18 トラブル
「そんな人が副会長になったの!?」
久炉以外の生徒会役員が三名となった翌日、四月十日の昼休み。
別館一階にある購買部の隣に設置された学生食堂にて。久炉とその友人、芙北妖華はテーブルを挟んで昼食をとっていた。
妖華は久炉と同じクラスの友人である。どこか猫っぽいつり目は、時折目つきが悪く見える。単に目が悪いらしい。少し跳ねている髪は久炉より少し長いくらいで色は茶色い。
明るい性格だが、捻くれ者の久炉と意外と馬が合ったようだ。制服はブレザーを脱いでセーターを着ているが、多少首元のリボンを緩めている程度であまり着崩していない。
久炉が妖華と関わりだしたのは、寮の部屋番号が近く、朝夕の食事を同じテーブルでとっているため、自然と話をするようになっていたからだ。
一昨日は衣琉との生徒会の役職についての打ち合わせがあったため、共に昼食をとることはなかったが、それ以降はこうして食事をする約束をしている。
久炉は“そんな人”こと名月の言動を思い返し苦笑する。名月本人には言えないが、妖華の言い草には少し同意してしまう。それでも大切な役員であることには変わりないため、フォローは入れておく。
「まあ、いい奴だぜ。動物好きに悪い奴はいないって言うだろ。まあ動物好き過ぎるのが問題かもしれないけどな……何だかんだ飼育小屋の点検あいつがいなかったら倉庫の場所がわからなくて終わらなかったし」
小動物小屋で話した後、名月に用具倉庫の場所を教えてもらい、無事点検を行うことができた。備品の不足は見られなかったが、動物の食事は量が普通よりも減っていて、名月がこっそり与えていたことが見て取れた。
本人に問い詰めたところ、あっさりと自分が与えたと吐き、『どうせもっと予算増えるんだからいいじゃないですか……』等と第三者に聞かれたら久炉も名月も立場が危うくなる発言まで飛び出した。
「そんな感じでさ、副会長も面白い奴だし、書記は……副会長とは違うベクトルで面白いし、会計は頑張ってくれそうだし、意外と悪くないんだぜ。生徒会。つーわけで一緒に生徒会やろうぜ! 庶務の枠空いてるし!」
久炉のまとめる生徒会の話題の最後は当たり前のように勧誘が行われた。妖華に対する勧誘はこれで五回目である。
「えー……私はいいよ。務まると思わないし」
「俺見てみ? 生徒会とか向いてない人間のテンプレだぜ?」
妖華は困ったように笑いながら机の上に置かれた昼食を口に入れた。カレーである。あまり辛くはなく、二人で不満を言い合うことになった程度に甘いカレーだった。
「私よりも向いてる人はいるからそういう人当たりなよ」
「例えば誰? 一組の芙北さん? それとも俺と同じクラスの妖華さん?」
「両方私だけどね!」
軽口に少し声を張って突っ込む妖華。勢いで机がガタッと音を立てたが、座っているのは二人だけだ。他の生徒の迷惑にはならない。妖華がカレーの残りを一気に口に詰めていくのを眺める。
そういえば午後は英語の授業だったか。面倒くさい。ぼんやり午後の予定について考えていると、急に自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
顔を向けると息を切らせて走ってくる衣琉とその後ろについている司がいた。どうした昼間から。何か仕事があったのを忘れていて、二人が呼びに来たのだろうか。それにしては慌てすぎだ。もっと深刻なことなのかもしれない。
「名月さんが大変なのです!」
衣琉は顔を青くして、人目も憚らず声を張り上げた。




