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第8話〜国王の勘違い 時々愛の調停ただし 寝たきり

前回の入れ替わりにより、お互いの肉体の限界(絶望的な口内炎と大胸筋の呪い)を身をもって知ったアレクとヴィクトリア。

破滅を避けるため、二人が導き出した唯一の解決策は「事前のリスクヘッジ(=即時の離婚届提出)」だった。しかし、芋虫のように硬直したまま必死に籍を抜こうと目論む二人のもとへ、朝一番にあの「最大の障壁」が爆音と共に突入してくる


「アレク、ヴィクトリア! 一体どういうことだ!」

翌朝、王女の寝室の扉が爆音と共に開かれた。

現れたのは、現国王にしてヴィクトリアの父。普段の威厳はどこへやら、白髪を振り乱し、文字通り血相を変えてベッドに突進してくる。

「陛下、ノックくらい……」

「お父様、はしたないですわ……」

最強の肉体(中身:王女)と最弱の肉体(中身:騎士)は、相変わらずベッドで芋虫のように硬直したままだ。指一本動かせない。

「はしたないなどと言っていられるか! 侍女の報告によると、お前たち、夕べ激しく罵り合って離婚届を要求していたそうだな!?」

国王の眼が涙で潤んでいる。

無理もない。昨日まで「奇跡の共闘」とまで称えられた仲睦まじい夫婦が、一夜にして破局寸前なのだから。

「誤解です、陛下。俺たちはただ、来るべき『地獄』に備えて、今のうちにリスクヘッジを……」

「そうなのですお父様! 今すぐ籍を抜かないと、彼が死に(体になり)ます!」

アレク(中身王女)の必死の訴えに、国王はガタガタとショックで震え出した。

「お、お前……アレクが死ぬほど憎いのか、ヴィクトリア……!?」

「違います! 憎いのではなく、このままだと口内がコロセウムになって、私まで巻き添えを——」

「ヴィクトリア、俺のことはいい! 陛下、頼みます、彼女の籍を抜いてやってください! このままだと彼女は大胸筋の呪いで2週間は動けなくなる!」

ヴィクトリア(中身アレク)も涙ながらに懇願する。

「アレク……お前、そこまでヴィクトリアの身を案じているのか。それほど深く愛し合っているのに、なぜ離婚などと言うんだ!?」

「話が通じねぇ……!」

二人が絶望した、その瞬間だった。

ピキィィィン、と空間が凍りつくような音が響く。

二人の身体が、突如として眩い光に包まれた。

「あ、この感覚……戻る……!?」

入れ替わりの魔法が、前触れもなく解除される。

中身が、本来の肉体へと急速に引き戻されていく。

「待っ、まだ離婚届を——!」

アレクの叫びも虚しく、光が弾けた。

直後。

「「ぎゃあああああああああああああああ!!!!」」

王宮の最上階に、二人の絶叫が木霊した。

アレクには「限界突破した数日分の超弩級の筋肉痛」が、ヴィクトリアには「炎症が最高潮に達した口内炎のコロセウム」が、寸分の狂いもなく容赦なく直撃したのだ。

「あ、アレク!? ヴィクトリア!?」

あまりの激痛に白目を剥いてベッドからのけ反る二人を見て、国王はさらに勘違いを深めた。

「なんという激しい愛の憎しみ合い……! 戻れ! 誰か医官を呼べ! 夫婦の絆が物理的に崩壊しているぞ!!」

こうして、入れ替わりが戻った二人の本当の地獄(と、さらに拗れた離婚騒動)が、幕を開けるのだった。


今回は「絶望の口内炎と大胸筋の呪い」に続き、まさかの最強の障壁・鉄血のガブリエル公爵が爆音と共に大襲来する展開となりました。

窮地に立たされたアレクとヴィクトリアの、痛みに耐えながらの必死の攻防(あるいは全速力の誤魔化し)を想像すると、筆が止まりません。限界寸前の二人が選ぶ未来は、果たして奇跡のスピード離婚か、それともガブリエルの鉄拳か……。

次回もこの限界突破な二人のドタバタ劇をお楽しみに!

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