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Synthetic School  作者: 南雲 楼
二章 生徒会、募集
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15 副会長

 久炉は飼育小屋内に戻り、小動物展示室に足を運んだ。例の女子生徒はウサギを小屋の端にある木製の家に戻していた。小さな家に手を入れて中のウサギに触れている。もう帰寮した方がいい時間だ。彼女も寮に帰るのだろう。


「あー、ちょっといいかな、飼育委員さんよ」


 女子生徒が立ち上がったのを見計らって久炉は声をかけた。さすがにウサギにセクハラ中でなければ反応するだろうという久炉の読みは当たり、女子生徒は一瞬動きを止めた後、視線を向けた。


 身長は久炉と大して変わらない。ただ、体の線が細く、健康的な印象は薄い。

 春だというのにブレザーの中にセーターを着込んでいたり、黒いタイツを吐いて膝下まであるスカートをはいていたりと、寒がりな印象を受ける。髪はセミロングの一歩手前といった感じか。あまり長くはない。


 特徴的なのが右目の下の泣きぼくろと左頬の月の字のような傷だった。何をしたらあんな傷がつくんだ。ただ、体つきから厳つい印象はない。



「さっきのこと見てたんだけどさ、あの派手な連中に何したんだよ」


 見てたんか……と意外そうに呟く。少し離れたところから惨状を眺める久炉の存在には気づかなかったらしい。


「別に……。魔法で虫を体に這わせてあげただけです……。【蠱毒(こどく)】っていう虫を作り出す魔法なんですけど。単にあいつらがウサギ脅かしたりしたから相応のことをしただけです……悪いのはあのうるさい人間なので」


 女子生徒はどこか拙い敬語でぼそぼそと口にした。やはりあの虫は彼女の魔法によるものだったのか。深緑色の甲虫が灰色の光になったことに対して合点がいった。


「お前ウサギ好きなんだな」


「ウサギっていうかヒト以外が好きなんですよ……ウサギも虫も小動物も爬虫類も好きです……」


 なるほど、少しレベルの高い動物好きか。先程の行動が理解でき、頷いた。久炉はついでとばかりに口を開く。



「さっきの二人のクラスとか名前わかる?」


 今日のことが露見した場合、生徒指導に発展するかもしれない。彼女達の行為はいじめであって立派な校則違反だ。

 だが、魔法で返り討ちにされていたため、魔法戦闘と認識されてお咎めなしになってしまう可能性もないとは言えない。それでも、聞いておいた方がいいだろう。


「……さあ? 多分同じクラスの不良ってことはわかるんですけど。人覚えるの苦手なので。正直興味ないですし」


 女子生徒は眉間にシワを寄せて記憶を手繰ろうとしているが、解答は得られない。彼女と同じクラスとだけわかればいいだろう。ここまで話しておいて、彼女の名前を聞いていないことに気が付いた。



「あー。まあ、さっきの人らは置いといて、飼育委員さんは名前何?」


海野(うみの)名月(なつき)。名月でいいです」


「おう、俺は相崎久炉っての。久炉でいいよ」


 相崎久炉……と名月は視線を床に落として久炉の名を反芻した。確かに変わった名前だが、何度も口にするような名だろうか。

 久炉は訝しげな視線を名月に送る。名月はそれに気づいたのか気づいてないのかはわからないが久炉に視線を合わせた。


「相崎って……生徒会の?」


「ん? ああ。一応会長やってるけど」


「どっかで聞いたと思ったらやっぱりか……」


 名月は呟くと口角を上げて笑った。そして数歩歩み寄って久炉に体を近づける。急に何だ。口には出さず、数歩下がる。


「生徒会には会いに行くつもりやったけど、そっちから来てくれたのは好都合や……」


「は?」


 ヒーッと例の特徴的な笑い声を漏らす名月に口元を引きつらせる。もちろん伊達マスクのおかげで彼女に表情は見られていないはずだ。それより何なんだこいつ。不穏な物を感じつつ、笑っている名月の次の言葉を待った。



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