第021話「ダンジョンの日常2」
やっとできた。
これからの展開的に話を考えるのがすごいきつかった。
でもここのせいでまた矛盾が出てきたりしたらその時は修正が入るかも。
~PちゃんとDちゃんの場合~
PちゃんとDちゃんは基本、決まったところで寝るという事がない。いつも飛び回ったり、大地や水橋が頼んだ仕事をこなす合間に短い睡眠時間を取るくらいで、むしろ寝ているところを見るのはレアと言える。
「大地さーん、頼まれてたゴブリン達への皮剥ぎとなめし方の伝授、とりあえずホブゴブリン全員に教え終わりましたけど、あとどうします?」
「ん、サンキュー、ならあとはゴブリン達同士で教えて行けば問題ないだろ。Pちゃんは時々間違ったやり方してないかだけ気にかけてくれれば大丈夫だよ」
「はーい」
Pちゃんは基本、決まった仕事というのはないが、自分が使える主である大地達の世界の神からの指示で、「自分の担当するダンジョンマスターに必要な事をサポートせよ」と言われているので積極的にサポートしていた。
ちなみにDちゃんも基本的には同じ指示を受けているのだが、あくまで「必要な事をサポートせよ」という指示であることと、水橋本人が自己解決能力が高い事から、あまり仕事を割り振られず、本人もこれ幸いと自堕落な生活を享受していた。
「さーて、今日こそはおいしいラビットステーキを食べるために調理担当のホブゴブリン達をみっちりしごきましょうかねぇ~」
「ピーポ、ちょっといいものあるんだけど付き合わない~?」
「ディーレ? いいものってなに?」
「ん~、前のダンジョンの時から作ってたものでね、この世界の果物で作った果実酒もどき」
「…よくそんなもの作る余裕と知識がありましたね」
「だからもどきだって、もっちーのダンジョンに入って来た侵入者の中に商人がいたみたいでね、そいつの持っていた荷物の中にワイン造りの手引き書があったのよ、後生大事に鍵つきの箱を持ってるからなにかと思って奪わせたらその中に、」
「この世界だとまだ本は貴重品みたいですし、たしかに宝物扱いで箱に入れるのもわからなくはないですが、だからって作ります? DPを気にしなければ購入リストでも酒精が入ったものは手に入るでしょうに」
「分かってないわね~、この世界にあるもので作るから面白いんでしょうが」
「そういう冒険心は私にはないので、」
「まあ、とにかく一口飲んでみなさいよ、ほら♪」
「……それ、ディーレは飲んだんですか?」
「・・・・・・・・・・」
Pちゃんの問いかけにあからさまに視線をそむけて黙り込むDちゃん。
「じゃ、まともなものができてからまた誘ってください」
「ちょ、まって、味見役になって~」
「なるか!」
「どうして!? 新種のお酒試飲第一号になれるのよ?」
「誰がそんな人体実験に付き合うか!!」
「どうせ、腹は壊したって神の眷属である私たちが死ぬことなんてないんだからいいじゃない」
「じゃあ自分でやれ!」
「いやー、私はその、ほらグルメだからおいしいもの以外は口に入れたくないっていうか…、」
「なら捨てろ! そんなもん!」
「えー、もったいないじゃない」
「だったら最初から作るな!」
結局、Dちゃんいわく果実酒もどきと呼んでいたビン入りの液体はゴブリン達の食事に振る舞われ、その後丸二日ほどゴブリン達が原因不明? の体調不良で動けなくなったことに大地は首をかしげることとなった。
「まったく、昔からディーレはろくなもの作らないんだから」
「言ってくれるわね」
「うわ! なに、いつから後ろに?」
「たった今よ、ねぇ、ちょっと一緒に来て」
「また変なもの作ったんですか?」
「違うわよ、いいから来て!」
「ああ、ちょ、わかったから羽をかぎづめで引っ張るなー!」
場所は変わってここは地下要塞の食堂の厨房。そこには今、調理担当のホブゴブリン数体とDちゃんPちゃんがいた。
「で、なんで私連れてこられたんですか?」
「ピーポってたしかスイーツの作り方結構知ってたわよね?」
「ええ、まぁ、好きですから」
「なら話は早いわ! さっき購入リストでお菓子作りセットってのがあったからもっちーに頼み込んでDP購入してもらったのよ、生クリームとかチョコとかスポンジの材料とかいろいろあるし、備蓄のフルーツも持ってきたから今日にティータイムにぴったりのお菓子のフルコース作りましょ!」
「……道具はあるんですか?」
「一通り使いそうなのは前から鍛冶場のゴブリン達に作らせてたわよ? バットやボール、泡だて器や粉ふり用の網とか」
「オーブンはどうするんですか?」
「そこは抜かりなく! じゃじゃーん先生登場よー!」
Dちゃんがそういうと調理室の奥からアネイルが顔を出した。
「アネイルさん、あなたもですか、」
「……ミルクレープ以上のおいしいお菓子ができるかもしれないって言うから、その、私も食べたいなって思ったから、んと、とにかく早く作りましょうよ!」
「鍛冶場で金属の箱も作ってあるから魔法で熱すれば問題なく作れるはずよ」
「はぁー、ま、たまにはいいですけどね」
そう言いつつ、久々に思い通りのケーキやスイーツを作れるという事に内心わくわくしながらPちゃんはみんなと一緒に調理を開始した。
数時間後、仰向けにひっくり返りながらも満足そうな顔のひよこと少女が転がっていた。
「ふぅー、さすがに食べ過ぎちゃったわ」
「一人で4ホールも食べるからでしょ」
「だってあんたがホブゴブリンに指示して休みなくどんどん作るから食べるしかなかったんでしょうが」
「まぁ、そこは反省してます。たしかにまだ手つかずのケーキだけで5ホールもありますしね」
「夕食分はあたし要らないかも」
「あしたのティータイムの分までは確実にありますね」
「というか、どこか涼しいとこに保管しないと明日どころか今日の夜中までだって持たないかもしれませんよ」
「あ、なら私の氷結魔法で鉄の箱のまわりを固めておけば、」
「アネイっちナイスアイデア!」
「それが一番確実ですかね」
そうしてその日のスイーツバイキングは男子達には知らされることもなく終了した。
夜、Pちゃんはダンジョンの警備の確認とその日の各モンスター達の働きを確認して大地に報告し、大地はそこから改善点や防衛に必要な事柄を考えだしていく。
「じゃあ、私はムラサメちゃんたちにそれを伝えて来ればいいんですね」
「ああ頼むよPちゃん、俺はまだしばらく考えたい事があるからこの部屋に居るよ」
「分かりました」
そういうとPちゃんは部屋から出て行った。Pちゃんを見送り、ダンジョンの防衛体制の見直しやモンスターの武装について計画を再確認していた大地は不意に眠気に襲われた。
どうしよう、また虹色コーヒーでも、いや、あまりDPを無駄に消費するなら顔を洗って、…そういえば2日前から風呂入ってなかったな。ちょうどいいし入ってくるか。
そう考えた大地は部屋から出て、眠気を覚ますために大浴場に向かった。
「ふぅー、やっぱ風呂入ると目が覚めるな」
大浴場でたっぷり湯につかりほくほくと湯気の上がる身体で大地は大浴場から出てきた。
さて、部屋に戻ってもう少し計画考えてから寝るかな、ってあれ? 女湯の明かりがついてるけど、誰かいるのか?
