第050話「第二次迎撃戦5」
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こっちと一緒に修正版の方も楽しんでもらえるように頑張ります!
「ええい、してやられたわい!」
エステラを追いかけて急いで後退しようとしたゼンニたちであったが、そこにエステラを追いかけてきたムラサメ隊が追いつき、意図せずしてゼンニ達は足止めを食う羽目になっていた。
負傷兵が多く、機動力のないゼンニたちはその場で手負いの騎士達をかばって防戦しながらわずかずつ後退するしか選択肢が取れず、逆にムラサメ隊にしてもゼンニ達と刃を交えるつもりはなかったが、通り抜けようにも騎士達をかばっているゼンニたちの壁を抜くことが出来ず、互いに一進一退の膠着状態となっていた。
そうしてゼンニ達主力が足止めされている頃、足を切断するという無茶までして彼らを突破したエステラはダンジョンの外に到達し、外に広がる景色から王国軍が陣取っている場所に狙いをつけ、一直線に急降下をかけた。
「モ、モンスターだ!」
「怯むな! 相手はたった一体だ!」
「総員戦闘用意!」
エステラの姿を見た兵士達は応戦の体勢を取ろうと動いていたが、エステラの目から見ればそれはカメのごとくのろい動作にしか見えなかった。
地面すれすれに降下し、陣内に侵入したエステラは縦横無尽に飛び回りながら兵士達を切り倒し、虱潰しに大地を捜索し始めた。
「マスター! どちらにいらっしゃいますか!」
すれ違いざまに兵士を斬り伏せては大地への呼びかけをし、わずかな反応も逃すまいと、全神経を集中させて周囲を捜索する。しかし、探せど探せど大地からの反応はなく、陣の中でそれらしい人影も見当たらない。
「マスター、どうかお返事をしてください!!」
「ききき! もしかしてあの男を探してるのか?」
大地を探すエステラの前に立ちはだかったのはルサル将軍だった。
「……一度だけ聞きます。命が惜しければマスターの居場所を言いなさい」
「きき、どっちが有利な立場かわかってないのか? あいつの命はこっちが握っているんだ、取引の主導権はこっちにあるんだぜ? …そして、そんな足の無い状態じゃあ戦いの主導権もこっちのものだな!」
「言わないのなら死になさい!」
エステラは会話を打ち切って魔力剣で斬りかかり、ルサルもまた短槍を構えてそれを受け止めようとした。しかし、短槍は一瞬で切断され、ルサルもあと少し反応が遅れていたら真っ二つになるところだった。
「あっぶねー、やっぱ普通の武具じゃそれには勝て、うお! ちょっ、すとっ! だあ!」
エステラはもはや会話をするつもりはなく、面倒な障害を排除してすぐに大地の捜索に戻るつもりでルサルを切り伏せようと連続で斬りつけていた。
「くそ! 会話くらい楽しめよな!」
エステラの攻撃をギリギリのところで躱しつつ、ルサルは腰のあたりから何かを取り出した。
「伸びろ! 螺旋槍!!」
ルサルが構えた筒状のモノはあっという間に伸びて、両方の先端がとがったドリル状の槍になった。
「ゼンニ殿のガッゼスほどじゃないが、こいつも魔槍と呼ばれる代物だ、さっきみたいには切れねーぜ!」
魔槍【螺旋槍】を構えたルサルは再びエステラに攻撃を仕掛け始め、それに対してエステラも相手の獲物がやっかいな代物であるということを理解して、攻撃の手を変化させた。
「【マジックボム】!」
「貫け! 螺旋槍!」
エステラの魔法攻撃に対してルサルは魔槍をすさまじい速度で伸ばし、ぶつけることで迎撃して見せた。しかも魔法を誘爆させただけでなく、魔槍は貫いた勢いのままエステラに向かっていき、正確に右肩を貫いた。
「ぐぅっ!」
「おっと、無理に抜こうとしない方が良いぜ! 変な行動をしようとしたら俺の意思一つで腕が千切れるぜ?」
ルサルが【螺旋槍】でエステラを貫き、身動きできなくさせたことで生き残っていた兵士達もエステラを囲むように集まり始めた。
「ルサル将軍! 早くトドメを!」
「いや! 捕えて仲間達の無念を晴らさせてやる」
