第034話「救出作戦1」
色々やる事が一気に増えたせいで投稿が二月なってしまいました。見てくれている方、申し訳ありません。
ちなみにリメイク版の方も少しずつ書いてますのである程度溜まったら別枠で投稿します。
さて、俺と水橋がなぜ遠くダンジョンを離れ、王国の街にいるのか、そのことについて少し話しておこう。
~約一日前~
俺と水橋はエステラやスレイを連れて少し遅い朝食を取っていた。
「要~、画面見ながらメシ食うとこぼすぞ?」
「うん、わかってるけどあれ以来掲示板に結構頻繁に情報が上がるようになったから、情報収集しとこうとと、あ、メール来てる」
「メール? 誰から?」
「前に水橋と一緒にフレンド登録した子、なんていったけ? あのアンコ派の…、」
「あー、あの時の子か、てかあの時はお互い名無しで書き込んでたし、特に名前は出てなかったろ?」
「あぁそうだった。おまけに登録してから一、二回しかメールしなかったからなぁ」
「それってフレンドって言えんのか?」
「ネトゲじゃそんなもんです」ッキリ!
「キリッじゃねーよ」
「ノリわりーな」
「んなことより、そんな交流の薄いフレンドからのメールってどんな内容なんだよ。ホレ、オープン・ザ・メール」
「個人のメールをほいほい覗くなよな、えーと、内容は………うわぁ、デジャブ」
「なにが?」
「水橋がここに来ることになった時とまったく同じ感じの文章なんだけど、」
「どれどれ」
『ちょっとマジでピンチだから助けて!』
「危機的状況なのはわかるな」
「どうする? 助ける?」
「一、二回しか話してないからって見殺しも後味わりーわな」
「でもどう考えても厄介事だと思うんだけど」
「大地~、あんま面倒くさがるとお前の称号がヒッキ―になるぞ?」
「うぐ、それは痛い、まぁ、いい加減ダンジョンから外の世界を見に行くのもいいか」
「そうそう、ちゃんと働きなさい息子よ」
「おめーいつから親父になったんだよ」
水橋との軽いやりとりで朝食がてらダンジョン外への遠征が決まり、昼にはもう出発の支度まで終わっていた。そしていざ出発の段階で一つだけトラブルが起こっていた。
「マスター! なぜ私が残されるのですか!」
「いやだって、エステラが一番他のモンスター達の統率がうまいし、なによりこのダンジョンで一番強いからな」
「そんな強いだなんて、光栄です。うふふふ、てっ、違います! ならばこそ最強の私がマスターの御身をお守りするのが最適ではないですか!」
「だからダンジョンを任せるんだろうが。 おれの心臓はダンジョンコアなんだからそれをやられたらいくら身体が無傷だろうと死んじまうだぞ?」
「!っ、 た、たしかそうですね」
「それでも納得できないならちょっと言い方を変えようか? エステラ、俺の命、文字通りお前に預ける。戻ってくるまでの間俺達のダンジョンと一緒に守ってくれ」
大地の話を少々うつむき加減で大人しく聞いていたエステラはひとまず納得した様子で大地の方に向き直った。
「…はい、マスターのお帰りを心よりお待ちしております。不在の間はどうぞお任せください」
「エステラちゃん、ついでに俺のコアも守っといてね」
「マスターのご命令があれば守ります」
「だ、大地~」
「エステラ、一緒に守ってやれ。きちんと守れたら帰った後でご褒美やるから」
「!? はい! マスターの仰せのままに!」
ご褒美と言った瞬間、むっちゃ目を輝かせてうれしそうにしやがって、しっぽがあったら絶対ぱたぱたさせてそうだなこいつ。 クリエイトの時マジでしっぽつけとくべきだった。
とまあ、こんな感じてダンジョンを出発し、俺達は今、宿の部屋で情報の整理をしているんだが、やっぱり事態は思った通りめんどくさい事になっていた。
「で、来る途中で向こうが送ってきた救援要請の詳細は?」
「その前に水橋、内容聞いてから帰るとかいうなよ?」
「言わねーよ」
「よし、で詳細というか、向こうが置かれている今の状況は、…接待されてる」
「はぁ?」
「だから、歓迎されてお茶とかケーキでもてなされてるんだって」
「さぁー買い物して帰るかぁ」
「だから確認しただろうが! 第一助けようって言い出したのお前だろ水橋!」
「命の危機ってわけでもなさそうなのにどこがピンチなんだよ! 好きなだけ菓子食ってろ!」
「だからその歓迎されてる状況がピンチなんだって」
「……どゆこと?」
「まず、歓迎している相手、この町でも有力なお貴族様なんだって」
「あ、その時点でなんかもう察し、」
「で、今回の救援要請を出したダンジョンマスター、女性なんだけど、彼女を連れてったのがそのお貴族様の長男で、」
「貴族の長男で女マスターで歓迎って時点で起こりえる事なんてほぼ一択じゃねーか!」
「求婚されているそうです。しかも第5夫人として」
「超リア充核爆発しろ」
