第033話「激戦ふたたび?」
挿絵機能の使い方をようやく理解したのですが、あんまり使っている人いないという事は、なにか理由があるのでしょうかね?
ゼンニ達王国軍が王都でダンジョン攻略に向けて準備を進めつつある中、大地たちのダンジョンがある山中に動く複数の影があった。
「ふぅ、前来た時も思ったけど、ここ虫多すぎ」
「森ん中なんだから仕方ないでしょアン、それよりも今回は私たちが先導役なんだからしっかり道案内しないと、」
「分かってるけどさぁ、」
「メルー、ダンジョンに入る前からそんな固い事いうなよ」
「マルク、気を抜きすぎるのも良くないぞ」
「そうそうダズルスの言う通りですよ」
「へ~い、気をつけます」
彼らは以前大地のダンジョンに探索に入った事のある冒険者チーム-紅の剣- そして今回は彼らとは別に二つの冒険者チームを加えたそれなりの規模の冒険者達が一団となってある場所を目指して歩いていた。
「おいダズルス、本当にこの先に王国軍が敗北したほど凶悪なダンジョンがあるのか?」
「…正直言うとわからん、以前俺達が探索して潰したハズのダンジョンはそこまで凶悪ものではなかったし、本当にその時のダンジョンなのかどうか、」
ダズルスは自分の記憶を掘り起こしてみても、王国内で飛び交っていた噂程の脅威はほとんど自分の記憶の中にあるダンジョンとは一致せず、唯一思い当たる女悪魔のモンスターが居るという情報にも、自分と互角程度の実力しかなかったあの悪魔では王国軍を退けるのは難しいだろう…、という結論から本当にそのダンジョンが以前行ったダンジョンなのかの判断をいまだに出せずにいた。
「もしかしたら、あの後にできた別のダンジョンなのかもしれんな」
「そんなできて間もないダンジョンが王国のダンジョン攻略部隊を返り討ちにできるものか?」
「それも…、分からん」
顔なじみの別チームのリーダーとダスルスが会話をしながら進んでいると、前を歩いていたシーフのアンから停止の合図が出た。それを確認したダスルスは素早く後ろの者たちにも同様に合図をして息を殺す。
「着いたのか?」
「ああ、ここからはピクニック気分はおしまいだ。 皆いいか、今回の王国からの依頼を再確認するぞ?」
ダズルスは振り返り、後ろにいる冒険者達の様子を見ながら口を開いた。
「一、今回攻略予定のダンジョンの先行偵察を行う。 二、可能な限りこちらが偵察である事を悟らせないように行動する事。 要はあくまでふつうにダンジョン探索で来た冒険者を装え、という事だ。次に三、可能ならば相手の戦力を削いでおくこと。これの判断はこちらに任されているから無茶はする必要はない、安全を優先して行こう」
ダズルスの話に冒険者たちはそれぞれにうなずいたり、小さく返事をしたり、逆にいまさらいう事か?と言うように不快そうな顔をしている者も居た。
「最後に四、ダンジョンで得た情報は必ず持ち帰る事。今回の依頼の成否はまさにこの一点だけと言っていい、皆全力で当たるように」
ダスルスの話が終わり、冒険者たちがいよいよ戦闘態勢に入ろうという時、先頭に居たアンから気の抜けるような声が聞こえて来た。
「あの、ダスルス?」
「なんだ?」
「……あれ見て、」
「あれ?」
アンが指さしたのはダンジョンの入口、以前はなかった大きな金属製の扉があり、真ん中は白く塗装されている。いや、塗装ではなく不自然なまでに白い紙が貼りつけてあった。そしてその紙には何か文字が書いてあった。
『ちょっと出かけてきます。無理に入ろうとすると命の保証はできないのでよした方が良いですよ』
「はぁ?」
張り紙に書いてある文章の意味を理解するまでダズルスはわずかばかりの時間を必要とした。そしてその間に後ろに居た別チームの冒険者達はダズルスの横を通って扉に近づいていく。
「こんなのただのハッタリだろ」
「もともとダンジョンで命の保証何ぞ最初から期待してねえよ」
ダスルスが固まっていたため-紅の剣-のメンバーはその場にとどまっていたが、それ以外のメンバーは張り紙を無視して入ろうと扉に手をかけた。すると、
「警告はしっかり聞くものですよ?」
その言葉が聞こえてくるのと同時に扉に手をかけた冒険者二人の姿が消え、後ろに居た残りの冒険者たちは一気に臨戦態勢になった。
「ダッジとポーニックはどうなった!?」
「一瞬で姿が消えたぞ!」
「さっきの声は一体…、」
冒険者達が周囲を警戒しながら円陣を組もうとしているとその中心に何かが降ってきた。
「うぉ!」
「敵だ!」
「いやまて! これは、」
円陣の中に降ってきたのは、最初に消えた二人の冒険者だった。二人は首の骨が折られ、何が起きたのかわからないといった表情で死んでいた。
「ダズルス…、」
