『人脈』の開花と、スープの真価にゃ!
街の地下で不穏な魔術の足音が迫る中、キラは焦るどころか、より一層冷徹に自らの足元を固めていた。
「シロ、聞いてくれよ! 先輩騎士の補佐に指名されたんだ。俺の作ったスープを飲んだ隊長が、『お前の料理には、不思議と戦士の疲労を芯から癒やす力がある』って、すごく褒めてくれてさ!」
レオが嬉そうに、大きな骨付き肉の端切れをキラの皿に置いた。
当然だ。キラの『a × b』の乗算栄養学は、レオの体にも劇的な変化をもたらしていた。キラの指示通りに調律された賄い飯を食べ続けたレオは、知らず知らずのうちに生体回路の耐性ランクが引き上げられ、訓練の疲労を翌日に残さない強靭な肉体へと進化していたのだ。
(よし。これでレオの駐屯地内での地位は上がった。俺が自由に動ける範囲も、これでさらに広がる)
キラは骨付き肉を器用に肉球で押さえ、ハーブを噛みちぎりながら、脳内で街の立体マップを更新していく。
人脈という確かなセーフティネットの構築は完了。飯の質も最高峰。これでもふもふの白猫としての肉体スペックは、100%の完成を迎える。
スープを飲み干し、お気に入りのレオの膝の上へトコトコと飛び乗る。
レオが優しく顎の下を撫と、キラは深い満足感に目を細め、心地よさそうに「ゴロゴロ……」と喉を鳴らした。
だが、その鋭い耳は、窓の外の夜風が運ぶ「大気のわずかな歪み」を、すでに正確に捉えていた。




