第6話〜決戦の貴族街
第6話:前書き
前回、貧血気味な王女の肉体で地獄の「騎士団査察」をなんとか乗り切ったアレク(中身)。しかし、休む間もなく次なる試練が彼らを待ち受けていた。
幾多の貴族宅を恐怖に陥れてきた大泥棒「鉄腕のジャック」の出現。
ボロボロの粘膜を抱えた最弱の肉体(中身:元騎士団長)と、大胸筋をはち切れんばかりに輝かせる最強の肉体(中身:可憐な王女)が、夕暮れの貴族街でついに交錯する!
第6話
第6話:決戦の貴族街、そして限界を迎えた粘膜
午後5時15分・貴族街の裏路地
「はぁ……はぁ……、もう一歩も動けないわ……」
泥人形のメイクも剥げ落ち、完全に落ち武者のようになった俺(中身:アレク)は、壁に寄りかかって息を切らせていた。
午後の「騎士団査察」を王女の貧血気味な肉体で乗り切ったツケが、一気に押し寄せている。胃はストレスでキリキリと痛み、口内の口内炎はもはや**「口内炎のコロセウム」**と化していた。
だが、地獄のデスマーチは容赦なく最終局面を迎える。
目の前には、数々の貴族宅を荒らし回ってきた、筋骨隆々の大泥棒「鉄腕のジャック」が立ちはだかっていた。
「へっ、まさかこんな可愛いお嬢ちゃんが俺を捕まえに来るとはな! 悪く思うなよ!」
ジャックが丸太のような腕を振り上げる。元騎士団長の脳が即座に「右からのフック、しゃがんで回避」と最適解を弾き出すが、肉体が全く追いつかない。
(クソっ、足が動かない……! ここまでか……!?)
その時、背後の闇から**「ゴゴゴゴゴ……」**と地鳴りのような足音が響いてきた。
同刻・裏路地の逆サイド
「そこまでよ、下衆な泥棒さん」
現れたのは、我が肉体(中身:ヴィクトリア)である。
朝の謁見でボタンを吹き飛ばした騎士礼服の胸元からは、はち切れんばかりの大胸筋が夕日に照らされて怪しく輝いていた。
「な、なんだお前は……! 騎士団長アレクか!?」
「ええ、今の私はアレク。でも、中身は可憐な乙女よ」
フッ、と美しく微笑む我が肉体。しかし、その視線は完全に**「獲物を屠る猛獣」**のそれだった。
「ふんぬうううっ!」
ヴィクトリアの気高き精神が、我が肉体の潜在能力を120%引き出す。
彼女が踏み込んだ瞬間、貴族街の石畳がバキバキと音を立てて砕け散った。
「ヒエッ……!?」
ジャックが恐怖に顔を引きつらせた瞬間、王女の優雅なステップ(もはや縮地)で間合いを詰めた我が肉体が、綺麗なフォームで**「王家秘伝のビンタ(ただし破壊力は戦車級)」**を放った。
ドガアアアアンッ!!!
大泥棒は壁を三枚ほど突き破り、そのまま白目を剥いて気絶した。
午後6時00分・作戦終了
「ふぅ、実に見事な大胸筋の躍動でしたわ、アレク」
「……お前、本当に手加減って言葉を知らないな……」
無事に泥棒を捕縛し、ようやく二人の長い2日間が終わろうとしていた。
夕暮れの中、互いの健闘を称え合おうとした、その時。
「……あ」
俺の口内で、これまで耐え忍んできた口内炎の痛みが急激に爆発した。
「痛いいいいい! 喋ったら舌が、舌が壁に擦れて激痛があああ!」
「あらあら、だらしないわねアレク。私はほら、こんなに元気……、……ウッ!?」
突然、我が肉体がその場に膝をついた。
見れば、バキバキの大胸筋の隙間から、滝のような冷や汗が流れている。
「ヴ、ヴィクトリア様……!? どうされたのですか!」
「……3日間の徹夜、そして、先ほどの全力の一撃……。この筋肉、完全に……乳酸が限界値を超えたわ……。指一本……動かない……」
最強の肉体(中身:王女)は、筋肉痛という名の神の洗礼を受け、その場に彫刻のように凝固した。
最弱の粘膜(中身:騎士)は、口内の激痛でのたうち回っている。
「「誰か……早く元に戻して(戻して)……!!」」
夕日に染まる貴族街に、二人の魂の叫びが虚しく響き渡る。
入れ替わりデスマーチ、激闘の2日目は、両者ノックダウンという最悪の結末で幕を閉じるのだった
後書き
第6話をお読みいただきありがとうございました!
ついに大泥棒を捕まえたものの、待っていたのは「口内炎」と「筋肉痛」というまさかの自業自得な結末でした。最強の肉体を持ってしても、乙女の精神で限界突破した後の乳酸には勝てなかったようです。
お互いの肉体をボロボロにし合う泥仕合となってきましたが、果たして二人は無事に元の身体に戻れるのでしょうか?
次回、第7話もお楽しみに!
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