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「飼育委員会に入ってからずっと生徒会の人と話したかったんや……ちょーっと頼みたいことがあってな……」
名月の口調に関西弁が混ざりだす。関西出身なのだろうか。白磁学園は近畿地方にあるため、その近辺の府県出身の生徒も少なからずいるはずだ。
だが、この学園には全国から生徒が集まっているため、関西口調の生徒が多いわけではない。どちらかというと標準語で話す人の方が多いくらいだ。
「どうした? 飼育委員会の予算上げてくれとかそんな話じゃねえだろうな」
名月の考えが読めず、軽口を叩く。このヒト以外の生物大好き女なら言いそうだ。まあ、さすがにそんな話ではないだろう。委員会の予算折衝はもう少し先だ。
「それや。予算増やしてや」
「当たっちゃった!?」
自分の冗談が的中したことに驚きが隠せない。各委員会の生徒からは遅かれ早かれ予算の交渉はあると思っていたが、まさかこのタイミングで始まるとは。
「あー、今俺に言われてもなー……そういうのは会計に任せることにしてるし」
「なら会計に合わせてくださいよお……飼育動物のためにも予算は必要なんや」
「いや、お前委員長か? 普通の委員に予算に干渉させるつもりはないよ。いろいろ面倒なことになりそうだし。各委員長か生徒会役員の申し立て以外は検討しないから、委員長決まったらその人通して言ってくれ。それなら生徒会としては善処するから」
久炉は生徒会の決定は、できる限り他生徒の意見を尊重したものにしたいと考えていた。しかし、そういった体制で生徒会を運営するとキリがない。
それを防ぐため、各委員長が決定後、役職を持たない委員からの意見を委員長に集めてもらい、会議で提出してもらうように頼むつもりだった。
委員長は今週末までには各委員会の顧問や立候補などで決定する予定だ。委員会に加入する生徒が決まった翌日の放課後に委員内役職が確定している委員会もないだろう。
「じゃあ私が委員長になればいいってことやろ? そうしたら予算増やしてくれるんですよね?」
「確定事項みたいにしてんじゃねーよ! 他の委員会のことも考えて平等に検討してくんだからよ。確かに動物にいい環境で暮らしてもらいたいってのはわかるけどさ、飼育委員会のことばっかり考えられねえわ」
こいつ……頭大丈夫か? 理解不能な名月の思考。動物が好きなのはわかるがそれを優先させすぎだ。苛立ちを隠しながら交渉という名の要求をしてくる名月を言い破ろうと言葉を並べる。
「生物達がかわいそうじゃないんですかあ! これだから利己的な人間共は嫌いなんですよお! やっぱ時代は人外の時代や!」
くねくねと奇妙な動きで叫ぶ名月。話が通じそうにない。このまま会話が進んだら喧嘩にでも発展するのではないか。
彼女の魔法が普通の虫を召喚するだけならば、勝てないこともないだろう。ただ、彼女は見た限り魔法を使うことに躊躇を覚えていない。いくら魔法の攻撃性能が低くても、躊躇のなさや飼育委員会の予算への執着は油断ができない。
待てよ、と喧嘩になったら面倒だという考えの中に別の事柄が浮かぶ。
彼女のような恐怖感を煽り、戦意を奪う魔法を使う者がいれば何かと役に立つはずだ。
名月自身も不真面目な生徒ではないだろう。多少動物好きが過ぎるとはいえ、悪い人間ではないことはわかる。誘ってみてもいいかもしれない。生徒会に。
「そんなに飼育委員会に予算欲しいなら、生徒会に入らないか? 真面目に仕事さえしてくれるなら歓迎するぜ」




