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影姫の暴走奇譚  作者: 綴何
番外編
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箱ノ中


 分からない。

右も左も上も下もない。もちろん日の光などないのだからどこを見ても真っ暗闇。それゆえに体の感覚も一切ないただの魂だけの存在

 扉としてこの躰を捧げ封印を施して一体どのぐらいの時間がたったのだろう。

 分からないが、この狂いそうになる時間の中にいることが自分の仕事だ。

 たまに感じる蠢く闇の存在。

 こいつは外に出さない。

 ずず・・ず・・ずずず・・・ず

 蠢く存在は今は遠くに感じる。けれど奴は少しずつだけどゆっくりと確実にこちらへ向かってきている。

 普通の人間ではおおよそ絶えることのできない狂気の渦に、闇の悲鳴、奴の存在。そして先代のドラゴンの無念の想いの残像が心理の奥底に隠れている狂気の種をつつかれる、気が狂いそうになるがまだ耐えられる。

 マリアンジェラ、君がいるから。

 泣き虫で、変な時に気が強くて、変にマイペースで、儚く脆い。

 今君は泣いていないだろうか。

 今君は笑っていられているだろうか。

 君が心配だ。

 もう一度君に逢いたい。君と抱き合いたい。

 けれど、君と会うことは君を傷つけることしかない。

 愛してる。

 だからこそ私はマリアンジェラ、君からあえて離れよう。

 好きだから、離れる。

 もどかしい。


 『愛してる』


 ウィルシア・シアーズ、私がもしここから戻れたら私の勝ち、私よりも彼女を惚れらせられなければ私の勝ち。まったく当てのない話だが……まぁハンデをくれてやる。

 お前との決着はついていない。

 ケリはつけよう。

 それにしても私は人よりも浅ましく卑しい男だ。

 お嬢様に、自分の好きな人生を歩んでもいいのだと言ったくせに、その心をまだ求めている。あえて自分から離れて行ったくせにお嬢様が追って来なければ嫉妬し、一緒にいなければ嫌だと思う。

 子どものようにわがままで、人のように傲慢、そしてドラゴンゆえに狂気的に支配したいと思う。

 ふふっ……なぜだろうな。

 あまり辛いとは思わない。

 ヤクソクしたわけじゃないのに、戻らなければと思う。

 インファ、君が言った通りだな。俺はへたれだ。

 逃げてばかりではいかんな。


 「闇の存在、お前は神か?」


 パンドラの扉の中身は禍、ならば滅ぼしてくれよう。

 そして再びあの世界へ戻り、彼女に再び出会うために

 

 「竜神とただの神、どちらが強いか・・賭けてみるか?」


 私のために、消えていただこう。

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