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Synthetic School  作者: 南雲 楼
二章 生徒会、募集
33/160

19

「あ? 名月がどうしたよ?」


「う、うゆ、あのですね、名月さんがですね」


 衣琉の慌て様は普通ではない。名月さんがとしか口にしない。これでは要領を得ないと、彼女の隣で慌てる彼女に視線を送っている司に顔を向ける。


「司、名月がどうしたの? 衣琉じゃ話にならん」


「な、なんか、不良みたいな人達に連れて行かれたらしくて……」


 “不良みたいな人達”という言葉から思い出されたのは昨日の放課後の光景だ。

 名月は二人の不良生徒に絡まれ、虫に襲わせるという、とんでもなく反感を買いそうな方法で撃退していた。魔法の関係上それしかできなかったのだが、あの生徒たちが納得することは難しいだろう。



「あー……あいつなら何とかするんじゃね? 言ったろ、昨日女子二人魔法で追い払ってたって」


「でも、今日は男の人もいたのですよ! 髪の毛を銀みたいに変な色に染めてたから絶対にヤバい人なのです!」


「あー……男子もいるのか」


 女は比較的虫に弱いが、男となると別だろう。久炉は親指でマスクの端を撫でた。一応見に行った方がいいか。

 マスクをずらして湯飲みの中に残っている冷めた緑茶を流し込む。食べ終わった昼食のトレーを持って立ち上がると、向かいの席で事情が呑み込めないと言いたげな視線で状況を見守っていた妖華に声をかける。


「ちょっと役員が面倒事になってるかもしれないから見に行ってくる。悪いけど一人で食っててくれ」


 妖華が頷いたことを確認すると、トレーを返却場所に返して役員二人と食堂を出た。



 昼休みが始まって少しした頃、衣琉は廊下で偶然名月と会った。少し話をしていたところ、ガラの悪い生徒数名が強引に名月を引っ張って行った。どうしようかと迷っていったら通りすがりの司に声をかけられ、彼の判断で久炉を呼びに行った――らしい。


「うゆ、司君が声をかけてくれて助かったのです!」


「いや、そこは二手に分かれるなりなんなりしてそいつら追えよ。どこに向かったか分からないんだから捜すも助けるもねえよ!」


 食堂を出てから、衣琉の話を聞きつつ三人は廊下を走っていた。しかし、名月達を追わなかったことから、彼女たちがどこにいるかが判断できない。


 普通の学校ならば校舎裏など、教師の目に届きにくい屋外と相場は決まっている。しかし、この学校では教師によるトラブルの仲介は基本的に行われないため、校舎内でも暴力行為は行うことができてしまう。

 さらに、魔法を使いさえすれば、一方的な暴力であっても魔法戦闘として処理され、問題行動として扱われない。かなり危険な状況だ。



 うゆっ! と声を上げ、衣琉は足を止めた。それに合わせて二人も止まる。


「うゆ! 私、教室に行って、上から捜してみるのです! 五階ですから外ならだいたい見つけられると思うのです!」


 確かに衣琉はいつでも教室に行けるように、術式の描かれた文房具等が置いている。あの高さからなら死角はあるとはいえ、だいたいの場所を見通せるだろう。


「わかった。ペンは拾っておいてやるから」


「ありがとうなのです!」


 衣琉は威勢よく礼を言うと、左手首の腕輪に黄色の光を灯し、一瞬で姿を消した。硬質な音を立てて水色のシャープペンが地面に転がる。久炉はそれを拾い上げると、羽織ったジャージのポケットに押し込んだ。



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