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「待て、美化委員会はなんだかんだ掃除用具とか洗剤買ったりとか予算使うだろ。これ以上減らせなくないか」
「あと、保健委員会も減らせないぞ。図書委員会も本を買う金は委員会予算の中に含まないけど、もう限界まで削減してあるから無理だ」
久炉と蒼冱の意見に名月は少し不機嫌な表情を浮かべた。その様子を見ていた帳は取り繕うように改善策を提示する。
「今は少し予算がほしいかもしれないけど今後は掃除用具の一部を寮や体育館とかの施設と兼用すればいいと思うよ。掃除の時に持ち運ぶのは面倒だけどね。あと、雑巾はみんなの使い古したタオルを集めて、雑巾にして使えばわざわざ買わなくてもよくなると思うよ。今はまだみんな新しいのを使ってるから集まらないと思うけど」
時折、周りの顔色を窺うように帳は語った。久炉達では出せかった予算の削減方法だ。確かにこの方法をとれば美化委員会の予算をかなり浮かせることができる。
「それや!」
名月は嬉しそうな顔で帳を指さした。彼は照れ笑いを浮かべて頬をかく。
「てかさ」
唐突に雄大が口を開いた。視線は相変わらず、携帯電話の画面に向けられている。
「そもそも、生活と、代表と、広報も予算ほとんどいらねえだろ。どこもほしいのはコピー用紙と、少しの文房具くらいか。今いくら出てるか知らねえけど、減らしていいと思うぞ」
「それなー!」
名月は思わぬ援軍にさらに目を輝かせて蒼冱のような同意の声を上げた。実際に雄大の言うとおり、彼の挙げた三つの委員会はあまり予算を必要としない。
「おい、ヒステリック女とチャラ男。お前らもそれでいいよな」
「え、チャラ男? 俺、チャラ男なの? ……えっと。まあ、俺は別に大丈夫だと思うけど? 掲示板管理って言っても金かからないし? まあ買い替えとかになったらその時はその時でー」
光太郎は彼の言葉に返事をするも、雛は何も返さず、視線を下げたままだった。
「よし、図書と保健の女はどうか知らねえが過半数だ。文句ねえな? で、他に決めることはあるのか?」
「いや、これで終わり、かな。後は生徒会の方で予算確定するから」
そうか、と雄大は席を立つと、本来の自分の席に置かれていた資料を手に取るとぺたぺたと音を立てて会議室を出た。それを見ていた光太郎も荷物をまとめ、立ち上がる。
「じゃあ、俺も帰ろっと。咲! 今度アフターしような!」
彼はそういって教室を出て行った。言葉を向けられた咲は心底嫌そうな表情を浮かべていた。よほど彼が苦手らしい。
帳はペンケースやプリントを鞄に詰めると席を立ち、とプリントを濡らしたまま微動だにしていなかった雛のもとへ向かった。
「大丈夫?」
彼の言葉に顔を上げた雛の眼からはまだ涙が滲みだした。彼女は、大丈夫、と言いたかったのだろう。しゃくりあげながら話すせいで何を言っているのかわからない。帳にはわかったようで彼女の背中をさする。
「僕でよかったら話聞くから、とりあえずここを出ようか」
制服の袖で涙をぬぐいながら頷く女子生徒は何度もヒステリックな声を上げた人物と同一人物に見えなかった。
「あ、保健室来る? 第二ならあんまり人来ないし、柴田先生もいると思うから落ち着くまでそこにいるといいよ」
「本当? じゃあそこに行かせてもらうよ」
荷物をと枕を持って、ブランケットを肩にかけた東夜は久炉達に視線をやると軽く手を振って二人と共に教室を出た。