「ああ、周りだけじゃなく上にも注意しろ、」
「…なんだ、どこかで見た顔かと思えば、以前に戦った斧使いさんじゃありませんか」
真上からそんな声が聞こえ、次の瞬間ふわりと何もなかったところから出現するようにコウモリのような羽根を広げた女性が現れた。
「何者だ?」
「…覚えてないのですか? 私の羽を切り裂いてくれたのは後にも先にもあなただけだと言うのに、」
「羽を切り裂いた? ……! まさか!?」
「思い出しましたか? まったく、マスターの前であのような醜態をさらした事実、私にとって消し去りたい過去ですけど、」
「本当にあの時のお嬢ちゃんなのか、すこし見ない間にずいぶんでかくなったな。さすがモンスターなだけはある」
そう、彼らの前に現れたのは中位悪魔になったエステラだった。
「悪魔ですから、それでどうしますか? ダンジョンに入るのであれば死んでいただきます。死にたくない方のみお帰り下さい」
「ほう、そういう事か」
「ダスルス、このモンスターを知ってるのか!?」
「前にちょっとやりあってな、」
別チームのリーダーからの問いかけに答えながらもダズルスはエステラから目を離さず油断なく武器構え続けている。
「ところでちょっと出かけるとか張り紙があったが、あの時一緒だったお前のマスターとやらはどうしてるんだ?」
「………お答えできません」
「もしかして、お前留守番なのか?」
「…ふ、言葉に気を付けていただきたいですね、私はマスターから御身が戻られるまでの間、ダンジョンを任せる、と仰せつかったのです。そして私が居る限り、マスターの神聖なダンジョンには一歩たりとも汚らわしい者たちなど立ち入れさせません!」
実はエステラのその行為はDPが溜まりにくい原因の一つとなっているのだが、大地達がそのことにはっきりと気が付くのはまだもうしばらく後のことになる。
「と言う事はそこに入ろうとするとお嬢ちゃんとやり合う事になるわけか、」
「ええ、そうです」
数秒間、ダズルスはエステラをじっと見据え、その後にふぅー、緊張を解くように大きく息を吐き出した。
「……、なるほど、たしかに王国軍が敗北したのもうなづける。こりゃ勝てん」
「へ?」
「ダズルス?」
「ちょ、ほんと?」
マルクやメルー達は突然リーダーが発した言葉を聞いて信じられないというような顔になった。
「相手の力量くらいは見極められるつもりなんでな、…あの短期間でどうやってそこまで強くなった?」
「ご想像にお任せします」
「そうか、なら…ダンジョン入らないのなら見逃してもらえるか?」
「まて、何言ってるんだ!?」
「こいつ一人くらい囲んで叩けば一発で、」
「黙ってろ!!」
ダスルスの一喝で-紅の剣-のメンバーは黙り込んだ。
「私がマスターから受けた命はダンジョン内の安全確保を第一、というものですのでそうですね。あなたとの決着をつけるのも個人的には良いかと思いますが、あくまでマスターの許しをもらってからです」
「そりゃ命拾いしたな俺達」
「いいのかよダズルス!」
「依頼失敗になっちゃうよ!?」
「かまわん、お前たちを失うよりましだ」
「おい…、ダズルスふざけるなよ」
声のする方に視線を向けると顔なじみの冒険者リーダーがかつて見たこともないような形相をしていた。
「ダンジョンに入る前からコケにされて仲間まで失ってすごすごとひき下がったなんて話、依頼失敗以前に冒険者としてはおしまいになるぞ」
「落ち着け、俺は一時の恥の為に余計な犠牲を出したくないだけだ」
「何が犠牲だ! こんな奇襲しかできない悪魔女何ぞ、姿を捉えた今ならラクに仕留められる! お前ら、やるぞ!」
「…そうか、わかった。生きて帰れたらなにかおごってやるよ」
「そうやって一人だけ負け犬になってろ!」
そうしてかつての顔なじみが仲間達とともにエステラに斬りかかっていき、十秒程で全員が首をありえない方向に曲げられ、最期に残った冒険者リーダーも必死に剣を振るう中、一瞬で背後に回られ、枯れ木を折るような音ともに首がだらんと垂れ下がり、絶命してそのまま倒れた。
「マジかよ」
「あの悪魔、あんなに強かったの?」
エステラの圧倒的な強さを見せつけられ、ダズルスの背後でマルクやアンは恐怖を隠し切れずにいた。
「いつまでもそこにいるなら目障りですし、あなたたちも戦りますか?」
「ひ、」
「いや、遠慮しとこう。一つ聞きたいんだが、そいつらの死体はどうする?」
「さて、どうしましょう? 人間の肉はマスターはお嫌いな様でしたし、畑の肥料にするにしても扱い方がわかりませんから…、」
「構わないのであれば、俺達の手で埋葬させてくれないか?」
「……マスターのダンジョンのそばに人間の墓を作るのは看過できませんので持ち帰るというのであれば、」
