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ダンジョン経営勉強中。  作者: イマノキ・スギロウ
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第049話「第二次迎撃戦4」

連休が終わってしまう…。

 大地が捕らわれたのを確認した水橋達はセブルティスの誘導を受け、ダンジョン内に残っていた王国軍とはなんとか接触せず、地下要塞エリアに戻る事に成功した。しかし、彼らはむしろ王国軍と戦っていた方がマシに見えるような思いをする羽目になった。


「……もう一度言ってください」


「…ダンジョンに入る時、大地は捕まってあいつらの陣内に連れて行かれた」


「ではなぜあなた方だけが戻ってきているのです!!」


「エステラちゃん落ち着きなさい、また頭に血が上ってますよ?」


「セブルティス!!」


「はい、言い訳をするつもりありません。私が付いていながら大地様をお守りできませんでした」


 陣内に連れて行かれる大地を救出しようと一度は潜入を試みたセブルティスではあったが、ゼンニを始めとしてイトイル、ルサル、魔法騎士団の実力者がわんさかいる中で気づかれずに大地を連れ出すことは不可能だった。


「ムラサメ! ここを頼みます」


「ま、待て! エステラ殿! 今すぐに大地様を救出する部隊を編制するからしばし、」


「待てません!」


 言うが早いか、出るのが早いか、土煙を巻き上げてエステラは飛んで行ってしまった。


「あ~あ、たく、もっちー、もっとソフトに伝えてあげなさいよ」


「そんなこと言ってもよぉDちゃん、あれ以上どう伝えろってんだよ?」


「とにかくすぐに増援を出した方が良いですね、エステラちゃん一人じゃ絶対に返り討ちになります」


「では拙者のムラサメ隊を向かわせます」


「あと俺のスライム軍団も連れってってくれ、試したい事がある」


「承知しました」


「あたしは少し休憩させてもらうわよ、ずっと移動しっぱなしだったし、誰か一人くらいは今後の事を考える人がいたほうがいいでしょ」


「では、なにもお構いできませんけど、ゆっくり休んでください」


「ピーポさん、ディーレさん、ありがとうございます。華撫様の事は私にお任せください」



 エステラをはじめとして、それぞれが動き始めた頃、王国のダンジョン攻略部隊もまた動き始めていた。

 大地を捕えて陣内に連れ帰ったゼンニは取って返して騎士団とイトイルを引き連れ、ダンジョンの奥に向けて進軍を開始していた。

 

「さて、鬼が出るか、蛇が出るかじゃな」


「モンスターが出るに決まってんでしょ」


「そういう意味で言うたんじゃないんじゃがの」


「言ってる間に来たわよ」


 イトイルの言われるまでもなく、ゼンニもダンジョンの奥から近づいてくる隠そうともしない強烈な殺気をひしひしと感じながら魔剣を構え、臨戦態勢をとった。


「ほぉ、ゴーレムではなく、お前さんがきたのか小娘」


 ダンジョンの奥から一人で現れたエステラを見てゼンニはそう言うと、目配せをしてイトイルに魔法の準備をさせる。


「…てもらいます」


「なんじゃ? よく聞こえんかったがなんと言った?」


「マスターを返してもらいます!!」


 叫び声とともにエステラは全速でゼンニに斬りかかり、ゼンニもそれに応戦する。

 二人が数度剣を交錯させている間に魔法を発動させたイトイルは前回同様にエステラを捕えようとしたが、一切止まることなく動き続けるエステラの速度についていけず、うまく捕えられずにいた。


「くぅ、動きが早すぎる! ゼンニ! ちょっとでいいから動きを止めて!」


「気軽に言うな! なかなかどうしてたったの1日半で動きが別物のようじゃ!」


「あなたの相手などしているヒマはありません! さっさとどきなさい!」


 エステラはゼンニとの攻防の中で【マジックボム】を発動し、周囲にばらまくように放った。しかし、その攻撃は不発に終わってしまった。【マジックボム】が放たれる瞬間、ゼンニの背後に居たイトイルが【アイシクルプリズン】を発動して【マジックボム】を包み込み、爆発の威力をほとんど無力化してしまった。


「イトイルか、助かったわい」


「魔法は何とか出来るけど、速度は止められないんじゃどうにもできないわよ」


「十分じゃ」


「ええい! 邪魔です!! スキル【空斬爪】4連!」


 岩すら切り裂く真空波が無数に放たれ、イトイルとその背後に展開していた魔法騎士団に迫ったが、今度は魔法騎士団が集団で発動した結界魔法【トライシールド】によって全て防がれてしまった。


「ちぃ、」

  

