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Synthetic School  作者: 南雲 楼
二章 生徒会、募集
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32 役員五名

「そうか、思ったより早かったな」


 斉藤は久炉に渡された書類をファイルにしまい込んだ。生徒会役員の登録用紙。五つの欄全てが埋まっている。生徒会室での蒼冱の用紙記入と談話の後、教員たちが忙しなく動き回っている職員室に役員五名は訪れていた。


「そういえば、今日の昼の件なんだが……まだ会議で処分が決まってないからな。決まり次第伝える。まあ、謹慎は確実だろうけどな」


 斉藤は机上同様に雑然とした机の一番下の引き出しをかき回しながら、思い出したと言いたげに口にした。暴力沙汰となれば処分は重いようだ。



 彼は机の引き出しから小さな紙袋を取り出すと、軽く放って久炉に渡した。


「何すかこれ?」


「見ればわかる」


 紙袋を開けて中身を取り出す。久炉は個別にナイロンで包まれた赤くて薄い物が五枚。役員全員に行き渡るようだ。

 自分の分以外の四枚を他の役員に手渡すと、包装を破って中身を取り出した。金糸で生徒会と刺繍の入った腕章だ。


「うわ、随分目立ちそうっすねこれ」


「目立たなければ目印にならないだろう」


 斉藤の言うことは理解できるが、青系統の制服やジャージに赤い腕章は目立ち過ぎな気もする。個人的にはマスクさえしていれば注目を浴びることに抵抗はない。


 だが、あることが懸念される。



「これ、腕章見て喧嘩売ってくる奴も出るんじゃないっすかね」


「どちらにせよ役員の顔は次の生徒総会で知れ渡るだろう……全員集まったら伝えておこうと思ったんだが……ちょうどいい。今言っておくか」


 腕章を指で軽く撫でた。椅子を回転させて生徒会役員達と向き合う顧問に視線をやる。


「この学園では舐められたら終わりだということを理解してほしくてな。生徒会の運営どころか学級崩壊ならぬ学校崩壊が起きる」


「……まあそんなことはわかってますけどね」


 この面倒な教員は何が言いたいんだろう。そんなことが分からないのは危機感のない生徒だけだ。

 久炉の心中での愚痴と同じようなことも衣琉以外の三人も感じとっていたようで、少し険しい視線を斉藤に向けていた。衣琉はもらった腕章で手遊びをしている。


 約二百四十人も生徒がいれば、生徒会を倒そうとする生徒はほぼ確実に出てくるだろう。勝のように反骨精神から敵視する者もいれば、自分が生徒会の地位を手に入れたいと考えて狙ってくる者もいそうだ。争いの種はいくらでもある。


「お前達生徒会には、問題を起こす生徒を押さえつけて常に学校のトップでいてもらいたい」


「いや、無理だわ!」



 反射的に声を荒げる。と、同時にヒーッという名月の笑い声が教職員で賑わう職員室に響いた。お前は何で笑ってんの。『私の可愛い虫達と頂点を極めるんですよお!』とか言いそうだ。


「私の可愛い虫達と頂点を極めるんですよお!」


 マジで言いやがった。脳内の名月と一言一句違わずに言いやがった。蒼冱の呆れたようなため息。顔や膝に絆創膏を貼りつけているような人間が言ったところで不安になるだけだ。


「お前それだけ怪我しといてよく言うわ……」


「それなー」


 久炉の呟きに蒼冱の同調が乗る。名月は掌に虫を大量に作り出しながら顔を二人に向けた。とてつもなく楽しげな笑みだ。


「これからじゃないですかあ! この学園は虫が支配するんや!」


 声を上げる名月に職員室中の視線が集まった。次に室内を埋め尽くしたのは女性教員の悲鳴。次いで衣琉が涙目で逃げ出す音だった。



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