第ジュッサン章
毎日更新が段々辛くなってきた@@
……がんばります(泣)
ガジェット暦0年8月18日(ガジェット化11日目)
亮介はガジェットの意味する恐ろしさをひしひしと感じていた。
ガジェット、某有名電子百科事典では次の様な記述があった。
1、(文学・演劇・映画)
ストーリー上の小道具、仕掛け。
2、(ソフトウェア)
アプリケーションソフトやディスクトップ上で動作する、小規模なアクセサリーソフト。
3、(デジタル家電)
デジタル家庭電化製品の内、デジタルカメラや携帯電話、携帯ゲーム機など、目新しい小型の電子機器を指す用語。
4、(クラウドファンディング)
ガジェット系専用の クラウドファンディングGadgetBank。
5、(兵器)
マンハッタン計画で開発された人類最初の原子爆弾の名称。
6、(その他)
ガジェットに内包するニュアンスは、『ちょっとした工夫』という具合に捉えられている。決して天地を揺るがすような大発明では無いのだ。その為、スパイ対策として原爆開発のコード・ネームにまでなっている。
これは『人間の発明なんて大した事無いさ』という皮肉を含んでおり、転じて『人間その物も大した事が無い』と指摘している。
だが一方で、頭のおかしい物理学者達が再び究極の破壊兵器を開発し、それらの研究を『ガジェット』というコード・ネームで呼んでいたのだとしたら……『地球は既に滅んでいる』又は『地球ごと異次元に吹き飛ばされた』と考える事もできるのだ。
亮介は『ガジェット・ワールド』の生成原因は、凡そそんな物だろうと思っていた。
この世界は『ガジェット』を中心にしたシステムに支配され、只のガジェットの『入れ物』に成り下がった人類には何の意味も無くなってしまった。
この世界でガジェットこそが万能で魔法の粉なのだ。ガジェットさえあれば、何でも出来る。レベルアップという現象もガジェットがなかったら利用できないのだ。
更にこの世界を狂わせているのがそのレベルアップという現象である。
一瞬にして死亡する(爆発の中心にいるとか、高電圧に感電するとかしなければ無理だが)事態に遭遇しない限り、レベルアップ権利を保有しており、必要なガジェットを持っている限り、傷は一瞬にして治ってしまう。
そんなチートな能力があれば、当然のごとく人はそれを欲しがる。
『文明の遺物がガジェットに分解できて、(人も含む)ガジェット分解によってレベルアップが出来る』という事に全ての人は気付きつつある。もし文明の遺物を分解し尽くしてしまったら……後は人間同士がお互いを分解するしかない。
生物の根本原理『生存本能』が、易々と人間性を破壊するのだ。
ある生物学者が机上で計算したそうだ。
『もし、人類社会がある日突然、農業生産力を中世のレベルまで退化させたとしたら、どれだけの人口を維持できるだろうか?』
答えは『1億人』だったそうだ。
60億の人口が1億になると言う事は、単純に計算して60人の内59人が死んでしまう。まして、日本は食糧需給率30%だ、59人が179人になる。さらに物流が寸断され都市部に食料が供給されなければ、東京都心で死亡する人は、恐らく10倍の1799人になってしまうだろう。
『ラブ』が位置するこの街でも生存率は、1/600前後だ。
『有り得ないだろ』
亮介は愕然として首を振った。
昨日、邦之と『ラブ』に戻って地図を見ながら水田から収穫できる米で、何人の人間の生存を支える事が出来るか計算してみたが、1200人という答えが出た。因みにこの街の人口は30万人だ。半分を来年の種籾と非常用の食料として取って置くと、先ほど計算で出た1/600に極めて近い数字になる。
『やっぱり、学者さん……正しいよ』
亮介は、下らない事で納得するなと再び首を振った。
昨日の旧自衛隊との戦闘で、亮介のレベルは19に上がっていた。こんなに急激にレベルが上がると言う事は、亮介の倒した奴らのレベルもそれなりに高かったと言う事である。 亮介が倒した相手は10人前後である。相手のレベルは15前後で無いと亮介のレベル上昇分と釣り合いが取れない。
レベル15に成るには、最低でも100人の人間を殺さないと上がらないだろう。と言う事は、自衛隊の奴らは『3万人』の人間を既に殺したということだ。眩暈のする数の『虐殺』だ。亮介もそのお零れを貰ってレベル19になったのである。
戦場から逃げ出す途中思わず身体強化に1レベル使ってしまったが、その1回でいったい何人の人間の命を使ったのだろうか?
