第2話〜王女の 公務、サビ残だらけのらけのブラック企業だった
定時退社と不労所得を愛するエリート(自称・優良社畜)のアレクは、世界征服を企む超ブラック仕事中毒王女・ヴィクトリアと中身が入れ替わってしまった!
「これで憧れのニート生活!」と勝ち誇るアレクだったが、彼が目を覚ましたのは、王女自身が作り上げた「24時間不眠不休営業」の超絶ブラック国家の本社(王宮)だった――。
第2話:【悲報】王女の公務、サビ残だらけのブラック環境だった
「素晴らしい……! 素晴らしいわ、この肉体はッ……!」
深夜2時。松明が燃え盛る執務室で、俺の体――アレクの頑強な肉体を持つヴィクトリアは、狂ったように万年筆を走らせていた。
「3日徹夜しているというのに、目眩ひとつ起きない! 脳が、筋肉が、もっと労働を寄こせと叫んでいるわ! これぞ私が求めていた無限の労働リソース(筋肉)……!」
「ア、アレク殿……? 普段のあなたなら『定時なんでドロンします』と逃げるはずでは……」
引きつった顔で書類を運んでくる側近たちを、ヴィクトリア(中身)はバキバキの目で睨みつける。
「何をボサッとしているの! ほら、次の決裁書類を早く出しなさい! 効率を上げれば、我が帝国の24時間営業化(世界征服)は5年、いえ、3年早まるわ!」
「ひっ……! ア、アレク殿が有能な鬼上司に改造されてしまった……!」
筋肉と社畜精神のハイブリッド。それは、世界で最も危険な「24時間戦える戦闘兵器」の誕生を意味していた。
一方、その頃。
天蓋付きの豪華なベッドの中で、ヴィクトリアの可憐な肉体となった俺――アレクは、最高の気分で目を覚まそうとしていた。
「ふあぁ……。よく寝た。ここが王女の部屋か。ってことは、今日から俺は働かなくていい、夢の不労所得ライフ……!」
ガバッと跳ね起き、自らの白く細い手を見てニヤリと笑う。
勝った。あの一切の妥協を許さないブラック王女から解放され、俺はついにニートの座を勝ち取ったのだ。
――コンコン。
「ヴィクトリア様。朝7時でございます。本日のスケジュールをお持ちいたしました」
入ってきたのは、1ミリの狂いもないお辞儀を見せる厳格な侍女長だった。
「ん? ああ、適当に机に置いといて。今日は体調悪いから、終日有給(公務休み)でよろしく」
鈴を転がすような美声でそう告げ、再び毛布を頭から被る。しかし、フサッという不穏な音と共に、毛布が容赦なく剥ぎ取られた。
「何を仰るのですか。本日は、帝国24時間化計画の進捗会議、新部位プロテインの試飲会、そして……」
ドンッ!!!
侍女長が机に叩きつけたのは、俺の身長(155センチ)を遥かに超える、うずたかく積まれた書類の山だった。
「こちらの未決済書類、1200件の処理が残っております」
「……はい?」
「ヴィクトリア様が常々仰っていたではありませんか。『睡眠は甘え。我が帝国の臣民たる者、死ぬまで進め』と。さあ、朝食の5分間で最初の50件を片付けましょう」
「嘘だろおいぃぃぃぃ分刻みすぎるわ!!」
ベッドの上で、可憐な王女の姿をした俺は頭を抱えて絶叫した。
働かなくていいどころか、ここはあの仕事中毒女が作り上げた、世界一の超一等地ブラック企業(国家)の本社ビルだった。
「あの筋肉……! 3時間しか寝てないのに、ベンチプレスを上げながら予算案を承認しているわ! 素晴らしい、これならあと3つは新規事業を立ち上げられる……!」
男の体で嬉々としてサビ残に励む、ヴィクトリア(中身)。
「ふざけんな、あの仕事中毒サイコパス女……! 自分の作ったブラック環境に自分で溺れて死ねってか! 意地でも、意地でも定時で帰ってやる……!」
美少女の姿で、涙目で書類の山にペンを突き立てる、アレク(中身)。
入れ替わってしまった二人の、労働基準法を巡る本当の戦いが、今ここに開幕した。
第2話をお読みいただきありがとうございました!
せっかく美少女の体をゲットしたのに、待っていたのは前世(?)以上の超絶ブラック環境というアレクの悲劇でした。
頑強な肉体を手に入れて24時間営業を開始したヴィクトリアと、意地でも定時退社を勝ち取りたいアレク。ここから始まる二人の限界社畜バトルを、次回も応援していただけると嬉しいです!