女湯の方に張ってある不透明ガラスから光が漏れているのを見てそう疑問に思っていると女湯の扉が開き誰かができた。
「やーっぱたまにはお肌のため直接入浴しないとね」
「わざわざする必要を感じないですけどね、普段からこの身体は魔力で完璧な状態に保たれているんですから」
「でも身体の感覚を忘れないようにするのは大事よ?」
「そこは同意します」
出てきたのは金髪にメガネのクール系美人とちょっとギャルっぽい感じのパープルカラーのお姉さん系の美人だった。俺の記憶の中でこんな美人と会った覚えもダンジョンに招いた覚えもない。しかも二人の後ろには真っ白な鳥の羽のようなものがある。
「あの、誰ですか?」
「! あ、見つかっちゃった、どうする?」
「・・・・・まだ姿をさらして良いと指示が下りてませんから、ちょっと面倒ですが、忘れてもらいましょう、エステラちゃんも出てきてくださいな」
金髪の女性がそういうと、通路の影からエステラが音もなく姿を現した。
「…私の事も知っているとは、何者ですか?」
「警戒しなくても別に敵対するつもりはないですよ、」
「信じると思いますか?」
そのまま、エステラは手に持っていた剣を抜き、臨戦態勢に入った。
「ま、その対応はダンジョンを守るものとしては当然ですね。けど、前から思ってましたが、相手が直接攻撃や魔法での攻撃だけを仕掛けてくると考えているなら落第点ですよエステラちゃん」
「なにを、!」
次の瞬間、エステラとすっかり蚊帳の外になっている俺は自分の周りに、いや部屋いっぱいに真っ白い羽根が無数に舞っていることにようやく気づいた。しかも羽根はだんだんと身体にまとわりついてきている。
「く、」
白い羽根に気づいたエステラは羽根を振りほどこう高速移動で部屋の中を飛び回り、振り切れないとわかると金髪美人に襲いかかった。
「だから、それだと落第点ですよ」
そう金髪美人が言うと、エステラは徐々にスピードが遅くなり、そのまま倒れてしまった。
「エステラ! 火炎魔法【ファイヤーショット】!」
「うわっあつっ!」
エステラが倒れたの場所に走りながら俺は最近覚えたばかりの火炎魔法で金髪美人をけん制してなんとかエステラを回収しようとする。しかし、突然先ほど部屋で感じたのとは比較にならない猛烈な眠気に襲われ、俺の身体はみるみるうちに鈍くなり、ついに膝をついて動けなくなってしまった。
「く…そ!」
倒れこんだ俺のそばに魔法を食らったことなどないかの様に無傷の金髪美人が近寄って来た。
「この間魔法の勉強を始めたばかりでもう使えるようになったんですか、なかなか将来性がありますね。今後の為にも頑張ってくださいね、大地さん」
その言葉を最後に俺の意識は深い眠りに落ちてしまった。
「マスター、そろそろご起床してください」
「ん、エステラか、あれ、エステラ、お前倒れてなかった?」
「え? 私が倒れていたんですか? ここ最近は侵入者もおりませんし、訓練や自己鍛錬でも倒れるほど自己管理ができなくなるようなことはしておりませんが、マスターの記憶違いではないでしょうか?」
「そうかな? …夢だったのかな?」
「では、マスター朝食の用意ができてますのでお早めにお着替えを」
「だからしなくていいって!」
「そうおっしゃらずに!」
「だーいちさーん、朝ご飯食べないならもらっちゃいますよー!」
「だー! それ勘弁してPちゃーん」
二人と一羽のやり取りをこれまた一人と一羽が遠目に眺めてニヤニヤしていた。
「たく、腹減ってんだから要も早くこいよなぁ、いつまでこの状態なんだよ」
「そうよねぇ」
ほーんと、いつまでこの状態なのかしらね、あたしたち。
Dちゃんの心のつぶやきは誰にも聞かれることなく消えたのだった。
次回予告
いよいよ装備の拡充が進んできたダンジョン、今後の戦略として大地が打ち出す計画とは?