因みに、レベルアップ権利の残りは、まだ13回残っていた。しかし、亮介はそれを安易に身体のレベルアップに使用するのに、嫌悪感を持たざる負えなくなっていた。
医者である邦之は、こんな事を思わないのだろうか? 元々医者だから、死生観は普通の人間とは違うのだろう。確かに、医者だったら引退するまでに何万人もの人の生き死にに関与するだろう。そういう強い精神が備わってなければ、医者には成れないのかも知れない。
「こんな愚にも付かない事でウジウジ悩むのは俺ぐらいなのかもな」
亮介はそう一人ごちた。
くだんの邦之は、旧自衛隊や旧西警察署の勢力範囲に入っていない(無法地帯というか無風地帯というか)に偵察に出て、『ラブ』の戦力の補充をしてくるといって今朝早くまた出かけてしまっている。昨日仲間にした洋子と可奈も一緒だ。
他のメンバーは西隣にある工場の解体に行ってもらっている。『ラブ』の塀よりも高い工場は早めに無くなって貰った方がいい。
亮介は『ラブ』の防衛手段の考案と練成の研究をする事になっていた。
『取り合えず、『千里の道も一歩から』だな?』
亮介はそう考えて防衛手段を開発する事に決めた。
『旧自衛隊の奴らは、確かダイナマイトを持ってたな? ダイナマイトと言うのは芯に雷管を差さなきゃ爆発しないって聞いたことがあるぞ?
俺が作った爆発する矢は奴らの武器・弾薬をガジェット分解して、雷管の機能を鏃に付加したものだから、それその物が雷管だよな? という事は俺のは強い衝撃で爆発する激発雷管。奴らは導火線を使ってたから、速燃雷管だよな?
もしかしてグリセリン(不飽和脂肪酸)があれば、ニトログリセリン練成できるんじゃね?』
亮介はそこまで考えて頭を振った。
『いやいやいや、多分やつらは元からダイナマイトは持ってたに違いない。粘土とニトログリセリン混ぜただけだからな。
俺がニトログリセリン作ったって危なくって扱い切れないな。粘土に練りこまなくっちゃいけないし、それに、激発雷管なら簡単に練成できるから、2度手間だしな』
そうやって暫くまた考えた。
『問題は奴らにダイナマイトを使わせない事だ。
ダイナマイトは導火線の問題がある。多分導火線の燃焼時間は2種類ぐらいの筈だ。いやいや、考えが逸れたぞ……俺ならダイナマイトを何に使う? 勿論防壁の破壊に使う筈……防壁を鉄板で覆って防御すれば良いんじゃね? 丁度いい具合に隣の工場解体してんじゃん』
そう考えて彼はにんまりと笑った。
『いかん、いかん……こんなに頭使って考えたのに外壁を鉄板で覆うアイデアしか出てねぇ(泣) ここは絶対に『厨二病』的な発想で攻めるべきだ! ゲーム・オタクの名誉に掛けてもナイスアイディアをひねり出さなければ……』
亮介は並々ならぬ決意で瞳を燃え上がらせ、拳を硬く握り締めた。
『こういう時、ラノベの主人公だったら……究極魔法『メテオ』とか? ドラゴン召還? 『絶対零度』とか? それとも『超重力球』?
作り方わかんねーし……考えるのが馬鹿らしくなってきた……やっぱり『厨二病』は捨てよう。』
亮介はガッカリして地道に考える事にした。
『取り合えず海からの襲撃をどうしたらいいか? だな。
東と北の岸壁は300メートルもある。馬鹿の一つ覚えで、鉄板で防壁を作るって手もあるけど……将来漁業をするために漁船が接岸できるようにしたいんだよなぁ……ん? 昔、海洋冒険小説で読んだ事あるぞ。なんだっけ? え~と、確か『切り込み防御網』だったっけなぁ。帆船同士が船体をぶつけ合って、相手の船から決死隊を乗り込ませないようにする仕掛けだった。
これは、使えるでしょ? ロープじゃなくて、もっと丈夫な鎖にして……枠に括り付けといて普段は倒しておけば邪魔にならないし……よし! これで行こう!』
300メートルの鎖の網を作らなければならないことに少し引き気味であったが、亮介は小さくガッツポーズを決めた。
『後、出来そうなのは、陳腐だけど『火炎放射器』かなぁ? 外壁の内側に5メートルぐらいの櫓を立てて、そこから外に向かって炎をドバッと噴射すればカッコいいだろうな……でも、何を燃やしたらいいんだ? アルコール? ガソリン?』
そう考えた時、亮介の頭に豆電球が閃いた。
『『ラブ』の隣って製油所だったよな。あのタンクから銅管かなんかで油引っ張ればいいんじゃねえか? 銅管は敵に見つからないように地面の下に埋めといて、櫓の上にノズルをセットすればいけるだろ。まだ、もうちょっと工夫が必要だろうが、何とかなる』
亮介は、今日の作業工程をざっと頭の中で組み立てて、早速工作を始める事にした。
まず、最初にウンザリするような『切り込み防御網』から作る事にした。
「こういう作業は、一番面倒くさそうな物からやらなきゃね?」
彼は死んだ魚の目をして自分に言い聞かせるように呟いた。
鋼伝寺亮介・総合レベル19
肉体強化レベル4
スキル=暗視・ステータス・アナライズ
レベルアップボーナス、13




