第020話「ダンジョンの日常1」
今回より次回の方が時間がかかりそうです。
ちなみに次の戦闘回も少しずつ書いてるのでスパッと書ければ2話同時に出せるかもです。
~エステラの場合~
エステラの朝は早い。マスターである大地よりも早く起き、身支度を整えて朝食準備を済ませてから大地のそばに控え、いついかなる時でも呼び出しに応えられる様に万全の態勢で臨むのがエステラの朝のである。
「マスター、朝ですよ、そろそろご起床されてください」
「ん~眠い、 …おはよ~、エステラ」
「おはようございますマスター、朝食のご用意ができております」
「わかった、じゃあ着替えるから今日こそは外で待ってて…、」
「いいえ、マスターのお着替えを手伝わせていただきます」
「だからしなくていいって言ってるだろ」
「なぜでしょう? 私はマスターにお仕えする身。ならばお着替えからお背中を流すことまですべて言いつけていただいて構わないのですよ?」
「単純に恥ずかしい! あと、今そんなラクしてたら老後とか絶対に完全介護が必要になるだろ!」
「ならばその時は私がマスターの全てのお世話をさせていただきます。お食事から入浴、あとは下のお世話まですべて!」
「決めた、俺の生涯目標はくたばるまで自分の事は自分でやる!」
「そんな~! マスターお世話させて下さい~!」
「うるせー!」
マスターの大地を起こした後、食堂まで大地につき従っていたエステラは大地と別行動となった。ダンジョンが大きくなってきたことで最近のエステラは色々な仕事を任されるようになったためである。まず一つ目はダンジョンの防衛について、これはゴブリンやアウラウネたちの指揮権を大地から一任されているエステラがダンジョン内で効率よく侵入者を撃退できるフォーメーションや戦術の構築、個々のモンスターの技量を向上させるための訓練等をモンスターに指示してダンジョンの戦力UPを図るのが目的であり、エステラ本人もマスターの命を守る事に直結するので、モンスター達に出す指示にも気合が入っていた。
「そこ! スキル発動は力任せではできません! もっと身体全体の動きを連動させて素早く剣を振りなさい!」
「ハイ、エステラサマ」
「クロスボウ隊、的の中心に一発も当てられなかったらどうなるかわかってますね?」
「リョ、リョウカイデス! エステラサマ!!」
さて、あとはほっといても訓練はできますね…、次は、
エステラが訓練室を後にして次に向かったのは、このダンジョンで唯一の生産施設である鍛冶場であった。ここではダンジョンで使用する各種武具の生産と生活に活用できるものを作ったり開発したりすることを目的に作られていたが、肝心の生産者の技術が育っていないため、現在はまず、大地がホブゴブリンたちの技術の向上を第一の目的にして稼働させていた。
鍛冶場の大きな鉄扉を片手で軽々と開けて中に入ったエステラはむわっとした熱気に多少目を細めながら、中にいる生産活動に従事しているホブゴブリン達に声をかける。
「進み具合はどうですか?」
「オオ、コレハエステラサマ、ナントカ『カワノヨロイ』ハ、カタチニナッテキマシタ」
「どれ、見せてください」
「コチラニナリマス」
ホブゴブリンが示した方を見ると、なるほど、鎧としての体裁は整っている皮鎧が木で出来た人型に着せて立てかけてある。エステラはその皮鎧をしばしの間じーっと品定めするように眺め、そして目を閉じてホブゴブリンたちに言う。
「ちょっと木剣を貸してください」
「? ハイ、コチラヲドウゾ」
「では、……はぁ!」
ばきぃ!
