イレギュラーイベント 〜冒険者ジース編〜
その日は魔法研究室に来ていた。
ジェシカから魔法研究についての成果があるとの事でその報告を受けていた。
「結論から言うとヴァイスに魔力が見えるようになるよ。」
ふむ。それは素晴らしい。
「生体に改造する方法とその鎧にバイザー的な感じで取付けるのとどっちがいい? オススメは生体だけど……」
ジェシカは手をワキワキさせながら聞いてきた。
「……鎧に取り付ける方法でやってくれ。」
どことなく怪しい雰囲気を感じたので後者で依頼をした。ジェシカがガックリと残念そうな顔をしているが無視だ。この魔法マニアめ。
その後、俺は鎧に「魔力バイザー」を取り付けた。これで魔力が見えるようになるらしい。早速試そうとしたら……、
ちょうどコンソールからメッセージが。
「目標を捕捉しました。@聖王国グランセル-帝国ダーズセル間街道監視装置。」
とコンソールに表示された。
ふむ。街道に監視装置を設置してからかなり時間が経過しているがやっとか。その対象をコンソールの画面で確認すると……、
そこそこのスピードで走る一台の馬車が表示された。御者の顔色から鑑みて何かから逃げているように見える。監視装置は他にも対象を捕捉したようなので確認するとその馬車を追いかける5人の馬に乗った黒ずくめの男達が映し出された。
「見に行くぞ。ジェシカ。」
「えっ? 今から? この場所に?」
「ああ。跳躍」
俺達は現場へと跳躍した。
ーー
現場に着くと今にも戦いが発生しそうな状況であった。跳躍中のタイムラグの間に馬車が壊されており、馬車から飛び出したと思われる冒険者風の格好をした男達とどこか気品溢れる雰囲気の女冒険者。
それを馬に乗った黒ずくめの男達が取り囲んでいる。
「ジェシカよ。漁夫の利という奴のようだ。」
「ヴァイス。その言い方はどうかと思うよ。」
状況にバッチリ合う格言だと思うが。
「どうやら襲われているようだ。襲撃者は無力化後に捕獲だ。そして……被襲撃者は「保護」する事としよう。」
人死にが出る前に間に合った。人間から改造強化人間を作るにしても死体からと生きた人間からとでは質も違うからな。
「お前達は誰だ!? 何者だ!?」
黒ずくめの男の1人がそう叫ぶ。
「ふむ。名乗りが必要か?」
「何?」
ヒーローならば名乗りがあるだろう……。だか俺はあいにくとヒーローでは無い。
「後で直接脳に教えてやる。……ダークブレード! (スタンモード)」
「くぅ!」
「キャッ!」
俺の刀が紫色の輝きを帯びて周囲に衝撃波を発した。
「何だ!? こいつは!? クソッ! XXXXXXXXX。」
黒ずくめの男の1人が魔法を唱え始めた。早速、魔力バイザーでその様子を観察してみる。
「おお、これが魔力か。水色の魔力の流れが見える。……空中に出来上がるは……氷の槍か。」
氷の槍が何十本も出来上がった。それが全て俺に向かって飛んでくる!
だが……自動障壁がそれを全て防いだ。
「魔法障壁か!? だが魔力を感じないぞ……。何だよ、クソッ!? 囲め囲め!」
男達は俺を取り囲んだ。そして息をつく暇も無いほどに暗器や魔法をしこたまぶち込んだ。俺はそのうち1人が撃った巨大な炎の玉が直撃して炎の渦に包まれた。
ーー
何だ何だ何だ?
いったい何だ?
ダークブレードだって?
昔の特撮で見たような……。
あの白銀の鎧の男は何だ?
……ああっ! 鎧の男が特殊部隊の集中攻撃を受けている。魔法 や暗器を何発も打ち込まれて挙句に強力な魔法、フレイムメギドも! あの魔法を出させる前にこの特殊部隊を倒すのが鉄則なのに! あの炎の渦の中では即死だろう。
……まあ、いいや。
鎧の男は犠牲なったのだ。南無。
よっしゃ! やっぱりここは俺の出番だ。
俺の聖魔剣デュランダールが……ドッゴーーン!!!
えっ?
強い衝撃波と共にフレイムメギドの炎の渦は消し飛んだ。そしてそこにいたのは無傷の鎧の男。
「なっ? 無傷だと!?」
特殊部隊の面々はとても驚いている。
わかる。僕も驚いている。
「これが全力の魔法か?」
「えっ?」
「つまらん。」
とその時、鎧の男のダークブレードが怪しく光った。その間、瞬きをしてしまった僕が見た次の光景は……、
全ての特殊部隊が地に伏して倒れていた。
そして鎧の男が特殊部隊に向けて手をかざしながら何やらブツブツ喋ると、特殊部隊はシュバッと立ち消えた。
えっ? いったいどう言う魔法だ?
と、僕は鎧の男がこっちを見ているのに気づいた。何だ? あっ、よく見たら僕の持っている聖魔剣デュランダールをじっと見ている。何だよ。これは僕んだ。やらないぞ。盗品だけど……、
と、ここでクローディア姫が
「あの! 危ない所をどうもありがとうございました! 」
深々とお辞儀をした。
「もし良ければ、山奥の魔女ジェシカの家まで護衛を依頼したいのですが……。」
あっ、クローディア姫ったら抜け目がない。かなり強いこの男にも護衛依頼を出しやがった。くそー、僕が聖魔剣デュランダールを使っていればそのキラキラした眼差しが向く先は僕だったのに。
「ふーん。あんた、その魔女ジェシカの家まで何しに行くんだい?」
おっ、鎧の男と一緒に来たドレスローブの金髪美女だ。なんだかすこーし怒っているような雰囲気ででクローディアに問いかけた。
「えっ、それは……魔女ジェシカにしか言えません。とても重要な事ですから。」
「そうかい。そうかい。じゃあ、魔女ジェシカと話せる所に行こかね。……ヴァイス。よろしく。」
「ああ。催眠」
と、鎧の男の手から何やらガスが飛び出した。そのガスを浴びた他の冒険者やクローディアはバタバタと倒れて行く。僕もそのガスをモロに浴びてしまった。
聖魔剣デュランダールは魔法は防ぐけど……こういうのは……防げない……。
そこで僕の意識は途切れた。
ーー
僕は目を覚ました。
どうやら眠っていたようだ。
ここは……
ここはベッドだ。
よくわからないが木造の家のベッドだ。
他にもベッドが並んでおり一緒に居た冒険者達もそこに寝ていた。ここにクローディアは居ない。何だ? 変な場所に連れてこられたみたいだが、なぜベッド?
と、自分の腰に手を当てると聖魔剣デュランダールが無い事に気がついた。
えっ!? デュランダールが無い!?
あれが無いとレベルの低い僕なんてただの雑魚だ。これはまずい! 探しに行かなきゃ! と思いつつ窓の外を見ると……
「何だこれ? 魔物の街?」
窓の外を見るとそこは広大な街でゴブリンやオークといった人型の魔物がまるで人間のように生活をしていた。
「ここ何処?」
僕は変な場所に来ていた。
こんなイベント知らないよ!




