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保健室を分断する壁は南側の窓際に人の通れる部分がある。人が三人は並んで通れるくらいの幅だ。
そこを通ると右手側に収納可能なベッドが三つずつ、二列並んでいる。ベッド一つ一つを囲むようにカーテンレールがあり、カーテンで区切ることができるようになっている。まるで病院だ。
ここは病院のようになっているが、養護教諭や保健委員会だけで対処できないような重症患者は学校近くの病院に移動となり、一時的な静養のみで宿泊することはできない。
六つのベッドのうち、一番奥のベッドだけカーテンが閉じられていた。あそこに保健委員長がいるのだろう。カーテンの向こうに人が寝ているような影が見える。
無意識のうちに足音を立てないようにベッドに近づく。気づいていないのか、寝ているのか、無視しているのか、影は動かない。少し脅かしてやろうか。勢いよくカーテンを開けた。
しかし、ベッドでベッドの布団と自前の物と思わしき毛布にくるまり、枕に抱き着いて寝ている女子生徒はそれに気づかず、眠っていた。眠るというよりは爆睡していた。布団のせいで長い髪は乱れ、顔はよく見えない。
「流神さーん!」
起きない。呼吸に合わせて規則的に胸が動いているだけで、目を覚ます気配はなない。肩を揺らしてもそれは変わらない。力を入れて揺らしても目を覚ます気配はない。ダメだ。起きない。
来た道を戻り、壁から顔を出して仕事中の柴田に視線をやる。カップにコーヒーを注いでいた。水道水以外もあるではないか。それとも生徒に出すものが水道水しかないという意味だったのだろうか。
「あ、起きなかった?」
「起きなかったです」
ベッドのあるエリアを出て、養護教諭のデスクの近くにあるソファに座り、背もたれに体を預ける。硬めのクッションが少し沈むのを感じた。
「まあ流神さんが起きないのも無理はないんだよね」
柴田はカップをデスクに置き、椅子に戻る。無理はない? どういうことだろう。視線を向ける。
「昼休みに魔法で喧嘩したって生徒が来て、それ一人で結構ひどい怪我を完全に治しちゃったからね……。かなり疲れてると思うよ」
「え、もう仕事したんですか?」
「そうだよ。今はまだいいけど、これからはきっと怪我人も増えるし、私と第一の大林先生じゃ対応しきれないと思うからね。保健委員に選ばれた生徒には流神さんを中心に休み時間は当番制で仕事してもらってるの」
確かに、飼育委員会なども委員が決まった翌日にはすでに仕事が始まっていたし、保健委員会もすでに仕事があってもおかしくはないだろう。
特に飼育動物の飼育や怪我人の治療の手伝いなどといった生命や健康が関わってくる委員会の活動なら早いのは当然だ。
「それにしても、生徒が回復魔法に慣れるまでは私達養護教諭が教えながらになるんだけど、流神さん、何も言わなくても一人でかなりひどい怪我治したから……回復魔法だけなら学校トップ。それどころか魔法自体の適性も一年全体でも上から十人には入るかな」
そんなにすごい人だったのか。あの寝方からは想像もつかなかったけど。淡々と話す柴田に視線が止まる。