「一人の相手だっていないこっちとしてはうらやましいよなぁ」
「つーか四人も妻がいてなお欲するとかどこの種馬だよ!?」
「街でセブルティスが集めた情報によると、貴族の長男が声をかけるまでにも何人かアプローチしてた人がいたらしいけど、みんな降られて高嶺の花状態だったらしいぞ」
「なるほど、それで珍しい美人が貴族の目の止まったと、」
「まぁ、ダンジョンマスターが街に来ること自体珍しいけどな」
「そりゃそうだ。で、どうやって助けるんだ? スレイ達で暴れるってわけにもいかないだろ?」
「こういう時の基本はやっぱアレだろ」
「アレ?」
「ふっふっふっ、まさかリアルでやる日がこようとは…」
不敵に笑う大地に対し、水橋は嫌な予感しかしなかった。
街の中心部に立ち並ぶ豪邸の中でも一際大きな屋敷の中、ある部屋で使用人に囲まれながら一組の男女がテーブルで向かい合いながらお茶を飲んでいた。
「カナさん、お茶のお代わりはいかがですか?」
「いえ、もう結構です」
背後に控えていた給仕に手でもう必要ないというサインを出しながらダンジョンマスターである土井 華撫はなんとかこの場から脱出する方法を考えていた。
「そうですか、で、先ほどのお話ですが、お返事はいついただけますか?」
「あのぅ、お返事でしたら先ほどすでにお答えしていますけど、」
「いえいえ、あれはまだ出会って間もなかったのでカナさんが私の事をよくご存じないために言ってしまった失言だとちゃんと理解していますよ」 にっこり
失言じゃねーよ!
「もっと私の事を深く知っていただければ、どれだけこの提案が素晴らしいものなのかわかっていただけるはずです」 にっこり
提案ですらねーだろ! つーかお前の事なんてわかりたくもないわ!
「そ、そう言われましても私、何度も申し上げている通り、街に連れが居りますので心配させないうちにそろそろお暇したいのですが、」
「ああ、それでしたらご心配なく、お連れの方もこちらにお招きしてカナさんが私の妻になった時の為にお祝いに参加していただきましょう」 うざいくらいにっこり
だ れ が! だ れ の! つ ま だ っ て ! ? マジでぶん殴ってやろうかこいつ!!!
「では、もう一度言いますが、私はあなたの妻にはなれま「へっくしゅん!」せん」
・・・・・・・。
「はて、風邪かな? ああ、すいません。なんとおっしゃったのでしょう? 妻になれま『す』ですか?」怒りを覚えるくらいにっこり
決めた。帰りにあのにやけ面、絶対一発ぶん殴ろう。
華撫が心の中でそう決めていると、頭の中にメールが届いた音が響いた。
メール? もしかして救援要請したフレンドの誰かが来てくれた?
ウィンドウを自分にしか見えないように小さく開き、こっそり内容を確認するとそこには、
『ただいま潜入中、脱出の算段は追って伝える』と短い文章だけが書かれていた。
ダメ元だったけど、本当に来てくれた? けど、どうやってこの屋敷から脱出させるつもりなのかしら?
「カナさん? どうされました?」
「あ、いえ、なんでもありません」
「そうですか、もしかして妻になる決心が…、」
「ぼっちゃん」
相変わらず妄想全開の発言をしている貴族長男の背後に音もなく歩み寄る一人の男が現れた。
「ぼっちゃんはよせ、もう俺は成人しているんだぞ?」
「ご当主となられるまではぼっちゃんのままです。もしお嫌でしたら一度でも私に剣の稽古で勝ってからにしていただきたい」
「…ふん、で、なんの用だ?」
「屋敷の周りでレッドバッドが数匹出現しまして、撃退しましたが街の方にも出るかもしれません。見回りの人数を増やしたいのですが、ご許可いただけますか?」
「お前が屋敷に居るならいくら使っても構わん」
「ありがとうございます。 …それと女遊びはほどほどに、旦那様と奥様が戻られた時の説得はなかなかに骨ですので、」
「今回は遊びではなく妻にする方だ」
遊びでも妻でも嫌だっつーの!
「では、失礼します」
貴族長男に一礼して足音一つ立てずに男は部屋から出ていった。
「あの方は?」
「ああ、あいつはウチの私設騎士団の団長を務めている男です。名前はラインズというのですが、なかなか口の減らない奴でして、ちなみに既婚者ですので」
その情報別にどうでもいいし、てか、それを言ったらあんただってすでに既婚者だろ!!
とはいえなるほど、地方貴族のとはいえ騎士団団長か、道理であの男そこらの冒険者よりよっぽど強そうな感じがするわけだ。ってそれじゃなおさら逃げらんないじゃない! どうしよう~!
せっかくダンジョンマスターである事がバレずに脱出できると思っていた矢先、また面倒な問題が出現したことで、内心頭を抱える華撫なのであった。
次回は、エステラが居ない状態で大地はどこまでやれるのか? そして無事に新キャラ土井華撫は脱出なるか!?




