犬も食わぬ
≪もしもウィルシアとマリアンジェラがラブラブだったら≫
「ウィルシア」
「んー?なんですかな?まりあんじぇ・・ら」
ぎゅうっと抱きしめられた。
恥じらいを込めた顔をこちらに向けながらマリアンジェラはなおもぎゅうぎゅうと抱きついてくる。
何この生き物可愛い。
「何々~甘えたモード?っていうか誰のいれ知恵?」
「ステラが」
照れ隠しに言っただけだったけど、入れ知恵かい。
「だって、私いつもウィルにしてもらってばかりだから……何かお返ししたいって言ったの。そしたら……ステラが『黙って抱きしめろ』って」
ステラさん男前ですね!
「いつもありがとう」
「んー、お礼なら」
ちゅっと唇を重ねる。
「こちらのほうが嬉しいですな」
「なななっ」
お嬢様育ちらしく、カーッと顔を真っ赤に染め上げるマリアンジェラ。
「あっはっは、顔真っ赤ぁー。てか毎日してるのに慣れないの?」
「し、してないもの」
「あ、マリアンジェラが寝てる時の話だった」
「!?」
そんなことしてたなんて、まったく気が付かなかったわという顔をしているマリアンジェラ。
初めて会った時よりも随分と読みやすい、いや、表情が分かりやすくなった。
やはり育ての親が仮面だと、ダメなんだわ。いやぁマリアンジェラにはやっぱり俺がいないとね
「さて、マリアンジェラさん」
「?」
唇に指をちょんっと指す。
「お礼のちゅうは?」
「え?!」
「ん?」
「さっきしたじゃない」
「え~?」
いやいやと手を振る。
「さっきのは、俺からのギフト。俺はマリからしてほしいなぁー」
なんちゃって。
あらまぁ、泣きそうな目で顔を真っ赤にしちゃって、ウブですなぁー。そんなところがいいんですけどね。
しかし、そろそろ機嫌とるかフォローしないと、拗ねて口きいてくれなくなるからなぁ
「マリア……」
ちゅ
唇に一瞬だけ伝わったぬくもり。
「なななな!?」
「してっていったからしたのに、なんで驚くの?」
頬をぷうっと膨らませるマリアンジェラ。
「え、マリアンジェラだよね?本物の!?まさか偽物!?」
「馬鹿!!」
すっぱぁぁん
あ、やっぱりマリーだ
「もうしないから!」
「あぁ、待ってよマリー!!」
後ろからそっと抱きしめる。
鼓動が速いのが分かる。
「ありがとう。俺はさ、マリアンジェラと一緒にいるってことと、一緒に愛し合えるってことが何よりの君からの贈り物だと思ってるんだ」
「ウィルシア……」
「愛してるよ」
「私も……あなたがそばにいてくれたから……その」
「ん?」
マリアンジェラは目をそっと伏せ、顔を申し訳程度に上げた。
これは……キスのおねだり!!
「マリ……」
ガチャ。
「おーい誰かレーガン知らない?」
「いやああああ!!」
ぱあああん!!
「痛ぇえええ!!」
渾身の一撃だった。
顔を手で隠しながらマリアンジェラはその場を去って行った。それを見送ったステラが俺を見る。
「何してたんだ?……え、なに顔二ヤケてんのさ、キモイぞ」
「幸せ続きの生活が夢でないという痛みに感謝してんの」
「あぁ」
ステラは手を合わせた。
「ごちそうさん」
「お粗末さまで」
そして三日はマリアンジェラに叩かれた頬は腫れっぱなしだったという話。