「それでいい」
「ダ、ダズルスどうやって運ぶの?」
「衣服以外の装備は外して馬車のある村まで担いでいくしかあるまい」
「でもそれだと彼らの家族や仲間が黙ってないんじゃ、」
「遺体が戻ってきただけでもありがく思ってもらうしかない、どの道すべてをここから運ぶのはこの人数じゃ無理だ、」
「では、あとの片付けはお任せします。お早目にお帰り下さい」
「あ、あぁ、分かっている」
何とも奇妙な-紅の剣-とエステラの邂逅はこうして殺伐と気抜けのする微妙な空気のまま終了する事となった。
一方その頃の大地達は、
「セブルティス、あとどれくらいだ?」
「上空の分身から見た限り、あと五、六キロ程かと、」
「遠いなぁ」
「そーだなー」
森の中を疲労気味の足取りで歩く大地の後ろで水橋のお気楽な声が聞こえる。
「水橋、お前ずいぶん余裕そうだ、あ、ずりー!」
振り返った先ではなんと水橋が黒茶色いの馬に乗っていた。
「水橋、いつの間に馬なんて捕まえたんだよ!」
「何言ってんだ、これスレイだぞ?」
「え、マジで?」
「マジマジ、ちょっと土を取り込んで保護色にしてスライムって分かりずらくしてるだけだよ」
「造形は完璧に馬そのものだな」
「まーな、もともと俺美術大だし、」
「うへー、通りでやたら美術的造形にこだわるわけだ」
「ふ、向こうに居るころから生きたスライムが居たら作りたい造形をいくつも夢想してたからな、」
「そ、そうか、ところでほんとに大丈夫か?」
「ここまで来て何言ってるんだよ」
「いやだって、確かに必要なものを手に入れたいとは思ってたけど、王国内の街に行くのはやっぱ危険な気が、」
「大丈夫だって、王都じゃないからそんなに冒険者は多くないし、なにより俺が何回か利用したことがあるから道にも明るい」
「けどほんとにあるのか?」
「ある、前に利用した時、他から流れて来た品だっつっていくつかあるのを見たから大丈夫だ」
「今もあるとは限らねーだろ」
「まぁ、なかったらなかったでもう一つの目的を片付けるだけでもいいだろ」
「確かにそうだな」
大地達はそんな話をしながら数時間かけて王国内の街でも三番目に大きな『ヨプル』に到着した。
俺と水橋、そしてセブルティスはそのままだが、さすがにスレイは生身で出していおくわけにはいかないので大きな瓶にはいり、水橋が後ろからリュックの様に袋に入れて下げている。
「さて、まずはメシ食いに行こうぜ」
「あー、メシ先にしちゃう?」
「どした水橋?」
「いや、ここ、商品の品ぞろえは良いんだけど、メシはなぁ~」
「……まずいのか?」
「クソが付くほど、」
「そんなに!?」
「この国の人って基本味覚が大味なのか味付けが濃いんだよ。俺らにとっては過剰なくらい」
「マジでか」
「どうしても食いたいならスープを水で薄めるか、材料買って自分で作った方が良いと思うぞ」
「そこまでするほどなのか?」
「…なら実際に体験してみ、ちょっとここに居ろ」
そう言うと水橋は後ろにあった露店のような店の行き、何やら肉の串焼きっぽいものを買って戻ってきた。
「ほい、食ってみ」
「んじゃ、いただきまーす…!?」
なんだこりゃ? 肉の串焼きなのはあってたようだけど、肉の味がほとんどしない、ただただ塩のしょっぱさと香辛料の辛さだけが脳天を突き刺すように口に広がるだけだ。
「う…、うえ、マジかよ」
「おい、店のオッチャンがこっち見てるから吐き出すのはまだ我慢しろ」
「う~、今すぐ口をゆすぎたい」
「我慢しろって、」
水橋に背中を押されながら俺たちはその場を後にした。
串焼き屋を後にし、俺達はひとまず水橋のチョイスで安めの宿を取り、四人揃って部屋に入った。
「あー、最悪だった。よくあんなので店やってられるな」
「ここじゃあの味が標準なんだよ」
「水橋には悪いけど俺この国で生きていける気がしない」
「安心しろ、俺も初めてここのメシ食った時同じ事思ったから、で、そろそろ本題にはいろうぜ」
「んっとまずアネイル達に頼まれた調合用の素材ってのはセブルティスが店の場所を分身で確認してるからすぐにでも買いに行くことは可能で、あとPちゃんの要望の調理器具についてはこれからどんなのがあるか下調べしないとな、ま、せいぜい切れ味のいい包丁があるくらいだと思うけど」
「ダンジョンからの流出品次第で文明の進歩とかも変わってるだろうから、一概に俺らの世界の中世時代と同じ水準で考えない方がいいけどな」
「で、今回ここに来た一番の目的」
「仲間の救出か」
「「・・・めんどくせー」」
次回は、
大地達が王国内の街で会おうとしているダンジョンマスターとはどんな人物なのか、そしてその背後に当然あるトラブルとは一体?




