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影姫の暴走奇譚  作者: 綴何
番外編
66/71

ウィルシア下


 森の滝の水が轟音を立てながら流れ落ちる。

 そんな湿気の多い場所で純粋な巨人属の一人、魔将軍クレトはテルーカ・エニシンの作った縮小薬を飲んで大柄な人間サイズに納まっていた。

 「で?俺をこんな人目のつかねぇところに呼んで、何の用だ?権力者ども」

 歳のいった中年の重役達はクレトを囲うように並んでお揃いのフードを着ていた。

 何人かは小さな声でぼそぼそ言っていたが、代表として出されたのだろう一人は前に出てクレトに提案する。

 「戦争でどさくさに紛れてシアーズ公を殺してほしい」

 「何故だ」

 そう尋ねるクレトの口は笑っている。

 「奴の血族は王と血縁を結び、代々宰相の家系という権力を持ちすぎた。我らの地位もだがお前たち巨人の地位も危ういものになるだろう」

 「ほう、なぜだ」

 「レイモンド・シアーズは争い狂の巨人を嫌っているというじゃないか」

 「あぁ、そんなことも言っていたな」

 「いずれお前たちを国から追い出すやもしれん」

 「そうか」

 口を押えながらクレトは相槌を打つが、その様を気に入らないと思ったのか舌打ちしている。

 こいつらただ単に自分の出世の邪魔された腹いせだろうが。

 そういいたいのを堪え、組んでいた腕を解き、両手を広げ肩をすくめた。

 「まぁそういきり立つもんじゃない。シアーズ家は大体寛大な一族だ。王族の権力云々まで手を伸ばそうなんて考えちゃいねぇ……ほっときゃお前らにも出世のチャンスあるって」

 「そういうことではない」

 気に食わないだけだろ。

 と言おうと口を開いた途端、突如森がざわついた。

 「!!」

 きぃぇええええ!!!

 「っ!!!なんだ!?」

 権力者たちはいっせいにクレトの後ろに隠れた。

 (おうおうオレは盾かよ)

 「あっれー?皆々様おっそろいでー」

 「おぉ?ウィルシアじゃねーか」

 片手をあげる。

 フードの権力者の一人が「まさか……感づかれたのか?!」と小さくつぶやいた。いやぁ。たまたまだろう。

 「なんだ、おもしろいもんつれてんな」

 「合体狂が残した遺物ってとこ?ってぇーこ・と・で」

 ウィルシアもクレトの後ろに回り込み、フードの権力者たちは小さな悲鳴を上げた。

 「俺も助けてー」

 「バカいうな、テルカでもねぇのにおめーの尻拭いなんてできるかよ」

 「ショーンちゃんのはできるのに?」

 「そりゃおめぇ……か弱い女だろうよ、ショーンは」

 「俺もきゃよわいん」

 「はっはっは!!」

 「え?笑っておしまい?で、おじいさまがたは何してるわけ?」

 ぎくりと肩を震わせる権力者たちは、しどろもどろに言い訳しているがウィルシアはどうでもよさそうに「へぇ、そう」と笑って聞き流している。まぁ、腹は分かってんだ今問い詰めても無駄だし時間の無駄だとわかっているのだろう。

 「きぇえええ!!」

 「おぉ、元気だな!いっちょ黙るか?」

 拳を握りしめ、謎生物の顔面に殴りこむ。

 「きぇえええ!!」

 鼻血をたらしながらも食いついてくる謎生物。

 (もしかして、こいつ)

 ウィルシアは魔法で飛んで消えた。

 「こいつ俺の攻撃にも耐えやがる」

 笑いながら何度も殴打を繰り返すがなかなか意味がない。

 「おい、ウィルシア!お前なんか束縛魔法とか……うん?」

 後ろを振り返ったクレトに権力者たちは首を横に振った。

 「あいつ帰りやがった!!」

 「きぃぇぇぇええええ!!」

 口で放電を始めた謎生物。魔法もお使いになるようだ。

 「お前ら魔法使いやがれ」

 今度はクレトが後ろに回る。

 「こ、こら!!仮にも将軍が情けない」

 「オレは魔法使えねーし、効くんだよ。ぶっちゃけ巨人族なんて図体デカイ人間だしな」

 「巨人に戻ればよかろう!!」

 「あ、あいつのクスリいつも欠陥品でな。俺もさっきから戻ろうとしてんだけど、へはは!戻らん」

 絶望に落ちたような顔をする権力者たち。

 謎生物は魔法を放った。


 「魔法反転、無効魔法発動、打消しOK?」

 

 魔方陣が二重に発動したかと思うと、ウィルシアが謎生物の目の前に現れた。

 「よーしよし、いい子だ!!お食べなさーい」

 ウィルが目の前に出したのは大量の食べ物。

 謎の生物はそれに食いついた。

 「おお!!なんだ、腹減っていたんだな」

 「た、助かった」

 「おぉ、よく食べますな~」

 ウィルシアは謎生物の頭をなでる。

 「シアーズ殿、やらないのですかな」

 「何を?」

 「その合成獣の始末をするために気を取ったのでは?」

 「違いますよ。ただ腹減ってんだなーって」

 食事を終えた謎生物はウィルに向かってずっきした。

 「いて」

 「ややっや、やはり始末したほうが!」

 「大丈夫っすよ、ほら」

 すりすり、甘えるように頬を擦りつける。

 「よしよし、可愛いなぁーよし、お前今日からチェッピーね」

 「飼う気ですかな!!」

 「え?ダメ?」

 「な」

 口を閉ざせないとばかりに彼らは口を開けたまま何も言わない。

 「で?」

 ウィルシアはチェッピーの上に乗りながら見下しながらずれたフードに気が付かず間抜け面さらしている古株に話しかける。

 「皆々様、お揃いでクレト将軍と何のお話を??」

 「え?」

 「あ、えー・・ごほん、なんでもない!!」

 言い切った。

 言い切れば逃げ切れると思うのはこの国のお国柄かもしれない。それをわかっているのでウィルも頷く。

 いそいそと逃げ帰る彼らを見送りながら、ウィルシアはクレトの肩をたたいた。

 「クレトちゃーん。オレらダチだよねん」

 「あぁ?大丈夫だ。俺とお前はダチだからオレは裏切らんぞ」

 「おっぉー頼もしいな。じゃチェッピー飼うってテルカに一緒に説得を」

 「あぁー用事を思い出した。オレはこのあとショーンと約束があった。じゃな」

 「さっそく裏切ってくれてんじゃん。あー、待ってよんクレトちゃーん」

 「知らん」

 「ショーンに言いつけちゃうよ」

 「何をだ?」

 にやりと笑うウィルに、クレトは腕を組んだ。

 「まぁ、一緒について言ってやる」

 「ショーンちゃんにほんと弱いねぇ」

 「お前にも弱みできるさ」

 「惚れた弱みって?」

 にっこり笑う。

 「俺にもできるかねぇ……愛しい女」

 「できたら大変だろうな」

 「誰が?」

 「女が」

 二人笑う。

 「違いないねぇ」

そしてマリアンジェラに出会い。

苦労するマリアンジェラであった・・・。

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