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「力を隠していた第8王子、英雄になる 〜どうせバレたならトコトンやったら経済大国になりました〜」  作者: FUKA


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第16話:狙われる者

夜の帳が下りた王都の路地に、いつもとは違う、微かな緊張の気配が漂い始めていた。ゲルニアとの一件から数ヶ月、エルダシア同盟は表向き、これまで以上の結束を見せていた。だがその陰で、ラディウスの周辺には、目に見えぬ変化が静かに起き始めていた。


「殿下、最近、城下で見慣れぬ者たちの姿が増えているようです。行商人や旅の吟遊詩人を装っておりますが、いずれも殿下の日々の行動を、細かく調べ回っている形跡がございます」


その報告をもたらしたのは、フェリクスと共に城下を見回っていたダグラスだった。


「殿下の外出時の護衛は、これまで以上に厳重にします。ですが、城内――特に日常のお身の回りにこそ、隙が生まれやすい。バジル殿にも、注意を促しておいた方がよろしいかと」


(同盟を揺さぶるのではなく……僕個人を、直接狙う方針に切り替えたか)


その夜、執務室でエレインが静かに切り出した。


「殿下、護衛を増やすべきではありませんか」


「僕がここで歩みを止めれば、同盟諸国も、この国の民も、不安に晒される」


「殿下。わたくしも、殿下のおそばにいる時間を、これまで以上に増やしとうございます。殿下が油断なさる瞬間があるとすれば、それは私的な時間でしょう。私であれば、殿下の近くにいても、誰にも怪しまれません」


「……頼むよ、エレイン」


数日後、フェリクスが緊急の報告を携えて現れた。


「城の厨房に、新たに採用された下働きの一人が、不審な動きを見せております」


実のところ、この下働きの不審な素振りに真っ先に気づいたのは、バジルだった。長年、城の使用人たちの顔と所作を見てきた彼の目は、新入りの些細な違和感を見逃さなかった。


「坊っちゃま、あの下働きの者、皿の並べ方一つとっても、これまでの作法とは微妙に異なります。他国の作法に慣れた者かもしれません」


その報告が、フェリクスの調査の端緒となっていた。ダグラスとバジル、それぞれ異なる持ち場から、ラディウスの周辺を守る網が、静かに、しかし確実に張り巡らされ始めていた。


「その下働き、泳がせて構わない。ただし、接触する人物の記録だけは、しっかり取ってくれ」


そんな折、ラディウスのもとに、思いがけない人物からの接触があった。


「第八王子。少し、話がある」


第三王子オーレリアだった。兄弟の中では細身で物静かな印象の彼は、淡い色の髪を後ろに撫でつけ、感情を表に出さない、落ち着いた目元をしていた。


八人兄弟の中で、オーレリアは幼い頃から「目立たない王子」だった。剣の才も、魔法の才も、兄ガイウスや他の兄たちに比べれば凡庸で、宮廷の中でも、その存在はどこか影が薄かった。だが、その分、彼は誰よりも周囲を静かに観察する目を養っていた。目立たぬがゆえに侮られ、それゆえに人の本質を見抜く――そんな彼の生き方は、かつてのラディウスと、どこか重なるものがあった。


「単刀直入に言おう。ガイウス兄上の周辺が、最近、妙にきな臭い。お前が帝国の刺客にでも倒れれば、次期国王の座を巡る争いで、ガイウス兄上にとって都合の良い展開になるのは確かだ」


外からは帝国の影、内からは兄弟間の権力争い――弱小国を強くしようとしてきた歩みの先に、思いがけず、幾重もの脅威が同時に押し寄せ始めていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


今回のエピソードに関する史実・技術おまけはありません。


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