マリアンジェラとシーヴァーとウィルシア
≪シーヴァ―とウィルシアとマリアンジェラが三人同じ謎の真っ白の空間に閉じ込められてしまったとしたら≫
「壁、なのかな?ここ」
マリアンジェラはこれ以上進めないと何もない空間に手をつき、どうにか前に進めないかと模索している。
返事がないので不思議に思いマリアンジェラは後ろを振り向いた。
「……何してるの?」
二人とも腕を組んで仁王立ちで無言でにらみ合っている。
「いや、目離したら負けかなーって。あ、仮面執事は仮面してるから目なんてねーや」
「ありますとも。ただ、くだらぬものは目に入らないようにできていますが」
「へー、それはすごいですなぁ。さすがに魔法使いもそんなことできませんなぁ。さすがビッグなだけあるね!!ビッグトカゲ」
「はは、なんですかトカゲと竜の違いも分からないんですか?餓鬼が」
バチバチ目だけで火花を飛ばす二人に、何もできずマリアンジェラは持ち上げたままの手を下した。
何も言えない。
「えーっと」
マリアンジェラは腕を組む。
まず、ここから脱出したいが、見渡す限り白い白い空間がただっぴろく存在しているだけで、他にあるものは何もない。この際シーヴァ―とウィルシアは居ないものと仮定し、一人で打開策を考えることにしたマリアンジェラ。
とことこ歩き回る。
大体進むと、見えない壁にぶち当たり、前へは進めない。でも、横には移動できる。
「たぶん、四角い」
遠くでいがみ合っているあの二人がそんな小さく見えないから、この空間そんなに広くないことが分かる。
「うーん」
しゃがんで床を叩いてみる。
ひんやりしてる。アルミっぽい感触。……だからどうした。
「はぁ」
そのまま横に倒れてみる。
ひんやり。
(気持ちいい)
こんなところお母様に見られたら、はしたないって怒られるかな?……きっと怒らないか、だってまず会わないもの。
両親ってなんなのかしら。
世間一般ではお父様とお母様に読み聞かせしてもらったり、お休みなさいってご挨拶したり、一緒に添い寝してもらったりって、普通のことなのよね。でも、私には無い。
それができる人ってうらやましいわ。どうして当たり前のことが幸せなのに、私はそれがないのかしら
ぽた、ぽた。
「あ」
涙がでてきちゃった。
「「マリアンジェラ!!!」」
二重音声?
「大丈夫?具合悪い?!」
「お嬢様に触るなアホボーイ」
「むっつりスケベ!マリアンジェラに変態がウツル!」
「うつるか!!」
背中で聞こえるわめき声。
「別に何にもないけど?」
と。起き上がればウィルシアが滑って行った。
「そのまま地の果てまで滑っていけ。……お嬢様。何故横に?」
しゃがみ、マリアンジェラと同じ目線にしてからそっと問う。
「気持ちよかったの、ひんやりして。大丈夫なにもないから」
「ですが、目が少しうるんでいる。すみません。貴女を一人にしてしまった」
輪郭を確認するように頬をなでられ、こそばっこく感じ身をよじる。
「ごるぁぁああ!!」
ウィルシア復活。
「やーい変態!!何気なく人を蹴り飛ばしといてマリーといちゃこらすんなー」
「餓鬼が」
「年齢不詳の爺通り越して仙人のくせにー!!発情すんな」
「はっ?バカなんですね。そうなんですね。バカがうつるのでお嬢様に近寄らないでください」
「へんたーい、ここにへんたーいがいまーす」
「よもや幼稚ですね」
マリアンジェラはぽっかーんと口を開けた後、微笑んだ。
「私焦る必要なかった……」
さみしがる必要も、涙を流す必要も……
だって、そうよね。
あなたがいれば……それでいい。
「あれ?それってオレ入ってる?っていうかオレだよね?ね?え?違う?」
白い空間、ただの空気。