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第7話〜筋肉痛のち離婚の危機時々お粥(かゆ)

最強の肉体」と「最弱の肉体」が入れ替わったまま、魔獣との大激闘を制したアレクとヴィクトリア。命からがら王宮の寝室へと帰り着いた二人を待っていたのは、勝利の余韻ではなく、肉体の限界がもたらす悲鳴だった。

しかし、真の恐怖はここから始まる。元の身体に戻った瞬間、お互いに待ち受ける「最悪のタイムカプセル」の存在に気づいたとき、二人の絆(?)に未だかつてない亀裂が走る――!

話:筋肉痛のち離婚の危機、ときどきお粥

午後10時00分・王女の寝室

大激闘から数時間後。俺たちは命からがら王宮へと帰還し、並んでベッドに横たわっていた。

「……なぁ、ヴィクトリア」

「喋らないでアレク、口内炎に障るわ。……というか、私の方こそ指一本動かせないのだけれど」

最強の肉体(中身:王女)は重度の筋肉痛で完全硬直。最弱の肉体(中身:騎士)は粘膜の限界で悶絶。まさに満身創痍の二人である。

しかし、俺には激痛をこらえてでも、今この瞬間に言わなければならないことがあった。

「いや、これだけは言わせてくれ。……俺たち、入れ替わる前に離婚しよう」

「……は?」

ヴィクトリアの美しい瞳(中身はゴリラ……ゲホン、騎士団長)が、驚きで丸くなる。

「ちょっと待ちなさい。この非常事態に何を言い出すの? 確かにこの2日間、生きた心地はしなかったけれど!」

「違う、逆だ! 逆なんだよ!」

俺はのたうち回りながら、悲痛な叫びをあげた。

「考えてもみろ! 中身が元の肉体に戻った瞬間、お前には**『数日分の超弩級の筋肉痛』が襲いかかり、俺には『限界突破した口内炎のコロセウム』**が直撃するんだぞ!?」

「あ……」

ヴィクトリアの顔が引きつる。元騎士団長としての脳が、一瞬で最悪の未来をシミュレーションしたらしい。

「元の肉体に戻った瞬間、私は激痛で気絶……。あなたは口内の地獄で悶絶……。これ、戻った瞬間に夫婦揃って文字通りの『死に体』になるわね」

「そうだ! だから、まだ感覚が麻痺している今のうちに離婚届を出すんだ! せめて籍だけでも抜いておかないと、死なば諸共で心中するみたいになるだろ!」

「そんな理由で離婚される王女が歴史上のどこにいるのよ!」

ガタガタと震える我が大胸筋を震わせ、ヴィクトリアが怒号をあげる。その迫力に、部屋の扉がガタリと揺れた。

同刻・寝室の前

「失礼いたします。お粥をお持ちし……あら?」

二人の体調を心配して夜食を運んできた侍女は、扉の隙間から漏れ聞こえる会話に、持っていたお盆を落としそうになった。

「離婚よ! 絶対に離婚してあげるわアレク!」

「頼むヴィクトリア、頼むから書類にサインしてくれ! このままだと二人とも死ぬんだ!」

「(……まぁ! 昼間の騎士団査察であれほど仲睦まじく共闘されていたのに、もう愛が冷めてしまわれたの!?)」

勘違いした侍女が涙目で廊下を走り去っていく。

そんな周囲の誤解など露知らず、寝室の中では、一刻も早い離婚を求める夫と、プライドにかけてそれを拒否する妻の、新たなる泥沼の戦い(ただし一歩も動けない)が幕を開けるのだった。

(第7話・完。次回、離婚調停にまさかの国王参戦!?)

次回、この勘違いがさらに拗れに拗れて、まさかの国王陛下まで参戦する大騒動へと発展します。二人の籍と肉体は無事に戻るのか、ぜひお楽しみに!

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