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久炉の憤りの矛先は各委員会の顧問を担当している教師に対してだった。何故、ヒステリー少女やナンパ野郎や不良生徒を推薦したのだろう。適当に選出してもこうはならない。
今すぐ職員室に向かい、各顧問に抗議をしたいところだ。しかし、会議の最中にそのようなことをするわけにもいかない。胃痛がひどくなった気がする。ワイシャツの上に羽織ったジャージの裾を握りしめた。
「生活委員長が遅刻していいと思ってるんですか!? それにそんな遠くに座って、会議にならないでしょ!? 早くこっちに来なさい!」
雄大は雛の叫び声を無視して携帯電話に視線を戻す。
「うるせえんだよ、ヒステリック女。会議なら聞いてるから」
「そういう問題じゃないでしょ!?」
雛の叫び声の被害にあっている雄大は顔をしかめると盛大に舌打ちをした。
「おい、生徒会。そのうるさい女黙らせてくれ。めんどくせえからそっちまで行かねえけど、会議には参加してやるから」
「ああ、はいはい、じゃあさっきの……」
ようやく会議に戻れる、そう思いながら口にした久炉の言葉は、机を叩く音と、椅子の倒れる音に遮られた。
急に立ち上がった雛に全員の視線が向けられる。手と口元を震わせながら雄大を睨む彼女の顔はまたしても赤くなりつつあった。
「いい加減にしなさいよ、底辺の癖に……」
彼女の声はヒステリックな叫びではなく震えていて、怒りが収まらないようだった。これはまずい。久炉は名月の隣にいた蒼冱に視線をやる。蒼冱は立ち上がり、雄大に鋭い視線を向けたままの彼女に歩み寄る。睨まれている不良生徒が彼女に視線を戻すことはない。
「もう、力づくでも……っ」
雛の左手首にはまっている腕輪から桃色の光が漏れるのが見えた。雛が付きだした右手。その手の平部分に腕輪と同じ色の光が集束し、形を成していく。創造魔法か。
「いい加減にしろ!」
蒼冱は声を上げ、彼女の肩を強く揺らした。雛は我に返ったように蒼冱を見る。集中が切れたのか、光は霧散して消えた。
席を立ち、すぐ隣まで来ていた彼にすら気が付いていなかったようだ。よほど、雄大の態度が気に食わなかったのだろう。
「あいつにはあとでこっちから話しとくから。今は会議を続けるぞ」
蒼冱はそう言って倒れた椅子を起こすと、雛の肩を押して座らせ、自分の席に戻った。雛はすっかり意気消沈といった様子だ。視線を下げ、机に置かれたプリントに視線をやっている。
よく見ると、プリントにはいくつかの丸い染みがあった。涙を溢している。
久炉は少し雛のことに意識を取られつつも、会議の進行を戻した。
「じゃあさっきの飼育委員会の予算の件に戻るけど、飼育委員長の方から見て、この予算どうよ?」
「あ、はい! 私としても予算があると嬉しいです。さっき名月……じゃない、海野さんが言っていた通りなんですけど、今、飼育委員会で動物に与えている餌は安価で栄養の少ないフードなんです。動物の健康のことを考えるともう少しいい物をあげたいです!」
摩胡はいい終わると、名月と視線と合わせる。摩胡の言葉を聞いていた帳は口を開く。
「うーん、動物達が栄養不足なんてかわいそうだね……。よかったら美化委員会の予算少しそっちに回してくれていいよ」
「てことで司君、美化委員会の予算いくらか飼育の方に入れてやあ!」
彼の言葉を聞いた名月は即、嬉々として会議中の予算の変動を記録すべくノートパソコンを操作していた司に指示を出した。最早反射レベルだ。




