影の総大将の『視察と分析』にゃ!
王都の権力者たちが、猫の国を「利権の植民地」にしようと動き出したその瞬間、キラが張り巡らせた猫耳ネットワークの全方位への見回りは、すでにその不穏な空気の乱れを確実に捉えていた。
空は冷たく澄み渡り、遠くから運ばれてくる微かな魔力の濁りが、王都の悪意をキラの回路へと伝えてくる。
夜、レオとニナの新居。窓の外では雪が静かに舞い、キラは窓辺に座り、スッと冷徹な眼差しで、漂ってくる大気の質と王都の政治的動向を深く分析していた。
(ふむ、王都の者たちが、俺たちの利権に目をつけたか。冷害で食料もままならず、文明も停滞している連中だ。力で勝てないと知るや、今度は法や権力を使って引き入れようというわけだな。大人のやり口としては定石だが……あまりに甘いな)
前世の高度な経営術、組織管理、そして冷酷なまでに効率を求める計算高い知識を持つキラにとって、王都の狙いなど、透けて見えるほどに容易に読み解けた。彼らは「猫」を、ただの可愛い生き物か、あるいは「都合の良い資源」としか見ていない。だが、その慢心こそが彼らの足元を崩す綻びとなる。
「シロ……王都から、近々『特使』がこの町へ派遣されてくるっていう噂を聞いたんだ。俺たちの技術を差し出せって言われたら、どうすれば……」
出世し、町を守る重責を担うレオが、少し不安そうに剣の柄を握る。その表情には、愛するニナとお腹の中の新しい命を守りたいという、切実な願いが込められている。
キラはトコトコとレオの肩に飛び乗ると、フッと誇り高い髭を揺らし、頼れる後ろ盾として静かに応えた。
(少年、怯えるな。向こうが権力という仕組みで来るなら、こちらは『世界の理』そのものを使って立ち回るまでだ。彼らは俺たちの富を奪いに来るが、俺たちには猫たちの積み上げてきた日常がある。主導権を渡す必要はない。むしろ、この町の豊かさを見せつけることで、彼らに自分たちの間違いを自覚させてやればいいのさ)
キラの瞳はあくまで穏やかで、しかしその奥には、王都の傲慢な企てを静かに無力化し、逆に彼らを翻弄するための知的な罠が張り巡らされていた。