「これだけ強力なモンスターならいい素材が取れるんじゃないか?」
口々に勝手なことを言い始める兵士達を見ながらルサルはひとまず捕縛でいいか? と考えいたが、その考えは甘いと次の瞬間思い知った。
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
右肩を貫いていた【螺旋槍】をエステラは力任せに引き抜き、強引に脱出してのけた。
「なぁ!? 無茶苦茶だなおい、」
右肩に大穴を開けながらも脱出したエステラは周囲に群がっていた兵士達を切り伏せ、上空に上がって大地の姿をどうにかして発見しようとした。
しかし、陣内のどこに目を向けても大地の姿はなく、さきほどの戦いで主だった天幕は吹き飛ばしたことから、この陣の中に大地はいないという事実だけがエステラに重くのしかかった。
「どこにいらっしゃるのですか…マスター、」
「お前の相手はあの男じゃなくて俺だろうが!」
上空100m近くに浮かんでいたエステラの元にルサルは【螺旋槍】を地面に突き立てて伸ばし、その勢いで登ってきて襲い掛かった。
空の上にいる限り、人間はここまでこれないという安心感からわずかに気を抜いてしまったエステラはとっさでルサルからの攻撃に対処できず、螺旋槍の攻撃をモロに受けてそのまま陣内に落下していった。
油断した、 しかしこの程度まだ! ぐ!?
体勢を立て直そうとしたエステラにルサルが上から追撃を仕掛け、エステラはそれを捌きながらなんとか地面への激突を防ぐので手一杯となってしまった。
地表すれすれで落下速度を殺し、ルサルから距離を取ってふわりと浮かんだエステラは改めてルサルに問いかけた。
「あなたにもう一度聞きます。マスターはどこですか?」
「そんなにあの男にご執心ってか? あいつなら魔法騎士に囲まれて王都送りになったよ」
「王都とはどこですか?」
「そんなの自分で調べな! 出来るんならな!」
今度はルサルの方から会話を打ち切って攻撃を再開し、エステラもそれを迎撃しようとして魔力剣を構えた。だが、そこで横やりが入った。
二人が激突する瞬間、その間で大きな衝撃とともに濃い霧が発生し、辺りの視界が遮られた。
視界が霧で覆われている中でエステラがルサルを見つけようとしていると、そこにセブルティスが現れた。
「エステラ殿、一度引きなさい」
「邪魔ですセブルティス!」
「いいから引いてください。P様の厳命です」
「知ったことではありません! 私の主はマスターただお一人のみです!! あの槍男を肉塊にしてでも居場所を吐かせてすぐに行かなくては!!」
「そんな身体でなにが出来る!! 私だって今すぐに大地様の元に行きたい気持ちは同じです! ですが、そのまえにあなたにように満身創痍で死んでしまっては大地様に合わせる顔がないでしょうが!!」
「・・・・・・・・、」
エステラはほんのわずかな間だけ逡巡した後、ものすごく悔しそうな顔をしてセブルティスとともに後退することにした。
「逃げられちまったか…」
ルサルはエステラが去ったことによって陣内にもたらされた被害を改めて確認した。
自分が居ながら兵士のほぼ大半が重傷を負い、死んだ者も多数、装備や物資もあらかたが戦いの余波でダメになっており、正直なところ、これが普通の戦争だったなら即刻王国に撤退したいというのがルサルの率直な意見だった。
「たかが一体のモンスター相手にこの被害とは、正直割に合わんなぁ」
もとよりダンジョン産のアイテムもほとんど手に入っていない今回のダンジョン攻略でろくな成果もまだないここにきてこれだけの被害を被った責任、これはどう考えてもこの場に居た将軍である自分が取らされるだろう事は想像するまでもない事だった。
「さて、どう言い逃れをするべきかな?」
この少しあと、ムラサメ隊との撤退戦をしながら出口まで到達したゼンニ達は負傷した騎士達を運び出すのに忙しく、高速でダンジョン内に戻っていくエステラの存在を目では追えていても構うだけの余裕はなかった。
次回は、
王国軍とダンジョン、決着はどうなる?