木剣を受け取ったエステラは皮鎧に近づき、おもむろに振りかぶって木剣を叩きつけた。すると木剣であったのにもかかわらず、皮鎧は半ば近くまで裂け、衝撃で肩や腰を守る部分を繋ぐ金具すらもとれかかっていた。
「アア、ヨロイガ、」
「これでは使い物になりません。言っておきますが、今のはいままで私が戦った一般的な冒険者と同じくらいの力しか出していませんよ。これでは接近戦になった時、これを来ている者はすぐに殺されてしまうでしょう」
「モウシワケアリマセン」
「すぐに次の鎧づくりに取り掛かってください。それから作るときには一つ一つの工程を必ず紙に書き留めておくように、せっかく出来が良くても再現できなければ意味がありません」
「ココロエテオリマス」
「では、マスターの為にも一刻も早い完成を」
「ハ、ショウチシマシタ!」
「次! 剣の方はどうなっていますか?」
「ハイ! コチラニカンセイヒンガゴザイマス!」
こんな調子で毎日鍛冶場でできた品を一つ一つ確認し、実戦でも使えると判断できるものはエステラの裁定で、日用品については一度確認した品をまとめて大地に報告し、大地が興味を示したものについては採用するかどうかの判断を仰ぐという構図が出来上がっていた。
ちなみにこの裁定について水橋は「めんどいからいいや」の一言で大地が採用したものを無条件で使っている。
鍛冶場での確認が終わり、モンスターたちが訓練でどれだけ成長したかを確かめる仕上げの模擬戦を済ませると今度はエステラ自身の訓練が始まる。以前の戦いで一度目は苦戦し、二度目は引き分けともいえない敗北を味わった。あの時の自分は駆け引きをする頭もフェイントを織り交ぜる技量もなかった。だからこそ、もっとも自信のあるスピードを突き詰め、戦いに挑んだというのに、あっという間に見切られてカウンターを食らわされてしまった。あの屈辱は絶対に忘れられない。
もしあの時、彼らが隠してあったマスターの本当のコアを発見していたら、私には止めるすべがなかった。セブルティスにしてもそうだ。最近になって新しく仲間となったムラサメにしても頼り切るというわけにはいかない。ならば私一人でもマスターを守れるくらい強く、もっと強くならなければ!
その一念でエステラは日々鍛錬を続け、最近はムラサメ隊総出でかかっても互角の戦いを展開する程の剣技を身につけつつあった。
「エステラちゃーんお風呂いきましょー!」
「あ、P様、すいません。もう少し鍛錬を続けたいのでどうぞお先にお入りください」
「そうですか? まあ身体を鍛えて好きな人を守るのも良いですけど、乙女が汗臭かったら男性に嫌われてしまうかもしれま、」
「今行きましょう! すぐ行きましょう! ただちに汗を流してさっぱりしましょう!!」
「そういう素直なとこは私は好きですけどねぇ」
「断っておきますが私はマスター一筋です!」
「はいはい、じゃさっさといきましょう」
そのままPちゃんと大浴場に向かったエステラは汗を洗い流し、湯船に身体を沈めて暖かいお湯に包まれる感覚を楽しんだ。
「ふぅー、やっぱり大地さんが作ったモノの中では今のところこれが一番良いですね」
「マスターのお作りになるモノはすべて良いものです!」
「とはいってもここに来るときのエステラちゃん、ほかの場所より顔がゆるんでますよ~」
「そ、それは、やっぱりこう、あったかいのはいいなって」
「そうそう、そうやって素直になった方が可愛いですよ」
「う~、」
「まぁしかしなんで大地さんこんな可愛いエステラちゃんは覗かないのにアネイルちゃんは覗くんでしょうね~?」
「…P様、今なんと?」
あ、そういえばエステラちゃんにはまだ話してませんでした。失敗したかな?
「マスターが私以外の者の入浴姿を覗いたと?」
「あー、それはそのー、」
「正直にお答えくださいP様」
「はい、この間アネイルちゃんの入浴を覗こうとしてディーレに水橋さんと一緒に捕まったそうで、ほら、この間エステラちゃんが鉱山堀りのためにゴブリン達を率いて出てた時ですよ」
「わ、私だって、私だってまだ覗いてもらってないのに、……マスタ~~~!!!」
水面を見つめてわなわなとしていたエステラは突然絶叫とともに風呂場におおきな水柱を上げ、そのまま羽を広げて大浴場から飛び去った。
「あー、修羅場になるかも、…面白そうだからまぁいっか。 あとでディーレも誘って見物に行きましょう」
その頃大地はちょうど水橋と一緒にアネイルの魔法の授業を受けていた。
「で、なんどもその系統の魔法を使ってると頭の中ではっきりとしたイメージと一緒に魔法の『真名』である呪文が頭に浮かんでくるようになるのよ、だから最初のうちに使えるのは魔力を各系統に変換した純粋な放出だけだけど、使っているうちに各魔法は覚えられるようになるわ、適正によって系統ごとに覚えが早い遅いもあるけど、」
「なるほど、ってことはスクロールの場合はそのイメージを最初から頭に植え付けてくれるって事か」
「そうよ、私だってスクロールなんて高級品で直接魔法を覚えたことはないけど、使ったことがある人から聞いた限りではそんな感じだって言ってたわ」
「ならついでに、」
バアンッ!!
