7 せいかんこうろ
無事出港を終えると、空の船員室に部屋を充てがって荷物の整理やらをしていた、新入社員2人をブリッジに通す。
無重力にあまり慣れてないシシンと、なれている様子のガブリエル。
「改めて、自己紹介。この艦はシュガーソルト号。サトウシオヤ商会の所属だ」
ふくっ。と、シシンが噴き出したのを堪えているのをガブリエルだけは不思議そうに見ている。
「シュガーソルト号は星間航路を進む宇宙炉を搭載している。帰路約500光年航行の予定」
「500光年?!」
「宇宙炉?」
「説明は〈九曜〉」
『はい、わかりました』
艦橋に声が響き、艦橋に少年のホログラムが浮かんだ。
「ストップ!なにこれ」
「・・・いつの間に」
食いついたのはまさかの、シオとユージンだった。
「昨日最終して調整して、さっき入れたんだ。上手くいってよかったよ」
ルイがせっせとふたりが寝静まった夜に作っていたホログラムプログラムだった。
前もって必要な機材はこっそりと設置済み。
ようやくイメージ通りが完成したと、ルイは満足気である。
『艦橋AIアシスタントの九曜です。宇宙炉は光年を1時間で進む宇宙船の動力です。原理は不明。無重力空間でしか生成出来ないといわれています。製造企業は少なくともステラ惑星連合及び大銀河帝国周辺空域にはありません』
ガブリエルは衝撃を受けている。
「光年を1時間?原理不明?そんなものがすでに」
『太陽系の地球圏ではオーバーテクノロジーとして宇宙炉は秘匿されています』
「・・・保護区では技術制限されていたのか、技術開発に消極的なだけではなかったんだな」
答えに行き着き、腑に落ちる物があったのかガブリエルは、複雑な表情をしていた。
「無重力と重力の環境に慣れていくのをお勧めする。無重力に慣れすぎると立てなくなる」
「トレーニング室もあるよ。筋トレの仕方なら教えるから気軽に言ってね」
「・・・気軽にムキムキ」
「ルイ、ムキムキは気軽にはなれないから。ちゃんと人に合わせたライトなメニュー組めるよ」
操縦桿から手を離し、話をしているのが気になっているシシンの様子に、ユージンは大丈夫だよと伝える。
「基本的に1回通った航路は自動出来るんだ。航行が危険な時は九曜が知らせてくれるし。星間航路じゃないからボクはブリッジに詰めてる必要あるけど・・・」
『制限速度内最速で1週間ほどで木星です』
「行きより大分速いな」
「免疫調整で2週間で月に行くように言われてたからね」
行きは減速していた。
「明後日くらいには火星付近通過して、小惑星ベルトだ・・・」
げんなりするユージン。
名前のついた物が多いため、極力気をつけて進む必要があるのだ。
「火星、見たいです」
「僕も生では見たことがない」
シシンが手を挙げるとガブリエルも同意する。
「九曜、火星が見えたら知らせてくれ」
『かしこまりました』
そうしてシュガーソルト号は火星、小惑星ベルトを抜け再び木星に至る。
地球と月面都市からの外宇宙移住者が珍しく、またガニメデ署を騒然とさせて、数日のメディカルチェックの後、艦は本気の加速に入っていく。
艦橋で、土星、海王星、天王星を抜けていくと、艦橋に席のない2人は船員室に戻ってもらった。
「じゃあ帰りも同じ方法で行きますか」
ぷつりと九曜が消え、シオの艦長席が上がってゆくのと同時にヘッドセット装着。
「座標方向MELROSEライン。確認、ネームド準惑星無し」
「シオいつでもどうぞ」
主砲を放ち再びオールト雲を突破してMELROSEライン。
さっさとシオが降りてくる。
「星間航路復帰〜!からのエスカまでワープ。あとお願いします」
太陽系離脱でやっと安心して手が空くユージンは、艦橋から自分の寝床に向う。
『星間航路1速。目的地惑星エスカ衛星港E-1。入港時間の規制があるため到着まで36時間。5月30日08:00到着予定です』
「了解。今は20:00か。ルイはどうする?」
「星間航路ワープしたから、あの2人の様子見に行こうかなと」
「オレも行く。九曜、保守任せた」
『かしこまりました』
地球へ行くと決めてから、およそ3か月でもう帰路である。




