯には早いが、緊張が解けてお腹が空いたのは嘘では無い。


「あ・な・た?」

「ぐっ!」


 鏡花(ママ)に笑顔で窘められて口籠る弦之介。


(完全に尻に敷かれてるなあ…)

「出前でも取りましょう。須磨君も食べて行きなさいな」

「ご相伴に預かります」


 楽人も素直に受け入れた。

 その後、楽人は生まれて初めて、極上という等級の寿司を食べたが、味は良く分からなかった。

 舌が貧しいと言う訳では無く、会話の内容が怖くて、味わう余裕が無かったからである。

 例えば、


「それにしても須磨君、よくうちの黒服に付いて来たわね。怖く無かったの?」

「範子のことが心配だったので、それどころではありませんでした。それに彼らも(比較的)紳士的でしたからね」

「まあ! 範子! 須磨君にしなさい!」

「ママ、須磨っち彼女持ちだよ」

「奪いなさい」


 とか、


「有無、須磨君は今時の若者にしては中々度胸があるなあ。どうだ一杯?」

「…いえ、未成年ですので」


 とか、


「えええぇぇ~? 須磨っちも飲もうよ~~」

「だから未成年だって…」

「あーしのらけあ、ろめらいってひうのかぁ?」


 と針の筵だったのである。

 せめて黒服の一人でも居ればマシだったかも知れないが、若頭は組長の代わりに仕事の指揮を執るために退室し、一黒服に過ぎない角刈りもいつの間にか仕事に消えていた。


(俺は彼ピ君の二の舞は勘弁だ)


 まだ未成年の楽人には、酒の席での言葉をどこまで信じて良いか、全く判断が付かない。

 どんなに好意的に扱われても、範子に手を出す――二股をする――気なんて微塵も起きなかった。

 …その場で鏡花から、


≪久谷一家は須磨楽人に一切手を出さない≫


 と証文を作って手渡されたとしても、である。


 その内、寿司が無くなって、範子が楽人の膝で眠ったあたりでお開きとなった。

 範子は母親に肩を借りて自室へ運ばれて行き、楽人は車で塾まで送って貰った。

 最初は家まで送ると言われたが、楽人は塾に用事があると言ってそれを断った。


(教えてないのに家まで送られるとか色々怖すぎるよ、ほんと)

好意って地雷は受け取り拒否しても爆発するんですよねー(他人事)

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