聖域からの招待状にゃ!
町のはずれの街道から響く、重苦しいキャラバンの足音。それは、王都の特使ガイウスが率いる一団の、傲慢な足取りであった。しかし、町の入り口に立った瞬間、彼らは息を呑んだ。何百匹もの魔法猫たちが、一糸乱れぬ規律と、人間を上回るような冷徹な知性をもって、ただそこに座していたからだ。
「……何だ、この異様な気配は。猫の集団ごときが、我々を値踏みしているのか?」
ガイウスが険しい表情で剣の柄に手をかけるが、その指先はわずかに震えていた。猫たちが首に巻いた『赤の首輪』。それは単なる飾りではない。この聖域の独自の言語であり、法であり、何より、この国で生きる者たちの「文明レベル」を示す証拠であった。
ポカポカ広場に足を踏み入れた特使一行を待っていたのは、煌びやかな晩餐の宴ではない。レオと町長、そして影の総大将キラが、静かに彼らを「観察」する、異様なまでに張り詰めた空間だった。
キラはレオの肩の上から、特使たちの持ち込んだ「王都の品々」を冷ややかな瞳で一瞥する。それは豪華絢爛な装飾品や金貨の箱だが、この地の『循環する豊かさ』の前では、本来の価値を失ったただの装飾に過ぎなかった。
「ようこそ、王都よりの使者殿。わざわざ資源の調達に来たわけだ。……だが、我が町に足を踏み入れたからには、一つだけルールがある」
キラが軽く前足を持ち上げると、広場を囲む猫たちが一斉に低周波の喉鳴らしを開始した。その響きは、王都の騎士たちの平衡感覚を容赦なく揺らしていく。
「我々の技術、食料、そしてこの聖域そのもの。それらには、君たちが支払う金貨や権力など、遠く及ばない『対価』が必要だ。それを支払う覚悟があるか? それとも、ただの交渉者として、文明の格差という真実に向き合う覚悟で来たか」
りなが、キラに寄り添いながら、無邪気で鋭い笑みを特使たちに向ける。
「おじさんたち、王都から長旅で、美味しいお料理、食べてないでしょう? 私たちが用意したお料理には、この国の『誇り』と『大地』の味が詰まっているの。一口食べれば、きっと王都の味気ないお食事には戻れなくなるわ。……あ、もちろん、無料で振る舞うわけじゃないですの!」
王都の使者たちは、自分たちが強者として振る舞うつもりだったこの場所で、逆に『圧倒的な文明レベルの格差』を突きつけられ、自分たちが無知な立場に置かれていることを自覚し、戦慄した。
キラは、りなの頭を愛おしげに撫でながら、静かに、しかし確実に王都のプライドを粉砕する宣告を下した。
「見せよう。君たちが喉から手が出るほど欲しい『真の豊かさ』と、我々が守り抜いてきた『誇り』の差を。ガイウス殿、君が持ち帰るべきは、我々の技術の断片ではない。この聖域に敬意を払い、対等な調和を築く……その決断だ」
この瞬間、王都の策略は完全に崩壊し、辺境の小さな町が、大陸の新たな中心であることを証明する、終わりのない晩餐が幕を開ける――!!
次回で記念すべき投稿100話目ですの!
今後の展開が気になりますね!
*一つ訂正いたしました。
申し訳ございません、記念すべき100話を目前にし、時代背景にはそぐわない黄金の天秤を題名と本文に使ってしまいましたので、訂正いたしました。猫の国には金鉱なんて現在ありません。
帝国にもそのような技術はございません。
車輪すらないのですから...