「マスタ―――――――!!」
「むぐぉ!」
扉が勢いよく開き、すさまじいスピードでなにかが机に居た大地に激突した。
「いててて、な、なんだ? エステラの声が聞こえたような気がしたけど、」
「マスター! ひどいです!! 私でしたらいつ覗いていただいても構わないと言うのに、それを差し置いてこんな魔法しか取り柄のない洗濯板の裸の方を覗くなんて、うう~、マスターの浮気者~!」
「せ、洗濯板!?」
若干涙目になりながら一糸まとわぬエステラが俺に馬乗りとなって襟首をつかみながら、なにやらよくわからない抗議をしてくる。
「エ、エステラ、よくわかんないけど文句言う前になにか着よう、そのかっこはまずい」
「いいえ! 今日と言う今日はマスターに私の魅力をじっくりとみてもらいます! そしてそのまま寝室で夜のお供もさせていただきます!」
そういうとエステラは俺の上にのしかかってきてそのままやわらかい感触で身体がつつまれて天国に~、
は! いかん!
「ストッープ! ちょっとまて! どうしてそういう話になる!?」
「マスターが私の気持ちに気づいてくれないからです!」
「いや、そういう事じゃなくて、なに? アネイルの風呂を覗いた事を怒っているのか?」
「それも若干あります。私はマスターが創造してくださった理想のプロポーションだと言うのに、あのようなぺったんこの方を先に覗くなど」
「ぺっ、ぺったんこ!?」
「いや、確かに俺の理想とするプロポーションでもってお前のことは造形したけど、いまだ成長途中で理想値に達してないし、なにより…、」
「なにより、なんですか?」
「ボインとちっぱいは別腹だからな」
「ちっぱい…、ちっぱいね、ふふふ、あんたたち…言いたいことはそれだけかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「な、なんだ!?」
「突然怒り出すとは、何があったのでしょう?」
わざとやってんじゃないかと言うくらいとぼけた事を言っている二人に対して水橋は飽きれながらも一応突っ込んでおく。
「いや、お前らが怒らせたんだろ」
結局その日は怒りが頂点に達したスーパーアネイルとエステラの戦いが夕食の時間まで続き、またしても魔法の授業は中断となった。
食事が終わった後、エステラは日課である大地の入浴観察をじっくりと堪能し、寝室まで付き添って扉の隙間から大地が眠ったのを確認してから、夜のダンジョンの見回りをしているモンスター達に異常がないかを確かめて自分も自室に戻って一日を終えた。本来であれば悪魔系であるエステラは魔力さえあれば睡眠をしなくても活動に支障はないが、自室に備え付けられたベッドが大地によって用意されたものである事と、寝ている間に夜這いに来てくれるかもしれないという期待で就寝していた。
ちなみに、エステラに見られている事を承知で完全に寝るしかない大地が熟睡した状態からでどうやって夜這いに来るのかについてエステラが気づくのは大分先の事になる。
次回予告
ついに明かされるひよこのPちゃんの日常生活! さらにDちゃんの大人な魅力も公開予定?
「大地さーん、私に魅力がないってことですか?」(^_^#)
「…ス、スーパーアイドルのPちゃんの素敵な一日を公か、」
「ディーレが女優で私が小娘って事か!? おらぁー!」
ガスッ! (・)>(/ロ゜)/「ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!」




