第15話:広がる波紋
報告書をめくる紙の音だけが、円卓の間に響いていた。「――鉄鉱石の買い付けに加え、街道整備、そして『鉄の道』の建設まで約束しただと?」
円卓の間に、ゼルギウスからの報告が響いた。
「敵対していたゲルニアまでも、味方に変えたか……。剣でも、スパイ活動でも、代理戦争でも崩せぬ相手だ」
「あの小僧、いずれ大陸の勢力図そのものを塗り替えるつもりか」
エルダシアの王城では、アルベリク王がラディウスの帰還を待ちわびていた。
「よくやった、ラディウス。一滴の血も流さず、ゲルニアとの争いを収めたばかりか、鉄鉱石という新たな資源まで手に入れたそうだな」
「父上、この一件の裏には、やはり帝国の影がありました。ゲルニアを焚き付けたのは、間違いなく帝国の使者です」
「……備えは、必要だな」
「軍備の増強も必要でしょう。ですが、それ以上に大事なのは、同盟諸国同士の結束を、もっと強くすることだと考えています」
一方、この報せを聞いた第一王子ガイウスの反応は、複雑なものだった。
「……鉄の道、だと。戦場で名を上げるならまだしも、産業だ、外交だと、あの小僧はどこまで功績を積み上げるつもりだ」
「殿下、民の間では、既に『次期国王はラディウス様が相応しいのでは』という声も、少しずつ聞かれ始めております」
対照的に、第三王子オーレリアは、この報せを穏やかな面持ちで受け止めていた。
「敵対していた国まで、味方につけるとはな。お前のやり方は、俺には眩しく見える。剣でも駆け引きでもなく、道理と実利で、敵すら味方に変えてしまう。王位のことは、俺には分からん。だが――お前がこの国を導くというなら、俺は、それを支えたいと思っている」
その夜、執務室でエレインが静かに口を開いた。
「殿下、帝国も、ガイウス殿下も、これからますます警戒すべき相手になりますね」
「弱小国を強くしようと、ただがむしゃらに走ってきたつもりだったけど……気づけば、随分と多くのものを敵に回してしまったみたいだ。城壁が崩れかけたあの日、僕は決めたんだ。守れるのに守らないのは罪だ、と。それは、帝国だろうと、兄上だろうと、変わらない」
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