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ガジェット・ワールド/プロローグ  作者: 饂飩滲みるは
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第ジュッニッ章

毎日更新してます!

そんなに長く続かないだろうけど……優しい方は応援してやってください。

 邦之がファミレスの駐車場で亮介を待っていると、ボロボロになった亮介が戻ってきた。


 亮介は邦之と一緒にいる洋子を見ると、『ヒィ』と言いながら数歩後ずさった。


「おいおい、洋子は自衛隊の制服を着ているけど、もう僕等の味方だ」

 邦之は涙目になっている亮介に説明した。


『亮介のやつ、よっぽど酷い目にあったな?』

邦之は亮介を哀れみの篭った目で見詰めた。


『まあ、まだ16歳……弱肉強食……こればかりは自分で乗り越えないとな』

 そう思い、小さくため息を付いた。


「それじゃあ、早速尋問を始めるか。2人ともついてこい」

 邦之はそう言うとファミレスの中に入っていく。亮介と洋子はそんな邦之に黙って付いて行った。


 ファミレスはもう、入り口のドアも窓も破壊され食べられる物は略奪された後だった。だが、テーブルやソファはそのままで、一仕事終えた休憩所としては上等な場所である。

 3人は入り口から最も奥まった4人掛けのテーブルに座って、ずた袋から無炎ロウソクを出してそれに火を点した。


「洋子、まずは水分を補給しろ」

 邦之はそう言って自分の水筒を彼女に手渡した。


「はい、ご主人様」

 彼女は素直に水筒の水を飲んだ。


 亮介もようやく興奮状態が去ったのか、自らの水筒から水をラッパ飲みしている。


「できれば、洋子の持つ情報だけで、現状が把握できればいいんだが。洋子、階級・所属を教えてもらおうか」

 邦之はテーブルの上にチョコレートを数枚放り出しながら言った。


「階級・所属はありません。自衛隊の組織は解体されました」

 洋子は多少躊躇したが素直に話し始めた。


「ちっ、『魅了』はこれだから始末が悪い」

 邦之は舌打ちをして続けた。


「いいか、洋子。後でたっぷりと可愛がってやるつもりだが、積極的に協力すれば、あんな事やこんな事もしてやらないではない」

 邦之の思わせぶりな言葉に洋子の目が爛々と光り始め、舌がチロチロと唇を舐めまわした。


「私はあそこでは情報収集の責任者をしてました。レンジャー部隊の岩田三尉が一週間前に部隊を掌握してからは、元々通信科中隊の指揮官だった私は、岩田の参謀ということで昼は情報収集、夜は隊の慰安施設の運営の責任者として、偵察の際に捕獲した少女達を調教するのが仕事でした」

 洋子は息を荒くして言った。


「突っ込みどころ満載だな……取り合えず、岩田って奴はどんな奴なんだ?」

 邦之はチョコレートを大まかに割って、大きめの欠けらを口の中に放り込みながら言った。


「そうですね、狡猾な男ですよ。レンジャーの指揮官だっただけあって、格闘技では隊の誰もかないません。それに、彼は何故かピストルを持っていて、自分に逆らう人間には情け容赦なくそれを使います」

 洋子はそう言って邦之の割ってくれたチョコレートを一欠けら口に放り込んだ。


「ええ! もしかして俺、やばかったんじゃないの?」

 亮介は驚いた声を上げた。


「馬鹿かお前は? ボウガンの矢もピストルの弾も殺傷力は大して変わらん。それよりも岩田がピストルを所持していたと言う方が重要だ」

 亮介は邦之に指摘されてシュンとなった。


「どんなピストルだった?」

「多分古いもので、コルトのリボルバーでした」

「恐らく、コレクターの所有していたものだろう。奴がコレクターだったという事も考えられる。何にせよ、新しく作られた物じゃなくて良かった。自力で銃器を製造されたらたまったもんじゃない」

 邦之は大袈裟に安堵のため息を付いた。


「駐屯地の兵力はどれ位だ? 武装は?」

 邦之は洋子への質問を続けた。


「現在は280名弱です。武装はボウガンが100丁、銃剣状の短槍が全員分、ダイナマイトが数十本というところです」

「銃剣槍が標準装備だって?」 

 洋子の言葉に亮介は唖然としていた。それは誰かが装備を製作したという意味だからだ。


「洋子さん、どうやって装備を作っているんですか?」

 亮介は身を乗り出して洋子に質問を浴びせた。


「自衛隊には整備小隊がありましたから、そこの隊員と趣味で模型工作などをしていた人間が10人前後で製作しています。機械工具は大部分無くなってしまいましたが、異変後手先の器用な人間は以前より物造りが楽になったようですよ?」

 洋子はあまり興味なさそうに答えた。


 だが、亮介にとってはかなり重大な情報だった。

 ガジェットの性質をいち早く見抜いたのは亮介に違いないが、物造りのプロがガジェット練成を始めたら生半可の知識しかない亮介では太刀打ちできない。しかも、有り余る兵器系のガジェットを保有する亮介は、今の今まで真剣に練成の研究をしていなかったのだ。


「叔父さん、ガジェット練成できる人間がそんなにいたら、もっと高度な武器が大量に生産できちゃうよ」

 亮介の顔は泣きそうになっている。


「確かにこれは相当な脅威だな……」

 邦之は腕組みをして呟いた。


「お前らは防具を着用していなかったが、兵装はどうなっているんだ?」

「以前使用していた防弾チョッキやプロテクター、ヘルメットなどは役に立たなくなってしまったので、現在整備小隊が製作中です。ですが、まだボウガンの標準装備化も行わねばならない為、防具の標準化はかなり時間が掛りそうです」

「どれぐらい掛る?」

「1ヶ月程かと……」

 それを聞いて邦之は考えるように目をつぶった。


「自衛隊の食料の備蓄はどれ位あるんだ?」

 邦之は目を開くと洋子に尋ねた。


「通常物資が1か月分、非常食が2か月分です」

「すると、食料の確保が最優先だな。現在の情報収集も食料確保を中心で行っているんだろ?」

「はい、この街で有望なのは南西部の水田地帯です。現在偵察隊はそちらの方面に2個中隊、100名ほどを派遣していますが、他の勢力の動きにも警戒をしています」

「他の勢力とは何だ?」

 邦之の眼光が鋭くなった。


「旧西警察署と消防、それに市役所の防災課のグループが我々に対抗して、水田地帯を狙っています」

「警察に消防だって? そいつらの情報は?」

「武装は旧自衛隊よりも劣りますが、家族ぐるみで徒党を組んでいて、人数は700人近くいます。……侮れない勢力です。市の災害備蓄倉庫を押さえているので、1年近くの備蓄はあるでしょう。彼らは西警察署を拠点にしています」

「なんてこった、お前らは『協力』とか『協調』という思考を持たないのか?」

 邦之は呆れて問い返した。


「……そう言えば、不思議ですね? 何故でしょう?」

 邦之は洋子の間の抜けた答えを聞いて、こめかみを押さえずにはおれなかった。


「これである程度状況は分った。稲の収穫が終わるまで、あと2ヶ月は旧自衛隊も旧警察も我々の『ラブ』に手出しはしないだろう」

 邦之は再びテーブルのチョコレートを口に持って行った。


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