地下の洞穴の決戦前夜(くじけぬ執念)にゃ!
決戦の夜が来た。
猫耳ネットワークの情報に基づき、キラはレオが眠りについたのを見計らって、静かに窓から夜の街へと飛び出した。
「アニキ、地下のネズミどもを完全に締め出したぜ。例の魔術師の野郎、街の下にある洞穴の最深部で怪しげな儀式を始めやがった」
待機していたボス猫が緊張した面持ちで告げる。
キラは音もなく、地表の裂け目から薄暗い地下の洞穴へと侵入した。暗闇の中、精霊猫としての美しい純白の毛並みが、微かに青白い光を放っているようにすら見える。
汚水が滴り落ちる洞穴の最深部、大きな空洞に辿り着いたとき、そこには禍々しい赤い魔法陣を描き、呪文を唱える王都の悪徳魔術師の姿があった。魔法陣から溢れ出るドス黒い魔力が、洞穴内の淀んだ大気を汚染していく。
(……くっ、この悍ましい魔力の波長……回路にノイズが……)
不意に、キラの小さな脳に強烈な負荷がかかった。異世界の邪悪な呪詛エネルギーが、精霊猫としての未成熟な魔力回路をダイレクトに刺激したのだ。
視界が激しくブレ、かつて味わった感覚が脳裏をよぎる。あの光のない部屋で、ただ絶望に沈み、息をすることすら諦めかけていたあの暗闇の記憶だ。
だが、今の彼の魂は、もうあの時のように死んではいない。
(ふざけるな……。この程度の負荷で、俺の演算が止まると思うか……!)
前世の孤独な戦い、一人の人間として生き抜いてきた不屈の執念が、脳内のバグを強引に圧し潰す。キラは「フシャァァッ!」と小さく鋭く威嚇の声をあげ、冷徹な武人の瞳で魔術師の動きを完全にロックオンした。




