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Synthetic School  作者: 南雲 楼
六章 生徒総会、争奪戦
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4 争奪ゲーム

「あ?」


 彼らが言うのは娯楽としての文化を築いているあのゲームではないのだろう。


「帰りのホームルームが終わるまでに俺達からウサギを取り返せればお前たちの勝ち。それができなければ俺たちの勝ち――そんでその時はこのウサギたちを殺す。ああ何人連れてきてくれてもいいぜ」


 ビイイイイイイイイイイイッという何かの生物の鳴き声のような奇声が響く。名月がまた騒ぎ出した。気持ちはわかる。


「なんで今なんだよ。戦いたいなら後日いつでも受けるっての」


「いーや、今じゃなきゃダメだね! 分からないか? 俺たちがこうして総会を邪魔した時点でお前らの信用は下がってんだよ。それをそのままぶち壊すためのゲームだ。お前らが総会を中止してゲームに乗っても、俺達を無視してウサギが殺されても、どっちにせよ信用はガタ落ちだ」


 ようやく彼らの真意が分かった。確かに、体育館内はざわつき、戸惑いの声があふれかえっている。このままの状態が続けば、彼らを黙らせない生徒会や委員長に非難が殺到するだろう。


 だが、無視してウサギが殺されるのもまずい。あのウサギたちは、手軽に触れ合える、と女子を中心にアイドル的存在となっている。

 そんなウサギを見捨てたとあっては生徒会は糾弾の的だ。どちらにせよ信用が失われるとはこのことか。



「じゃあ俺らは適当に学内にバラけるわ。出会ったら魔法で勝負。あ、お前らがそれに負けてもウサギはその場で殺すからな! ――俺たちはお前らに対する報復を楽しみにしてたんだ。楽しませてくれよ」


 勝はそう言い捨てると仲間たちと共に体育館を出て行った。「この外道野郎がああああああああ!」という名月の罵声を浴びながら悠々とウサギを連れてその場を後にする。そんな彼らの動きには余裕が感じられた。



 どうすればいいんだ――? 総会は続けなければならない。ウサギを見捨てるわけにもいかない。


 教師に判断を仰ごうと視線を向けたが、全員に視線を逸らされた。授業扱いの生徒総会の妨害は校則違反にならないのかと問い詰めたい。だが、任命式以外は“授業時間を使っての生徒会活動”である以上教員たちは無干渉だった。


「痛!」


 ステージ袖から上がった蒼冱の声に思考が途切れる。一拍おいて名月が袖を飛びだし、体育館から出て行った。ああ、蒼冱にも抑えきれなかったか。右足を引きずって壇上に戻る蒼冱。さすがの彼にも焦りが見える。


「お、おい、大丈夫かよ……」


「クソ、足の小指を踵で踏まれた……。いや、それより名月が」


「見ればわかるっての! ああもうなんでああも抑制できないのかなあいつ……」


 ゲームの題材としてウサギが使われたのは、名月の衝動性と動物への愛情を逆手に取り、総会を混乱させるためのようだ。彼女の行動で余計に騒ぎが広がっていく。「今からどうするんだよ!」という野次も飛んでくる。この時点で勝達の目的の一部は果たされている。



 総会を止めることはできない。だが、名月も放っておけない。


「蒼冱、名月のところに言ってやってくれ。あいつ一人じゃキツいわ」


「わかった……けど総会は?」


「同時進行で急ピッチで終わらせる。だからそっちは任せた」


 蒼冱は頷くとステージを飛び降り、名月の後を追った。とりあえずは場を鎮めなければ。彼が出て行ったことでさらにざわめきが上がる。何といえば静まるのか。そう思案を重ねていた時。摩胡の声が上がった。


「久炉さん! 私、名月が心配なので行ってきます! あと飼育小屋の方も見に行かないといけないので!」


 待て、飼育委員会の活動方針発表が――そう言いかけた時には摩胡はすでにステージ袖に飛び込んでいた。ああ、名月の幼馴染だもんな。心中で納得すると、マイクに向けて声を上げた。



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