絶対的な優位と、総大将のお断りにゃ!
広場の中央、聖域の窓口として村長が特使ガイウスたちと対峙していた。王都の使者たちは村長という立場を軽んじ、傲慢な態度を崩さない。
晩餐の準備が進む中、レオたち聖域の者たちが、森の主とも呼べる巨大な獲物を伴って現れる。その光景を目の当たりにした瞬間、ガイウスは冷や汗を流しながら、必死に動揺を隠して隣の村長へ小声で尋ねた。
「……村長殿。あの者たちは一体、何者なのだ……?」
村長はガイウスの隠しきれない震えを冷ややかな目で見下ろし、静かに答えた。
「ああ。レオ殿は我が村の騎士団の部隊長。そして、その傍らにいる白い猫様は、我々が畏れ敬う『白様』だ。獲物を見れば分かるだろう、我々が対峙しているのが単なる者たちではないと……くれぐれも、無礼な振る舞いはせぬようにな」
王都の使者たちは、村長の忠告も耳に入らぬほどに動揺していた。
「こんな大物を、わざわざ狩り、調理するとは……」
ガイウスの部下の一人が、獲物の放つ圧倒的な生命力に当てられ、焦燥感に駆られた。彼は短剣を抜き放ち、この地の窓口たる村長を飛び越え、レオの肩にいるその白い猫を狙って跳躍する。
その瞬間、広場が凍りついた。
その存在を狙ったはずの騎士は、空中で硬直したまま、見えない力に押し潰されるように地面に叩きつけられた。広場を囲む魔法猫たちが放つ「重圧」が、侵入者の骨の髄まで跪かせていた。
「暴力、ですか。随分と原始的な解決策をお持ちのようで」
レオの肩から飛び降りたキラが、小さな身体で騎士の足元に立つ。空間が歪み、獲物の肉が自動的に食器へと並べられていく。キラが空間の理を支配し、調理を完遂させていた。
ガイウスは青ざめ、すぐさま村長に向かって平伏した。
「申し訳ございません! 村長殿、どうか……どうか、あの方にお取り計らいを!」
村長は困惑しながらも、キラの前に進み出ると、恭しく頭を垂れた。
「キラ殿、王都からの使者たちに、一度だけ慈悲を……」
その様子を目の当たりにした王都の騎士団の隊長は、口をあんぐりと開け、戦慄した。現地の村長が、この幼き者にこれほどまでに敬意を払う……。この地の力関係の真実を悟り、隊長は顔面蒼白となって崩れ落ちた。
りなは広場の植物たちを操り、食卓に鮮やかなハーブを添える。彼女は子猫らしいあどけなさの裏で、騎士たちへ鋭い視線を向けた。
「おじさんたち、落ち着いて。せっかくのお食事なんだから、大人しくしてないと……次は、喉元、切り裂いちゃいますの!」
広場を支配するのは王都の法ではない。キラが操る「理」と、りなが息吹を吹き込む「自然」の調和だ。キラは獲物の肉が並ぶ食卓を鼻先で軽く小突き、騎士たちを見据える。
「さあ、喰らえ。王都に着いたとき、君たちがこの地についてどう伝えるか。……それは、この晩餐を食べてからのお楽しみだ」
終わりのない晩餐が、今、王都のプライドを噛み砕く儀式となって幕を開ける――!!




