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Synthetic School  作者: 南雲 楼
二章 生徒会、募集
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17

 名月はくねくねとした動きを止め、久炉と視線を合わせた。何を言っているんだと言いたげな表情。そう思うのも無理はない。ため息をついて視線を逸らした。他人と視線を合わせるのは苦手だ。


「何言ってるんですか……」


 名月は眉をしかめ、出会った時の口調で呟いた。加入するわけがないだろうと言いたげな声色だ。


「だからさ、さっき言っただろ。各委員会の予算に干渉できるのは生徒会役員か各委員長だって。つまりお前が役員になればある程度は融通効かせてやるよ」


「なんか賄賂みたいなんですけど……」


「別に他の生徒には聞かれてないだろうしバレなければいいんだよ。バレなければ。この近辺にはお前しかいないはずだし、聞いてる奴もいねえって。さっきの二人もどっか走って行ったし」


 グラウンドから飼育小屋に戻るまでの道のりで見かけた人はあの派手な女子生徒二人だけだ。他の生徒や教員、その他職員も見かけていない。人の声も足音も聞こえなかった。

 つまりこの付近には久炉と名月しかいないはずだ。



「私飼育委員会辞めたくないんで……動物たちをお触りしたくて飼育委員会に入ったんですし……」


「“動物たちと触れ合いたくて”じゃないのか?」


「あ、間違えました」


「その点は大丈夫。生徒会と委員会の兼任は可だから問題ない。って言っても委員長と兼任されると負担ヤバくなるからやめてほしいけど」


 名月は手を口元に当て、考え込む素振りを見せた。委員会に所属したまま生徒会に入るということは負担が倍以上に膨れ上がることになる。よほどの理由がなければ両方の仕事をこなすことは難しい。



「まあ何だ。お前が生徒会に入ってくれれば、俺もハッピー、予算が増えて飼育動物もハッピー、そうなればお前もハッピーと皆が幸せなんじゃないかな。お互いに利益のある取引ってことでさ。どうよ?」


 こいつはきっと乗る。そういう確信が生まれつつあった。ここまで動物を好いている人間が飼育委員会の予算の優遇を盾にされれば乗らないわけがない。


 悩んでいたヒト以外の生物愛好家の飼育委員は手を下し、息をついた。


「飼育動物のためや……しょうがないわな」


 あっさりと交渉は成立した。三人目。これで生徒会に必要なのはあと一人だ。



「マジか! ありがと! そんで役職なんだけどさ、今庶務と副会長が欲しいんだよね。まあどっちやってくれてもいいけど庶務なら――」


「副会長」


「あ?」


 名月の予想外の言葉に表情が固まるのがわかる。“庶務なら委員会との兼任も楽だから庶務やってくれよ”。そう提案しようとした瞬間だった。こいつ、まさか。


「副会長なら会計よりも上位なんやろ? だったら会計に指示出せる役職がいいわ」



やっぱりそう来たか。副会長にはある程度コミュニケーション能力が高くて他の役員や委員会と意思疎通が図れるような人に就いてもらいたかった。だが、やると言ってくれた以上、最低限の仕事はこなしてくれるだろう。


 ここで断ってまた他の生徒に声をかけることになったり、名月に予算折衝に来られるよりは受け入れたほうがいい。


「はいよ。副会長は任せる。その代わり仕事はしっかりやってくれな」


「わかってます……予算は」


「大丈夫。会計に問題にならない程度で優遇するように言っとくから」


 答えた瞬間、名月は笑みを見せた。そしてウサギの住む木製の小屋に飛びつくと先程のウサギを連れ出して頬ずりを始める。可愛いよお、という言葉を連呼しているが、予算もらえるからね、という言葉も時折混ざっている。


 変な奴を入れてしまったが、楽しくなるかもしれない。ウサギにセクハラを再開した名月を見て無意識に笑いがこぼれた。



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