「そろそろこちらの番じゃな」


 ゼンニはエステラと一瞬距離を取り、魔剣に魔力を込め始めた。すると魔剣にはめ込まれた魔石が輝きを放ち始め、刀身自体も淡い光を帯び始めた。


「行くぞ!」


 【縮地】によってエステラの間合いに入り込んだゼンニはそのままのスピードで魔剣を振り切り、エステラを切り裂こうとした。だが、寸での所でエステラの魔力剣がそれを遮りなんとか受け止めることに成功する。しかしその受け止めた一瞬の隙をついてイトイルが【アイシクルバインド】を発動させ、エステラは動きを制限されてしまった。


「この! 邪魔をするなあぁぁぁ!!」


 一刻も早く大地の元に向かおうとしているエステラにとって、今のゼンニ達は行く手を阻む障害程度にしか認識していなかったが、いかんせん片手間で相手をしてすり抜けられるほどゼンニ達は甘くはなかった。その事を最初の戦いで身を持って知ったハズのエステラであったが、主である大地が捕らわれたという情報によって正常な状況判断も欠くほどに動揺していたのが致命的だった。

 足を拘束され、ゼンニとの不利な戦いの中でもエステラは前回と同様に魔力剣で【アイシクルバインド】を切り裂こうとするが、以前よりも強度が増しているのか、なかなか切り裂けない。


「無駄よ、前より魔力を込めたからそうそう切れないわ」


「ふむ、終いじゃな」


 エステラにトドメを刺そうとゼンニが魔剣を振りかぶると、エステラはまだ動く上半身を最大限に駆使して飛びきりの大技を放った。


「スキル【斬風乱舞】100連!!」


 複数の【斬風】を発生させる中位スキル【斬風乱舞】、それを連続で100も繰り出すことによってもはやそれはあらゆるもの切り裂く暴風か竜巻と言ってよいほどの密度を持ってゼンニ達に襲いかかった。

 イトイルと魔法騎士団は【トライシールド】を多重に展開させ、【斬風乱舞】を次々に防いでいったが、さすがに連続で攻撃を受け止め続けたことで強度を維持できずに、シールドを破壊される者が次々に現れ、シールドを破壊されたものはその瞬間に【斬風乱舞】の餌食となって切り裂かれていった。

 攻撃がすべて終わった時、立っていた魔法騎士は40名あまり居た人数が10人ほどにまで減っており、イトイルも含めて全員が肩で息をしていた。


「はぁ、はぁ、あれでも仕留めきれないとは…、本当にやっかいな、」


「お前さんに言われたくないのぅ」


 【縮地】で全ての攻撃を躱し切ったゼンニが再びエステラの前に現れてそう言った。


「もう一回今のをやられるとこっちが全滅しかねんのでな、これで終わりじゃ」


「そう思いますか? …ふんっ!」


「な、…そうくるか!」


 次の瞬間、エステラはゼンニも予想していなかったとんでもない行動に出た。


 なんと【アイシクルバインド】で拘束されていた両足をエステラは自ら切り裂いて魔法から脱し、翼を広げて再び行動を開始した。


「な、ちょとゼンニ、いくらモンスターだからってあいつ狂ってるんじゃない!?」


「ワシに聞くな!」


 拘束から逃れるためとはいえ、エステラの行動は常識の範囲から考えれば十分異常に映り、また、それによって経験が豊富なハズの魔法騎士の生き残りたちにもわずかながらに動揺が走った。ゼンニとイトイルはくぐってきた修羅場の数が違うため、なんとか内心にだけで動揺を抑えて見せたが、それでもエステラが自分の足を切り裂いた瞬間、その行動に驚いて一瞬動きが止まった隙をエステラは見逃さなかった。


さきのスキル以上の暴風を起こすんじゃないかと思えるようなスピードでエステラはゼンニ達を通り越し、そのまま出口へと向かって一直線に飛んで行った。


「ほ? 逃亡したのかの?」


「距離を取っての奇襲かもしれないわよ?」


「いや、それより今あの小娘が飛んでったのはワシらが来た方向じゃ、それに返してもらうとか言っとったが、……!」


「ちょっ! それじゃ本陣が、」


「ちぃ、一度戻るぞ! 動ける者は動けん者に手を貸してやれ! 後退じゃ!」


 ダンジョン内を飛行しながら出口に向かうエステラは魔力剣を強く握りしめ、外にいる大地を助け出す為に切り裂いた足の痛みも無視してさらに加速をかけた。


「待ってい下さいマスター! 今このエステラがお迎えに上がります!!」






 次回は、

 エステラは無事に大地を救出なるか?

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