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「んー……てか、先生も回復魔法使えるんすか?」
柴田の左手首にはまった腕輪。職員用の黒い物だ。生徒と同じ色の白磁色の鉱石が目立つ。
「使えるよ。他にも一通り基礎的なのは。まあそっちは他の先生と違って魔法関係の授業受け持ったりってことはないから使うことはないけどね」
だけど、とカップの中の物を口に含み、飲み下し、息をつく。
「せっかく医療勉強したのに魔法でどうにかできちゃうのは、ちょっと自分の学生時代無駄にしたみたいで寂しいかな。教員免許取れなかったらこうやって仕事できてないからそのあたりは全く無駄じゃないけどね」
「あー、確かにっすね。魔法で治るなら……」
「いや、魔法のことを悪く思ってる訳じゃないよ。そもそも患者側からすれば簡単に治るほうがよっぽどいいし、魔法の技術自体は本当に有益なものだしね」
柴田は立ち上がり、空になったカップを流しに置くと、ベッドのあるスペースに入って行った。そして一分ほどして戻ってくる。寝ている保健委員長を起こしに行ったようだ。しかし、その成果はなかったのか、戻ってきたのは柴田一人だった。
「さて、私は職員室に用事があるから戻らないと。相崎さんも出てくれる? 流神さん、まだ起きそうにないし」
「あ、はい。けど流神さん放置して大丈夫なんすか?」
久炉の疑問の声をよそに柴田はデスクの上の書類をまとめ、小脇に抱える。置いてあるデスクの引き出しに入っていた紐のついたプレートを取り出した。それを久炉の眼前にぶら下げる。
「これかけておくから大丈夫。寝てるとはいえ流神さんもいるし、第一に行くか中の電話から私に連絡するようにって書いてあるから」
プレートには『職員室にいます。中には当番がいますが、応対ができるとは限らないので第一保健室に行くか、柴田のデスクの内線電話から私に連絡してください』と書かれていた。柴田は廊下に出ると、今までかかっていたプレートを外し、ベンチに投げる。
「ほら、早く出て、職員室いけないじゃん。それに生徒会の仕事もあるんでしょ?」
「あ、はいすんません。戻ります」
久炉もベンチから立ち上がり、廊下に出る。意外と座り心地がよかった。寝たら怒られるだろうな……。そんなことを思いつつ、隣の階段を上る。新設校だけあって校舎は真新しく、少し埃があるだけで床もきれいだ。
三階は生徒会室の他には特別教室があるだけで、まだ部活も確定していないため生徒の姿を見かけない。階段同様に新しい廊下を進み、生徒会室に向かった。
生徒会室は外の掲示板に衣琉の作成したお知らせの紙が貼られていて、引き戸に連絡用ポストがついている。扉についた擦りガラスからは電気の明かりが漏れ、中に人がいることを示していた。
委員長が決まっていなかった美化委員会も立候補が出た。水曜日までに予算案を完成させなければならない。ああ、めんどくせえ。内心呟きながら生徒会室の扉を開いた。




